
ポップアップストアの施工は、施設のルールを確かめるところから始まります。時期の目安でいえば、2か月前に出店場所と会期を決めて施工会社に相談し、1か月前にはデザインを確定して制作に入る流れです。
商業施設の一角や空き区画を数日〜数週間だけ借りて開くポップアップストアは、新しい商品やブランドを知ってもらう場として広く使われています。会期が短い分、準備から設営、撤去までを短い期間でこなさなければなりません。依頼する立場から見た7つのステップと準備期間の目安、商業施設ならではの注意点(搬入時間・養生・防炎・ガラス面のフィルム・吊り物・電源)、東京都内の商業施設での施工の様子をまとめました。展示会ブースの全体像は展示会ブースの装飾依頼ガイドにまとめています。
ポップアップストアの設営は「施設のルール」から始まる
展示会では、主催者が配る「出展の手引書」に、ブースの高さや電気工事のルールがまとめられています。商業施設のポップアップでも同じように、施設ごとに決まりごとがあります。
店舗デザイン会社の解説によると、商業施設に出店する場合は、施設が定める設計の指針や施工の指針に沿った設計・施工が求められ、施設や階ごとに基準があるとされています。設備や防災の工事は施設側の指定業者と契約するケースがほとんどで、内装の仕上げにも制限があるとされています。計画の内容は施設側の内装監理室(施設の工事を管理する窓口)がチェックし、図面やパースの提出が必要になることがあります。
期間限定のポップアップでも、最初に確認しておきたいことは常設店と共通しています。
| 確認すること | 内容 | なぜ大事か |
|---|---|---|
| 区画のサイズ・形 | 間口・奥行・天井高、柱や壁の位置 | 什器の配置や装飾の大きさが決まる |
| 搬入のルート・時間 | 搬入口、エレベーター、作業できる時間帯 | 設営の日程と人数が決まる |
| 床・壁・天井の扱い | 床に貼れるか、壁に固定できるか、天井から吊れるか | 装飾の方法が変わる |
| 電源 | コンセントの位置と容量 | 照明やモニターの台数が決まる |
| 提出物 | 図面、パース、使用する素材の資料など | 審査の時間を見込んでおく |

準備から撤去までの7つのステップ
ポップアップストアの設営は、おおむね次の流れで進みます。
| ステップ | 主な作業 | 発注側で決めること・用意するもの |
|---|---|---|
| 1. 区画の確認・施設のルール | 区画の採寸、施設の規定の確認 | 出店場所、会期、施設の担当者との連絡 |
| 2. デザイン・図面 | レイアウト、グラフィック、什器の図面 | コンセプト、ロゴやブランドのデータ |
| 3. 数量の拾い出し・見積もり | 出力物・什器の数量を図面から拾う | 予算、優先したいこと |
| 4. 制作・発注 | 出力物の印刷、什器・造作物の制作、レンタル品の手配 | デザインの確定、入稿データ |
| 5. 搬入・設営 | 養生、什器の組み立て、装飾、サイン、照明 | 当日の立ち会い、商品の搬入 |
| 6. 会期中 | 不具合の対応、記録撮影 | 運営スタッフ、在庫の補充 |
| 7. 撤去・原状回復 | 装飾の取り外し、搬出、清掃 | 撤去の時間帯の確認 |
1〜2. 区画の確認からデザイン・図面まで
区画が決まったら、まず実際の寸法と施設の規定を確認します。デザインは、この寸法とルールの中で考えることになります。「天井から装飾を吊りたい」「ガラス面にグラフィックを貼りたい」といった希望は、デザインを固める前に施設に確認しておくと、あとでのやり直しを防げます。
海外のブランドの場合、海外のデザイン会社が仕様書を作ることもあります。その場合は、日本の施設のルールに合わせて仕様を読み替える作業が必要になります。
3. 数量の拾い出しと見積もり
図面やデザインデータから、パネルやシートの枚数、什器の数などを数え上げる作業を「数量の拾い出し」と呼びます。図面に数量が書かれていないことも多いため、ここで内訳を整理しておくと、費用の調整がしやすくなります。予算が決まっている場合は、この段階で伝えておくと、素材や仕上げ、レンタルと制作の組み合わせを見直した提案を受けやすくなります。
4〜5. 制作・発注から搬入・設営まで
デザインが確定したら、出力物の印刷と什器・造作物の制作に入ります。商業施設では作業できる時間が決められていることが多いため、作業場で「現場では組み立てるだけ」の状態まで仕上げておくと、設営の時間を短くできます。
6〜7. 会期中から撤去まで
会期中は、照明やモニターの不具合、装飾のはがれなどに備えて、連絡先と対応の手順を決めておきます。撤去も施設が決めた時間帯の中で行うため、搬入と同じように時間とルートを確認しておきます。区画を元の状態に戻して引き渡すまでが撤去の作業です。
準備期間の目安
準備期間は規模や施設によって大きく変わります。目安として、次のような情報があります。
ネットショップ担当者向けの専門メディアでは、ポップアップの準備を「2か月前から当日まで」の流れとして紹介しており、事前の告知は少なくとも1か月前には始めたいとしています。
施工の面では、東京消防庁の案内で、店舗などの修繕・模様替え・間仕切りの変更を行う場合は、着手する日の7日前までに「防火対象物工事等計画届出書」を出す必要があるとされています(届出が必要かどうかは工事の内容や施設によるため、施設の担当者や管轄の消防署に確認します)。
これらの情報をもとに、施工に関わる準備を時期ごとに並べると次のようになります。
| 時期 | 目安になる情報 | 施工に関わる準備 |
|---|---|---|
| 2か月前 | 準備を始める時期の一例(ネットショップ担当者フォーラム) | 出店場所・会期の決定、施設のルールの確認、施工会社への相談 |
| 1か月前 | 事前告知を始めたい時期(同上)/アイフィルムがご相談をおすすめしている時期 | デザインの確定、数量の拾い出し・見積もり、制作・発注 |
| 着手の7日前まで | 防火対象物工事等計画届出書の提出期限(東京消防庁・届出が必要な場合) | 施設への提出物の最終確認、搬入・設営の段取りの確定 |
| 搬入日〜会期 | 施設が決めた搬入時間 | 搬入・設営、照明やモニターの確認、会期中の対応 |
| 会期終了後 | 施設が決めた撤去時間 | 撤去・搬出 |
デザインや制作に時間がかかる装飾ほど、早く動き出した分だけ日程に余裕が残ります。アイフィルムでは、制作物の量にもよりますが、会期の1か月前までのご相談をおすすめしています。
商業施設で施工するときの注意点
搬入時間と夜間作業
営業中の商業施設では、搬入や工事を閉店後の夜間に行うことが多く、作業できる時間や資材を運び込める時間に細かい決まりがあります。前述の店舗デザイン会社の解説では、昼間に工事ができるかどうかで金額が大きく変わることがある、とも説明されています。搬入口から区画までのルートや、エレベーターの大きさも確認しておきます。
床・壁の養生
養生とは、作業中に床や壁を傷つけたり汚したりしないよう、シートなどで保護することです。商業施設の床は、ほかのテナントやお客様と共有する場所でもあるため、搬入ルートを含めて養生してから作業を始めます。
防炎(燃えにくい素材)の確認
東京消防庁の「防炎対象物品」の案内では、カーテンや布製のブラインドのほか、店舗部分で天井から下げた状態やパネルとして使う合板、下げ丈がおおむね1m以上ののれんや装飾幕、試着室の目隠しの布などが挙げられています。布や合板を使った装飾は、防炎性能のある素材を選ぶのが基本です。
ガラス面のフィルム
入口のガラスにグラフィックのフィルムを貼ると、通路からの見え方が大きく変わります。フィルムメーカーの3Mの取扱説明書では、ガラス面に施工する前に「熱割れ計算」(日射の熱でガラスが割れるおそれがないかの確認)を行うことや、一度はがすと十分な接着力が得られないことが注意点として書かれています。そのため、施設の許可に加えて、貼る位置や大きさを事前に決めきっておきます。
天井からの吊り物
天井から装飾を吊るすと、空間に立体感が生まれ、遠くからも目に入ります。ただし、天井から吊れるかどうか、どこに固定できるかは施設ごとに異なります。消防法施行規則第13条の2では、スプリンクラーヘッド(天井の散水口)のデフレクター(水を散らす部分)から下方0.45m以内、かつ水平方向0.3m以内には何も設けたり置いたりしないことが定められています(標準型ヘッドの場合)。吊り物の位置は、スプリンクラーや火災感知器の位置も見ながら決めます。
電源
照明、モニター、レジなど、ポップアップでも意外と電気を使います。区画にあるコンセントの位置と容量を早めに確認し、使う機器の台数と消費電力を整理しておくと、当日の「ブレーカーが落ちた」を防げます。

事例:東京都内の商業施設での台湾ブランドのポップアップ展示
アイフィルムでは、東京都内の商業施設で行われた、台湾のブランドを紹介する約3週間のポップアップ展示を担当しました。出力物の制作、什器・造作物の制作、現地での設営・撤去を一式でお受けしています。海外のデザイン会社による仕様書をもとに、ご予算に合わせて仕様を調整しました。
施工は、次の順番で進めました。
| 工程 | 内容 |
|---|---|
| 施工前 | 什器も装飾もない状態の区画 |
| 養生・搬入 | 床を養生し、資材と什器を搬入 |
| 什器の組み立て・配置 | 展示台を組み立て、図面どおりに配置 |
| ガラス面のフィルム施工 | 入口のガラスにグラフィックのフィルムを貼る |
| 天井から吊るす装飾 | 半透明シートの装飾を、バランスを見ながら天井から吊るす |
| 完成 | 装飾・照明・サインを整えて、オープンを迎える |
入口のガラス面、サイン、天井の装飾がそろうと、通路から見たときの印象がぐっと引き締まります。施工の様子の写真は展示会・ポップアップ設営のページでご覧いただけます。

アイフィルムに頼める範囲
アイフィルムでは、ポップアップストアや展示会ブースの出力物、什器・造作物の制作、搬入・設営・撤去までを一つの窓口でお受けしています。数量が書かれていない図面やデザインデータからでも、出力物や什器の数量を拾い出し、内訳がわかるお見積りをお出しします(お見積りは無料です)。
映像制作会社なので、店頭で流すループ動画の制作やモニターの設置、会期中の記録撮影まで同じチームで対応できます。新潟県内の会場に加えて、東京都内の展示会場や商業施設でのポップアップにも、現地での設営・撤去に伺います。施設に提出する書類や手続きについても、内容に合わせてご相談ください。
詳しくは展示会・ポップアップ設営のページをご覧ください。会期と会場をお問い合わせからお知らせいただければ、進め方と費用の目安をお伝えします。
よくある質問
Q. ポップアップストアの施工は、どのくらい前に頼めばよいですか?
制作物の量によりますが、アイフィルムでは会期の1か月前までのご相談をおすすめしています。施設への提出物や審査がある場合は、さらに余裕を見ておいてください。お急ぎの場合も、まずはご連絡ください。
Q. 海外のデザイン会社が作った仕様書でも対応できますか?
はい。海外のデザイン会社が作った仕様書(中国語など)を読み解き、日本の会場ルールに合わせて施工した実績があります。
Q. 出力物だけ、施工だけといった部分的な依頼もできますか?
はい、部分的なご依頼にも対応しています。レンタル什器の手配もまとめて承ります。
Q. デザインが決まっていなくても相談できますか?
ご相談ください。手描きのラフやイメージ写真からでも、仕様を一緒に整理します。

