
広場に組んだステージで、司会がマイクを握る。前の列にははっきり聞こえているのに、後ろのテントのあたりでは何を話しているのか聞き取れない。お祭りやマルシェ、野外ステージ、スポーツ大会の開会式など、屋外のイベントでは「室内と同じ機材を持っていったのに、声が後ろまで届かない」ということが起こりがちです。屋外は、音の伝わり方そのものが室内と違うからです。
屋外は室内より音が届きにくい理由
壁や天井の「反射」がない
室内では、スピーカーから出た音が壁や天井、床に当たって跳ね返り、その反射音も一緒に耳に届きます。屋外にはこの反射がほとんどないため、スピーカーから届く音(直接音)だけで会場全体をカバーする必要があります。同じスピーカー、同じ音量でも、屋外のほうが小さく、遠く感じられるのはこのためです。
距離が2倍になると、音は6dB小さくなる
スピーカーのような一点から広がる音(点音源)は、距離が2倍になると音の大きさ(音圧レベル)が6dB(デシベル)小さくなります。音が広がる面積が4倍になり、エネルギーが4分の1に薄まるためです。
スピーカーから1mの地点で100dBだった場合、この考え方で計算すると次のようになります。
| スピーカーからの距離 | 音の大きさの目安 |
|---|---|
| 1m | 100dB |
| 2m | 94dB |
| 4m | 88dB |
| 8m | 82dB |
| 16m | 76dB |
| 32m | 70dB |
1mから32mまで離れると、30dBも小さくなる計算です。最前列をうるさくせずに後方まで声を届けるには、スピーカーの出力に加えて、置き方や台数も考えます。

スピーカーの高さ・向きと台数の考え方
観客の頭より高く上げる
スピーカーを地面に直接置くと、前の人の体が壁になり、後ろの人には音が届きにくくなります。メインのスピーカーは、少なくとも観客の耳の高さまで上げるのが基本です。スタンドを使って高く設置すると、会場全体に音が広がりやすくなります。
アイフィルムの基本セットのスピーカー、ヤマハ DXR15 mk3 は、底面にスタンド用の取り付け穴(ポールマウントソケット)が2つあり、まっすぐ(0°)と下向き(-7°)を選べます。高く上げたうえで少し下向きにすると、観客のいる方向へ音を向けやすくなります。
向きは「観客に向けて、住宅や壁から外す」
スピーカーには、音がよく届く角度の範囲(指向角)があります。DXR15 mk3 の公称指向角度は、水平90°×垂直60°です。この範囲に観客が収まるように向けると、むだなく音が届きます。
あわせて、次の点にも気をつけます。
- スピーカーをマイクより前(観客側)に置き、マイクに音が回り込まないようにする(ハウリング=キーンという音の対策)
- スピーカーの正面は、住宅や病院などから外れた方向へ向ける
- 大きな建物の壁を避けて向ける(屋外でも、強い反射が遅れて聞こえることがあります)
遠くまで届けたいときは「台数」で考える
会場が奥に長い場合、手前のスピーカーの音量を上げて後方に届けようとすると、前の席が大きくなりすぎます。そのような場合は、会場の途中や後方に補助のスピーカーを置き、それぞれの音量を控えめにして全体をカバーするほうが、聞きやすい音になります。
天候と電源への備え
風:マイクの「ボボボ」という雑音
風がマイクに当たると、「ボボボ」という低い雑音(風切り音)が入ります。マイクは小さな音を拾えるよう敏感に作られているため、風の空気の動きにも反応してしまうのです。対策は次のとおりです。
- ウインドスクリーン:マイクにかぶせるスポンジ(フォーム)やファー状のカバーで、風の勢いを弱めます
- ローカット(ハイパスフィルター):風の雑音の多くは低い音の帯域に含まれるため、ミキサーで低音を少し削ると目立ちにくくなります
- 立ち位置の工夫:テントや建物の陰など、風の当たりにくい場所に演台やマイクを置きます

雨と直射日光
音響機材は電気製品なので、雨に濡らすわけにはいきません。スピーカーやミキサーはテントの下に置き、地面からの水はね対策として台やすのこの上に載せるなど、機材が濡れない配置を事前に決めておきます。
晴れた日の直射日光にも注意が必要です。ミキサーやパソコンが熱を持つと、動作が不安定になることがあります。音響卓は日陰に置くか、日よけを用意します。
電源:会場のコンセントか、発電機か
屋外では、まず電源の確保が課題になります。近くの建物から電源を借りられる場合は、長いケーブルで引き込みます。アイフィルムは100mや30mの長尺の電源ケーブルを保有しており、電源の位置から音響卓・ステージまでの取り回しも含めて計画します。
電源がない場所では発電機を使います。そのとき、次の点に気をつけます。
- インバーター発電機を選ぶ:発電機の中には、エンジンの状態や負荷によって電圧や周波数が揺れやすいものがあります。パソコンや音響機器のような精密な機器には、波形のなめらかな電気をつくる「正弦波インバーター」方式の発電機が向いています
- 容量に余裕を持たせる:使う機器の消費電力を合計して選びます。参考までに、DXR15 mk3 の消費電力はメーカー公表で120W(1/8出力時)です。照明や出店のキッチンカーなどと同じ発電機を使う場合は、特に余裕が必要です
- 置き場所:発電機は屋外の換気のよい場所で使い、製品ごとに定められた距離を建物や設備から離します(屋内で使用したことによる一酸化炭素中毒が疑われる死亡事故も起きています)。エンジン音がマイクに入らないよう、ステージからも離して置きます
機器どうしをつないだときに出るノイズ(ブーンという音)の対策として、アイフィルムではノイズ対策用のアイソレーター(Radial IceCube)も用意しています。
近隣への配慮と、ケーブルの養生
音量と時間帯のルールを確認する
屋外の音は、会場の外にも広がります。住宅地の静けさの目安として、国の騒音に係る環境基準では、道路に面していない一般地域のうち、住居に使われる地域(類型A・B)で昼間(6時〜22時)55デシベル以下、夜間(22時〜翌6時)45デシベル以下と定められています。
拡声機(スピーカー)の使い方については、自治体の条例でルールを定めている例もあります。たとえば大阪府では、商業宣伝のための拡声機について、午後8時から翌日の午前9時(日曜日その他の休日は午前10時)までの使用禁止や、拡声機の直下から10m離れた地点での地域ごとの音量の上限などを定めています。ルールは自治体ごとに異なり、新潟県でも新潟市内には県とは別に市の条例が適用されるなど、場所によって確認先が変わります。会場の管理者や自治体の担当課に、事前に確認しておきます。
次のような配慮もしておきます。
- 近隣の方へ、開催日時と音が出る時間帯を事前にお知らせする
- リハーサルや音出しの時間を、早朝や夜にかからないよう設定する
- スピーカーの正面を住宅側から外し、必要以上に音量を上げなくて済む配置にする
ケーブルは「人の通り道」を避けて養生する
屋外の会場は来場者の動きが読みにくく、地面を這うケーブルにつまずく事故が起きやすい場所です。ケーブルはできるだけ通路を避けて会場の端に沿わせ、どうしても横切る場所はケーブルプロテクター(ケーブルを覆う段差の小さいカバー)やテープで固定します。機材が多いイベントでは、電源の負荷分散とあわせてケーブルの養生まで含めて計画しておくことが、安全な運営につながります。
規模別の機材の考え方
屋外イベントの機材は、「何を、どこまで届けたいか」で考えると選びやすくなります。アイフィルムの保有機材を例に、規模ごとの考え方をまとめました。
| イベントのタイプ | 機材の考え方 | アイフィルムの機材の例 |
|---|---|---|
| 会場内の案内放送・呼び出し | 声が聞き取れることを優先し、広い範囲に届くスピーカーを分散して置く | ホーンスピーカー TOA SC-730A(2台)、拡声スピーカー ユニペックス CV-381A(4台) |
| 挨拶・司会が中心の式典、開会式 | 出力の大きいスピーカーを高く設置し、ワイヤレスマイクで動きやすく | ヤマハ DXR15 mk3(2台)、ヤマハ MG20XU(20ch)、Shure BLX288/SM58 ワイヤレス(2本)、Shure SM58(2本) |
| 音楽ステージ・ライブ | 低音を支えるサブウーファーを追加し、音質やハウリングをグラフィックEQで細かく調整 | ヤマハ SW1181V サブウーファー(1000W)、グラフィックEQ ベリンガー FBQ6200 |
| 奥行きのある広い会場 | 会場の途中や後方に補助のスピーカーを置き、全体を均一にカバー | パッシブスピーカー ヤマハ BR15(2台)・ラムサ WS-A200(4台)、パワーアンプ ラムサ WP-9300 ほか |
受付や物販テントなど、ステージから離れた場所にBGMを流したいときは、コンパクトスピーカー(BOSE 101MM、4台)も使えます。実際のイベントでは、会場の広さ、ステージの位置、近隣の状況、電源の場所を確認したうえで、必要な機材を組み合わせます。
よくある質問
Q. 屋外のイベントにも対応できますか?
対応できます。電源の位置や天候への備えを事前に確認し、会場に合った機材構成をご提案します。観光協会などが主催する屋外の飲食イベントやライブで、音出し・マイクのオペレーションと照明演出を担当しています。
Q. 雨の予報が出ているときはどうなりますか?
機材が濡れない配置を事前に決めておきます。雨天時の進め方も、打ち合わせの段階でご相談ください。
Q. 屋外での音響の費用はどのくらいですか?
アイフィルムの音響PAは、機材とオペレーター1名込みで1日60,000円(税別)からです。スタッフの追加や前日仕込み、会場エリアによる出張費で金額が変わります。計算例はイベント音響(PA)の料金はどう決まる?で詳しく紹介しています。
Q. 下見はしてもらえますか?
必要に応じて会場の下見を行い、機材構成と当日の流れを決めます。屋外では電源の位置やスピーカーを置ける場所、近隣の住宅の位置などを一緒に確認します。
屋外イベントの音響をアイフィルムに頼む場合
アイフィルムは、新潟県糸魚川市と新潟市に拠点を持つ映像制作会社です。音響PAでは、ヤマハ中心の機材とオペレーターがお伺いし、地域のお祭りや野外ステージなど屋外の会場でも、後ろの方まで声と音を届けます。照明演出や記録撮影、ライブ配信もまとめてお任せいただけます。
対応できる機材は音響PAのページと機材一覧でご覧いただけます。料金の目安は、条件を選ぶだけで金額が出る料金シミュレーターでご確認ください。会場や内容が決まっていなくても、日程が分かればお問い合わせから相談を受け付けています。


