
マイクは、音を電気に変える仕組み、形(持ち方・付け方)、つなぎ方(有線かワイヤレスか)の3つの組み合わせで選びます。
イベントの準備で「マイクは何本、どれを用意しますか?」と聞かれて迷うのは、珍しいことではありません。ハンドマイク、ピンマイク、ワイヤレス……と名前は聞いたことがあっても、何がどう違い、どの場面に向いているのかは意外とわかりにくいものです。場面別の選び方は、最後に表にまとめました。
仕組みの違い:ダイナミックとコンデンサー
マイクは、音を電気の信号に変える仕組みによって、大きく「ダイナミック型」と「コンデンサー型」に分かれます。
| ダイナミックマイク | コンデンサーマイク | |
|---|---|---|
| 仕組み | 振動板とコイル・磁石で信号をつくる(スピーカーの逆の動き) | 薄い振動板と電気を帯びた板のすき間の変化で信号をつくる |
| 電源 | 不要 | 必要(電池、またはミキサーなどから送るファンタム電源) |
| 丈夫さ | 非常に丈夫で、扱いが多少荒くても壊れにくい | 繊細で、水分に弱い。ていねいな扱いが必要 |
| 感度 | 大きな音でも歪みにくい | 感度が高く、小さな音や細かいニュアンスまで拾う |
| よく使われる場面 | 歌、スピーチ、ステージのハンドマイク | ピンマイク、ヘッドセット、グースネック、ガンマイク、収録 |
Shureの解説によると、ダイナミックマイクは振動板・コイル・磁石というシンプルな構造で、非常に大きな音でも歪まずに扱え、乱暴な扱いにも強いとされています。コンデンサーマイクは一般にダイナミックより感度が高く、動かすための電源が必要です。電源は内蔵の電池か、マイクケーブルを通して送る「ファンタム電源」から取り、多くは12〜48V程度の範囲で動作すると説明されています。小型にしやすいため、ピンマイクやヘッドセット、細いグースネックマイクにはコンデンサー型が多く使われます。繊細なつくりなので、ShureのFAQでも手入れに水などの液体を使わないよう案内されています。
どの方向の音を拾うか:指向性
指向性とは、マイクがどの方向の音を拾うかという特性です。
| 指向性 | 拾う方向 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 単一指向性(カーディオイド) | 正面が最も強く、背面は弱い | ステージのPA全般。ハウリングに比較的強い |
| スーパーカーディオイドなど | 正面をより狭く拾い、横の音を抑える | 周囲の音を避けたいとき。マイクの向きを正確に合わせる必要がある |
| 無指向性 | 全方向を同じように拾う | テーブルを囲む会話の収録など。ハウリングには弱い |
Shureの解説では、単一指向性は無指向性よりフィードバック(ハウリング)に強いため、ステージのPAでよく使われるとされています。スピーカーから声を出す会場なら、単一指向性のマイクを選びます。
形で選ぶ:6種類のマイクの特徴
| 種類 | 特徴 | 向いている場面 | 気をつけたいこと |
|---|---|---|---|
| ハンドマイク | 手に持って口元で使う。マイクの付け替えが簡単 | 司会、あいさつ、質疑応答、歌 | 口から離れると急に声が小さくなる |
| ピンマイク(ラベリア) | 襟元や胸元につける小型マイク。両手が空く | 動きながら話す講演、実演、インタビュー | 衣ずれの音、スピーカーの前に立つとハウリングしやすい |
| ヘッドセットマイク | 細いアームで口元近くに固定 | 動きの大きい講演、ダンスやステージでの実演 | 吐息が入らない位置に調整する |
| グースネックマイク | 演台や卓上に立てる、首の曲がるマイク | 演台での講演、式辞、議会・会議 | 顔を横に向けたり、演台から離れたりすると声が遠くなる |
| ガンマイク(ショットガン) | 細長く、正面の音を狙って拾う | 映像の収録、カメラに付けての撮影 | 狙った方向から外れると音が薄くなる |
| バウンダリーマイク | 机や床に平らに置く薄型マイク | 会議、卓上での発言、テレビ会議 | 机をたたく音や紙をめくる音も拾いやすい |

ハンドマイク
最もなじみのある形です。Shureのプレゼンター向けガイドでは、胸ポケットの高さを保ってマイクに向かって話すこと、マイクを振ったり下げたりしないことが勧められています。マイクを人から人へ渡せるので、司会や質疑応答に向いています。
ピンマイク(ラベリア)
服に付ける小さなマイクと、ベルトやポケットに入れる送信機の組み合わせで使います。同じガイドでは、付ける位置は胸ポケット付近が目安で、高すぎるとあごに当たってこもり、低すぎると声が小さくなるとされています。長いネックレスは雑音の原因になるので、外しておきます。
ヘッドセットマイク
口元のすぐ近くにマイクがくるため、声をよく拾えるのが利点です。Shureのプレゼンター向けガイドでも、カメラに映りにくくハンズフリーで使えること、多くの聴衆に届けられる音量を確保しやすいことが挙げられています。大きな会場で動き回りながら話す講演にも向いています。
グースネックマイク
演台に備え付けられていることが多いマイクです。登壇者の身長に合わせて、胸や肩ではなく顔に向けて角度を調整します。登壇者が入れ替わる式典では、一人ひとりに合わせて角度を直すと聞き取りやすくなります。
ガンマイクとバウンダリーマイク
ガンマイクは、カメラの上に付けて正面の声を狙う、映像の収録向けのマイクです。バウンダリーマイクは机や床に置く薄型のマイクで、ゼンハイザーの解説では、平たい形で目立ちにくく、会議室や劇場などでよく使われるとされています。
有線とワイヤレス:つなぎ方の違い
| 有線マイク | ワイヤレスマイク | |
|---|---|---|
| 動ける範囲 | ケーブルの届く範囲 | 会場内を自由に動ける |
| 電池 | 不要 | 送信機に電池が必要 |
| 電波 | ケーブルで直接つなぐ | 混信(ほかのマイクの電波とぶつかること)に注意 |
| 安定性 | ケーブルが無事なら途切れにくい | 電池切れ・電波状況で途切れることがある |
| 向いている使い方 | 演台や司会台など、位置が決まっている場所 | 客席での質疑、受け渡し、動きながらの発言 |
位置が決まっている演台や司会台には有線、人が動く場面にはワイヤレス、と使い分けるのが無難です。
ワイヤレスマイクの周波数帯
日本で使われる主なワイヤレスマイクの周波数帯は次のとおりです。
| 区分 | 周波数帯 | 免許 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| B帯 | 806〜810MHz | 不要 | アナログ方式とデジタル方式がある。ホテル、会議場、学校、集会場などで広く使われている |
| 1.9GHz帯 | 1893.5〜1906.1MHz(DECT準拠) | 不要 | デジタル方式。チャンネルの使用状況を監視し、安全なチャンネルを自動で選ぶ。800MHz帯(B帯)と干渉せず併用できる |
| 2.4GHz帯 | 2.4GHz帯 | 不要 | デジタル方式。Wi-FiやBluetoothと同じ帯域のため、近くのWi-Fi機器の電波と干渉することがある |
| A帯(特定ラジオマイク) | 470〜714MHz、1.2GHz帯 | 必要 | 放送、舞台、コンサートホール、大規模イベントなど |
B帯は免許なしで使えるため普及しているぶん、同じ建物の別の部屋でもB帯のマイクが使われていることがあり、周波数が重なると混信が起きます。電波のトラブルを防ぐための事前確認は、イベントの音響トラブルを防ぐ事前確認事項で詳しく紹介しています。
電池の持ち時間を確認する
ワイヤレスマイクは送信機の電池で動きます。持ち時間は機種ごとに違い、たとえば Shure BLX288/SM58 のハンドマイクは単3形アルカリ電池2本で最大14時間、パナソニックの1.9GHz帯ワイヤレスマイクは機種によって約8〜13時間(単3形ニッケル水素電池使用時)とされています。長時間のイベントでも、本番前に新しい電池に交換し、予備を手元に置いておくのが基本です。
場面別の選び方
場面ごとの目安は次のとおりです。
| 場面 | おすすめのマイク | 理由・補足 |
|---|---|---|
| 講演(演台で話す) | グースネック、またはスタンドに立てた有線マイク | 両手が空き、位置が安定する |
| 講演(歩きながら話す) | ピンマイク、ヘッドセット | 両手が空き、顔の向きが変わっても声を拾える |
| パネルディスカッション | 登壇者一人に1本(卓上スタンドのマイクやワイヤレスのハンドマイク) | 発言していないマイクはオフにして雑音を減らす |
| 司会 | 有線マイク+スタンド、またはワイヤレスのハンドマイク | 司会台が決まっていれば有線が安定 |
| 質疑応答 | ワイヤレスのハンドマイク | 係が客席を回って手渡しできる |
| 歌・合唱のソロ | ダイナミックのハンドマイク(単一指向性) | 大きな声でも歪みにくく、ハウリングに強い |
| 配信・映像の収録 | ピンマイク、ガンマイク、会場のミキサーからの音声 | 口元に近いマイクほどクリアに残る |
パネルディスカッションでは、話していない人のマイクがオンのままだと周囲の雑音まで拾ってしまいます。ヤマハの解説でも、使っていないチャンネルはミキサーのONボタンでオフにしておく方法が紹介されています。
配信や収録では、会場のスピーカー用の音とは別に、口元に近いマイクの音を使うと声がはっきり残ります。会場とオンラインを同時につなぐ場合の注意点は、ハイブリッド開催の音声トラブル対策にまとめています。講演会や式典でのマイクの配置とスピーカーの置き方は、講演会・式典の音響セッティングの基本で紹介しています。

アイフィルムで用意しているマイク
アイフィルムでは、音響PAと撮影の現場で次のマイクを使っています。
| 機材 | 種類 | 数量 | 特徴(メーカー公表) |
|---|---|---|---|
| Shure SM58 | 有線・ダイナミック・単一指向性(カーディオイド) | 2本 | 定番のボーカル用マイク。球形のフィルターで息や風のノイズを抑える |
| Shure BLX288/SM58 | ワイヤレス(800MHz帯)・SM58ヘッド | 2本(受信機1台) | 2チャンネル受信機で2本を同時に使える。単3形2本で最大14時間 |
| SONY URX-P41D | ワイヤレス受信機(806.125〜809.750MHz) | 1式 | 2チャンネル動作に対応したポータブル受信機。別売のシューアダプター(SMAD-P5)で、MIシュー搭載のカメラに接続できる |
| SENNHEISER MKE600 | ガンマイク・コンデンサー・超単一指向性 | 1本 | ファンタム電源(P48)か電池で動作。風の雑音を抑えるローカット付き |
音響PAの基本セットには、ワイヤレスの BLX288/SM58 が2本と有線の SM58 が2本が含まれます。マイクスタンドは4本保有しています。ピンマイクなどほかの種類のマイクが必要な場合は、ご相談ください。
複数のマイクの音を別々に録音したいときは、16入力のオーディオインターフェース(TASCAM US-16x08)でのマルチ収録にも対応しています。機材の一覧は機材と音響PAのページでご覧いただけます。
よくある質問
Q. ワイヤレスマイクは何本まで用意できますか?
アイフィルムの機材では、Shure BLX288/SM58 が2本、SONY URX-P41D(送信機2台)が1式です。それ以上の本数が必要な場合はご相談ください。会場に備え付けのワイヤレスマイクと組み合わせることもできます。
Q. 会場にあるマイクを使ってもらえますか?
はい。会場のマイクやミキサーに接続し、足りない分だけを持ち込むこともできます。会場のマイクの種類や本数は、会場の機材リストや下見で確認します。
Q. ピンマイクとハンドマイク、講演ではどちらがよいですか?
演台から動かずに話すならグースネックやスタンドのマイク、歩きながら話すならピンマイクやヘッドセットが向いています。スライドを操作しながら話す場合も、両手が空くピンマイクが便利です。講師の話し方を伺って、合うものをご提案します。
Q. 音響を頼むと料金はいくらくらいですか?
音響PAは、機材(マイク4本を含む基本セット)とオペレーター1名込みで、1日60,000円(税別)からです。スタッフの追加や前日仕込み、エリアごとの出張費で金額が変わります。音響PAの料金シミュレーターで目安を確認できます。
参考にした情報
- Mic Basics: What Are Transducers?(Shure USA)
- A Brief Guide to Microphones - What a Microphone Does(Audio-Technica)
- よくある質問(FAQ) マイク編(Shure Japan Blog)
- マイクの指向性: どのタイプのマイクを、どこで、どう使う?(Shure 日本)
- プレゼンターのための、マイクとマイクテクニックの基本ガイド(Shure 日本)
- How-To Presentation microphones 3: Boundary Microphones(ゼンハイザー)
- ラジオマイクの種類(総務省)
- 特定ラジオマイクの周波数帯移行について(Shure 日本)
- 1.9GHz帯デジタルワイヤレスマイクシステム(パナソニック)
- ワイヤレスマイクの種類(サウンドハウス)
- サウンドハウス スタッフブログ(ワイヤレスマイクの周波数帯の解説)
- SHURE BLX288/SM58(サウンドハウス)
- SM58 - ボーカルマイクロホン(Shure 日本)
- URX-P41D 仕様(ソニー)
- URX-P41D の特長(ソニー)
- MKE 600 Shotgun Microphone(Sennheiser)
- 会議編 - PAビギナーズガイド(ヤマハ)


