
撮影当日の朝、会議室にカメラと照明が運び込まれ、出演者が席に着く。この時点で、仕上がりを左右する準備はほとんど終わっています。
動画の撮影は、カメラを回している時間よりも、その前の準備で仕上がりが決まります。撮影の段取りは制作会社が組みますが、出演者の予定や撮影場所の状況、社内への連絡など、発注側でなければ動けない準備もあります。ここが整っていると、当日は撮影そのものに集中でき、撮り直しも防げます。
撮影当日までに発注側で準備しておきたいことを5つにまとめ、チェックリストの表にしました。相談から納品までの全体の流れは動画制作の流れで紹介しています。
まずは全体像です。制作会社との打ち合わせの前にこの表を見ておくと、何をいつまでに決めればよいかがつかめます。時期は目安で、撮影の規模や社内の手続きによって前後します。
| 準備すること | 確認する内容 | 時期の目安 |
|---|---|---|
| 1. 出演者 | 出演者の決定、当日の予定の確保、服装の確認、出演の了承 | 2〜3週間前 |
| 2. 撮影場所 | 施設や公共の場所の撮影許可、社内・関係者への周知、片付け | 許可は早めに。片付けは前日まで |
| 3. 写り込み | 書類、パソコンの画面、掲示物、他社のロゴ、映ってはいけない人 | 前日〜当日の朝 |
| 4. 音 | 空調、電話、機械、チャイムや館内放送を止められるか | 1週間前に確認、当日に対応 |
| 5. 進行と持ち物 | 当日の進行表、立ち会う担当者、商品・小道具・資料、駐車場・電源・控室 | 1週間前〜前日 |
1. 出演者の予定を押さえ、服装を決める
予定は「撮影時間+前後の余裕」で押さえる
出演者の予定は、撮影する時間だけでなく、前後に余裕を持って押さえておきます。カメラや照明の準備、立ち位置の確認、言い直しなどで、予定より時間がかかることがあるためです。複数の社員が登場する場合は、誰が何時から何時まで現場にいるかを一覧にしておくと、当日の段取りが組みやすくなります。
服装は事前に制作会社と相談する
服装は、映像の印象を大きく左右します。次の点を目安に、迷ったら事前に写真を送って制作会社に確認します。
- 細かいストライプやチェック柄は避ける:画面上でちらついて見えることがあります。無地や大きめの柄が安心です。
- 真っ白・真っ黒の服は相談する:背景や照明との相性で、明るさの調整が難しくなる場合があります。
- 制服や作業着は、きれいな状態のものを:汚れやしわ、名札の向きも映像では目立ちます。予備を1着用意しておきます。
- ブランドのロゴが大きく入った服は控える:会社の動画として見たときに、ほかのブランドの印象が残ってしまうためです。
出演者には、どこで、どのくらいの期間公開する動画なのかを伝えて、了承を得ておきます。社員が出演する動画での同意の取り方は、採用動画の構成と作り方でも紹介しています。
2. 撮影場所を整え、許可と社内周知を済ませる
片付けは「カメラに映る範囲」を中心に
撮影場所は、前日までに片付けておきます。普段は気にならない段ボール、配線、私物、貼りっぱなしの古い掲示物も、映像になると意外と目に入ります。どの範囲が映るかは撮影の内容で変わるため、ロケハン(撮影場所の下見)のときに制作会社と一緒に確認しておきます。
社内と関係者へ前もって知らせる
撮影の日時と場所は、社内や同じ建物の関係者に前もって知らせておきます。映りたくない人が別の場所で作業できるようにしたり、来客の予定をずらしたりと、周りの協力があると撮影が止まりません。お客様が出入りする店舗や施設なら、撮影中であることを伝える掲示も用意しておきます。
屋外や公共の場所では許可が必要になることがある
自社の敷地の外で撮影する場合は、場所ごとに許可の要否を確認します。
| 撮影する場所 | 許可の確認先 | 確認しておきたいこと |
|---|---|---|
| 道路・歩道 | 撮影場所を管轄する警察署 | 道路使用許可が必要か、申請に必要な日数 |
| 公園 | 公園の管理者(自治体の公園管理事務所など) | 許可の要否、申請の期限、使用料、撮影できる時間帯 |
| 公共施設・商業施設 | 施設の管理者 | 撮影できる範囲と時間、ほかの利用者への配慮 |
| 上空(ドローン) | 国土交通省(飛行許可・承認の申請) | 人口集中地区や催し場所の上空など、許可・承認が必要な飛行か |
道路での撮影について、新潟県の道路交通法施行細則では「道路においてロケーション、撮影会又は街頭録音会等をすること」を、警察署長の許可を受けるべき行為として定めています。警察庁も、ロケ撮影に伴う道路使用許可について、時間に余裕を持った事前の相談を呼びかけています。
公園での撮影は、管理者ごとに条件が決まっています。たとえば横浜市の案内では、撮影の許可は公園管理者が行い、申請の期限は公園によって異なり、撮影の1〜3週間前としているところが多いとされています。使用料も、ビデオ撮影は4時間以内で3万円、同じ日に複数の公園で撮影する場合はそれぞれに使用料がかかるとされています(都心部の一部の公園は別の定め)。地域によって条件が違うため、撮影する場所の管理者へ早めに問い合わせてください。
ドローンで撮影する場合は、人口集中地区や催し場所の上空、夜間の飛行などで国土交通省の許可・承認が必要になります。国土交通省は、申請書類を飛行開始予定日の少なくとも10開庁日前(土日・祝日を除く)までに提出するよう案内しています。
県内でロケ地を探したり、撮影の相談先がわからなかったりする場合は、新潟県フィルムコミッション協議会のロケ支援窓口に相談できます。県内のロケ適地の情報提供や、県内各地域のフィルムコミッション・観光協会などの支援先との調整を行っています。

3. 写り込んではいけないものを確認する
撮影後に「映ってはいけないものが映っていた」と気づくと、ぼかしの加工や撮り直しが必要になります。撮影の前日か当日の朝に、カメラに映る範囲を一通り見て回ります。
| 確認する場所 | 写り込みやすいもの |
|---|---|
| 机の上・棚 | 契約書、見積書、名簿、社外秘の資料 |
| パソコン・モニター | 顧客リスト、メール、社内システムの画面 |
| 壁・ホワイトボード | 売上の数字、予定表、取引先の名前、手書きのメモ |
| 受付・店内 | 来客、お客様の顔、車のナンバー |
| 背景全体 | 他社のロゴや製品、ポスターや絵画、キャラクターグッズ |
人の顔が映った映像は、本人を特定できる情報です。個人情報保護委員会のガイドラインでも「本人が判別できる映像情報」は個人情報の例として挙げられています。お客様や来客が映る可能性がある場所では、撮影の時間帯をずらすか、映る範囲を区切っておきます。
ポスターや絵画などの著作物は、背景に小さく写り込む程度であれば許可なく利用できる場合がある一方、それ自体を撮影の対象にする場合は扱いが変わると、文化庁の解説で示されています。他社のロゴや製品も含めて、判断に迷うものはカメラに映る範囲から外しておくのが確実です。
4. 空調や電話など「音」の対策をしておく
映像はあとから色や明るさを調整できますが、録音された雑音を取り除くのは簡単ではありません。特にインタビューやナレーションのように声が主役の撮影では、音の準備が仕上がりを左右します。
- 空調:本番中だけ止められるか、事前に確認します。止めると室温が変わるため、休憩のたびに運転を戻すなど、出演者の体調にも気を配ります。
- 電話:固定電話の呼び出し音を切る、または撮影場所から離れた電話に転送します。出演者やスタッフのスマートフォンはマナーモードではなく、音も振動も出ない設定にします。
- 機械・設備:工場の機械、冷蔵庫、換気扇、プリンターなど、止められるものと止められないものを分けておきます。止められない音がある場合は、撮影場所を変える判断もできます。
- チャイム・館内放送:学校や公共施設では、チャイムや放送の時間を確認し、その時間を避けて撮影の予定を組みます。
- 外の音:近くの工事、車の通り、行事の予定なども、わかる範囲で制作会社に伝えておきます。
撮影中の部屋の入口に「撮影中・お静かに」の札を出しておくと、うっかり入室や話し声を防げます。
5. 当日の進行表と担当者、持ち物をそろえる
進行表で全員の動きをそろえる
撮影当日の流れは、香盤表(こうばんひょう=撮影の順番と時間、出演者、場所をまとめた進行表)にまとめます。香盤表は制作会社が作りますが、出演者の予定や施設の使える時間など、発注側の情報が元になります。完成した香盤表は、出演者や関係部署にも共有しておきます。
立ち会う担当者を決める
当日は、発注側の担当者にも現場に立ち会っていただきます。「この製品はこの角度で見せたい」「この言い回しは社内用語なので言い換えたい」といった判断をその場でできるため、撮り直しを防げます。上司や関係部署の確認が必要な場面がある場合は、その方の予定も押さえておくと、当日中に判断できます。
商品・小道具・資料は「予備」と「最新版」を
撮影で使う物は、前日までにそろえておきます。
- 商品:傷や汚れのないものを複数個。パッケージやラベルが最新のデザインかも確認します。
- 小道具:制服、名札、使う道具、ノートやペンなど、画面に映る物。
- 資料:会社のロゴデータ、製品の正式名称、出演者の名前と役職の表記(テロップに使います)。
- 現場の情報:駐車場、搬入口、電源の位置、控室や着替えの場所。
アイフィルムでの撮影準備
アイフィルムでは、シナリオや絵コンテを作る段階で、ロケハンや撮影許可の申請、衣装や小道具の準備、香盤表の作成といった撮影前の手続きを整理し、お客様と一緒に準備を進めます。撮影当日はお客様にも同行していただき、演出やイメージにずれがないかを確認しながら撮影します。
ドローンでの空撮では、二等無人航空機操縦士の資格を持つパイロットが、必要な飛行許可・承認の申請や関係者への連絡も含めて対応します。道路や公園での撮影許可の申請をどこまで代行できるかは、撮影場所に合わせてご相談ください。
なお、撮影の手配が済んだあとの日程変更は、工程の進み具合に応じて実費やキャンセル料が発生する場合があります。予定が変わりそうなときは、できるだけ早くご連絡ください。
制作全体の進め方は動画制作の流れ、ご相談はお問い合わせからどうぞ。「撮影場所がまだ決まっていない」という段階でも、一緒に検討できます。
よくある質問
Q. 雨が降ったら撮影はどうなりますか?
屋外の撮影がある場合は、打ち合わせの段階で雨のときの対応(屋内に切り替えるか、日程を変えるか)を決めておきます。天候に左右されるドローン撮影などでは、あらかじめ予備日を設定しておきます。
Q. 映りたくない社員がいる場合はどうすればよいですか?
撮影の日時と場所を事前に知らせて、その時間は別の場所で作業してもらう方法が確実です。どうしても同じ空間にいる場合は、カメラに映らない位置を制作会社と相談して決めておきます。
Q. 撮影許可はいつまでに取ればよいですか?
場所や管理者によって異なります。道路使用許可は管轄の警察署、公園は公園の管理者が窓口で、申請に数日から数週間かかることがあります。撮影場所の候補が決まったら、日程を確定する前に問い合わせておきましょう。
Q. 当日、担当者はずっと現場にいる必要がありますか?
出演者や撮影場所の判断が必要な場面には、立ち会っていただくのがおすすめです。物撮りや風景の撮影など、制作会社に任せられる場面もあるため、香盤表を見ながら立ち会う時間を相談して決めてください。


