
更地に重機が入り、基礎ができ、鉄骨が立ち上がり、外装が仕上がっていく。工事が始まると、現場は毎日のように姿を変えます。その変化を地上から写真に残すことはできても、敷地全体を一枚に収めるのは難しいものです。そこで役立つのが、ドローン(小型の無人航空機)による空撮です。
ここでは、建設現場の進捗をドローンで記録するときに「何が残せるのか」「どのくらいの頻度で、どう撮ればよいのか」「現場ならではの安全管理と許可は何か」を、二等無人航空機操縦士の資格を持つ立場から、発注を検討している方向けにまとめます。
建設現場をドローンで記録すると何が残せるのか
ドローンなら、高い位置から敷地全体を見下ろせます。地上のカメラでは何枚にも分けて撮る範囲を、一度に、しかも毎回同じ視点で残せます。残した素材は、工事の記録だけでなく、報告やPR、採用の場面でも使えます。
| 使い道 | 主に見る人 | 残しておきたい素材 |
|---|---|---|
| 全景の記録 | 社内・発注者 | 敷地全体が入る真上・斜め上からの写真 |
| 進捗の比較 | 現場・社内 | 毎回同じ位置・同じ角度の写真 |
| 施主・社内への報告 | 施主、本社、工程会議 | 写真に日付を添えた資料、短い動画 |
| 完成PR | お客様、地域の方 | 竣工後の外観、周辺環境が伝わる動画 |
| 採用 | 求職者、学生 | 着工から完成までをつないだ映像 |
特に効果が大きいのが「進捗の比較」です。同じ位置から撮った写真を並べると、工事がどこまで進んだかがひと目で伝わります。現場に足を運べない施主や本社の方にとっては、何枚もの地上写真よりも、一枚の全景のほうが状況をつかみやすいはずです。
工事の記録は、そのまま会社の財産になります。竣工後に会社紹介や施工事例のページを作るとき、着工前の更地から完成までの変化を見せられるのは、記録を続けてきた現場だけです。採用の場面でも「自分たちがつくったものが形になっていく様子」は、仕事の魅力を伝える素材になります。採用動画の考え方は採用動画の費用相場と制作費の真実でも紹介しています。

撮影の頻度と「同じ構図」で撮るコツ
頻度は「工程の節目」か「毎月」で決める
撮影の頻度は、工事の期間と、記録をどう使うかで決めます。目安は次のとおりです。
| 撮り方 | 向いている現場 | 特徴 |
|---|---|---|
| 工程の節目ごと | 工期が短い現場、PR素材が主な目的 | 着工前・基礎・上棟(骨組みの完成)・外装・竣工など、見た目が大きく変わるタイミングで撮る |
| 毎月1回 | 工期が半年以上の現場、報告が主な目的 | 月例の報告資料や工程会議にそのまま使える |
| 節目+毎月 | 大きな現場、竣工後に映像化したい現場 | 記録の抜けが少なく、着工から完成までの映像を作りやすい |
どの撮り方でも、着工前の更地は必ず撮っておいてください。工事が始まると二度と撮れない一枚で、完成後の「ビフォー・アフター」の起点になります。
毎回同じ構図で撮るために記録しておくこと
進捗の比較では、毎回同じ構図で撮ります。少し位置がずれるだけで、並べたときに変化がわかりにくくなります。そこで、初回の撮影で次の項目を記録し、2回目以降も同じ条件で撮ります。
- 離陸する場所と機体の位置:地図上の位置と高さ(高度)
- カメラの向き:機体が向いている方角と、カメラを下に傾ける角度
- レンズ(画角):広角か望遠か。途中で変えると比較しにくくなります
- 撮る時間帯:影の向きや長さが変わるため、毎回近い時間帯にそろえます
ドローンの中には、あらかじめ登録した地点(ウェイポイント)を順番に飛び、同じルートを繰り返し飛行できる機能を持つ機体があります。アイフィルムが使っている DJI Mavic 3 Pro Cine も、メーカーの発表で「ウェイポイント飛行」によりルートを正確に繰り返せるとされています。こうした機能と記録を組み合わせることで、毎回の写真をそろえやすくなります。
なお、Mavic 3 Pro Cine は、広角(24mm)・中望遠(70mm)・望遠(166mm)の3つのカメラを積んだ機体です(焦点距離はメーカー仕様の換算値)。全景は広角で、クレーンや外装の細部は望遠で、と1回の飛行で撮り分けられます。
写真と動画の使い分け
1回の飛行で写真と動画の両方を撮れます。ただ、使い道によって向き不向きがあるので、最初に何に使うかを決めておくと撮り漏れが防げます。
| 写真(静止画) | 動画 | |
|---|---|---|
| 向いている使い道 | 進捗の比較、報告書、工程会議の資料 | 完成PR、会社紹介、採用、竣工式での上映 |
| 強み | 細部まで確認しやすい。印刷や資料に貼りやすい | 敷地の広さや周辺との位置関係、スケール感が伝わる |
| 撮り方 | 毎回同じ位置・同じ角度で撮る | ゆっくり上昇する、周りを回るなど、動きで見せる |
| 定期撮影での扱い | 毎回必ず撮る | 節目の回にまとめて撮る |
おすすめは、毎回の撮影では写真を基本にし、節目の回には動画も撮っておく方法です。竣工後に、毎回の写真をつないで着工から完成までを短く見せる映像や、節目の動画と地上で撮った作業風景を組み合わせた映像に仕上げることもできます。

建設現場の上空を飛ばすときの安全管理と許可
ドローンを飛ばすための許可や申請の全体像、費用の目安は、別の記事ドローン空撮の費用相場と飛行許可の仕組みで詳しくまとめています。ここでは、建設現場ならではの注意点にしぼって紹介します。
現場で働く方も「第三者」にあたることがある
国土交通省の「無人航空機の飛行の安全に関する教則(第5版)」では、「第三者」を「無人航空機の飛行に直接的又は間接的に関与していない者」としています。操縦者や補助者は第三者にあたりませんが、同じ現場で作業している方でも、飛行のことを知らされていなければ第三者として扱われます。
教則では、飛行の目的を共有し、機体が予定外の動きをしたときの指示や安全上の注意を受けているなどの条件を満たす人を「間接関与者」とし、第三者から外しています。建設現場では、朝礼などで飛行の時間と範囲、注意事項を共有しておきます。
重機や周りの建物は「物件」として扱われる
同じ教則では、人や物件との間に30m以上の距離を保って飛行させることを原則としています。ここでいう「物件」には、自動車や建設機械などの車両、ビル・住居・電柱・電線・鉄塔などの工作物が含まれます。
建設現場は、重機やクレーン、仮設の事務所、隣の住宅、道路を走る車など、物件に囲まれた場所です。30m未満に近づく飛行は原則として国の承認が必要になるため、どこまでが関係者・関係者の物件にあたるかを現場の方と確認したうえで、飛行の高さや経路を決めます。
市街地の現場は人口集中地区(DID)かどうかを確認する
国土交通省は、人口集中地区(DID)の上空を、許可が必要な空域のひとつとしています。駅前や住宅地など市街地の現場は、この人口集中地区にあたることが多く、その場合は原則として飛行の許可が必要です。工業専用地域など、国の告示で定められた区域は例外とされています。現場の住所がわかった時点で確認しておきます。
許可や承認が必要な「特定飛行」を行う場合は、飛行計画を事前に国(ドローン情報基盤システム「DIPS」)へ通報し、飛行日誌をつけることも求められています。
当日の立入管理と、現場との段取り
教則では、第三者が飛行の範囲に入らないようにする「立入管理措置」の例として、関係者以外の立入りを制限する看板、コーンなどによる表示、補助者による監視、口頭での注意が挙げられています。建設現場での撮影では、次のような段取りを現場の方と決めておきます。
- 飛行する時間帯(クレーン作業や搬入の少ない時間を選ぶ)
- 離着陸の場所と、立入りを控えてもらう範囲
- 朝礼での周知と、当日の連絡役
- 近隣の住宅や道路への配慮(必要に応じて事前のお知らせ)
- 雨や強い風のときの予備日
DJIの Mavic 3 Pro の取扱説明書では、高い建物や大きな金属の構造物が、機体の方位を測るセンサー(コンパス)やGNSS(衛星測位)の精度に影響することがあるとし、構造物から5m以上離して飛行させることをすすめています。離陸する場所は、鉄骨や重機から離れた開けた場所を選ぶのが基本です。

国のi-Constructionの動きと、測量とのちがい
国土交通省は、2016年度から建設現場にICT(情報通信技術)を取り入れる「i-Construction」を進めています。2016年3月の発表では、土工の測量・設計・施工・検査に3次元データを使う新しい基準を導入するとし、同年6月には、ドローン(UAV)で施工前の測量を行うICT土工の第1号工事が、北海道開発局と北陸地方整備局の工事で始まったと発表しています。
さらに2024年4月には「i-Construction 2.0」を策定し、2040年度までに建設現場の省人化を少なくとも3割、生産性を1.5倍に高めることを目指すとしています。柱は「施工のオートメーション化」「データ連携のオートメーション化」「施工管理のオートメーション化」の3つです。現場の状況をデータや映像で共有する流れは、これからも広がっていくと考えられます。
ここで知っておきたいのが、同じドローンでも「測量」と「記録・PRの空撮」は別の業務だということです。国土地理院の「UAVを用いた公共測量マニュアル(案)」では、ドローンで撮った写真から地図データや三次元点群データ(地形を細かな点の集まりで表したデータ)を作る方法が定められており、位置の目印になる標定点の配置や、誤差が決められた範囲に収まっているかの確認など、測量としての作業が求められます。
アイフィルムのドローン空撮は、進捗の記録、報告、完成PR、採用などに使う写真と映像が中心です。出来形の管理や土量の計算など測量データが必要な場合は、測量を専門とする会社への依頼と組み合わせて計画すると、記録と測量の役割分担がはっきりします。
建設現場の空撮で、アイフィルムが担当する範囲
アイフィルムでは、工事の進捗記録や竣工記録、完成した建物の外観撮影を、二等無人航空機操縦士(夜間飛行・目視外飛行の限定解除済み)の資格を持つパイロットが担当します。賠償責任保険・機体保険に加入し、飛行は操縦担当と安全監視担当の2名体制で行います。必要な飛行許可・承認の申請や、関係者への連絡も含めて進めます。
使用する機体は DJI Mavic 3 Pro Cine です。空撮素材の納品のほか、SONY α7S III などの地上カメラで撮った作業風景と組み合わせて、竣工映像や会社紹介動画に仕上げることもできます。毎月の進捗記録など、同じアングルでの定期撮影にも対応しています。料金の目安は1フライト(約20分程度)あたり3万円台からで、撮影内容や回数を伺ってお見積りします。
事例の詳細は建設・不動産・施設のドローン空撮記録、サービスの内容はドローン空撮のページをご覧ください。撮影場所と工期をお問い合わせからお知らせいただければ、撮影の頻度や進め方からご提案します。
よくある質問
Q. 撮影の日程はどのくらい前に決めればよいですか?
飛行の許可・承認の申請が必要な場合は、その手続きの期間も見込む必要があります。国土交通省の案内では、申請は飛行開始予定日の10開庁日前までに行うよう求められています。定期撮影であれば、初回の日程と撮影の間隔を早めに決めておくと、2回目以降の段取りが楽になります。現場の住所と工期がわかった段階でご相談ください。
Q. 雨や雪、風の強い日はどうなりますか?
安全を優先し、天候によっては予備日に振り替えます。日程を決める際に予備日も一緒に設定します。定期撮影の場合は、「毎月○日前後」のように幅を持たせておくと、天候に合わせて調整しやすくなります。
Q. 定期撮影の料金はどう決まりますか?
1回あたりの目安は1フライト(約20分程度)あたり3万円台からです。撮影の回数、写真か動画か、編集や資料化の有無によって変わるため、工期と使い道を伺ってお見積りします。
Q. 撮った写真を、こちらで報告書に使ってもよいですか?
報告書や社内資料、ホームページなど、使い道を事前に伺い、それに合わせた形式でデータを納品します。利用範囲は打ち合わせの際に決めておきます。
参考にした情報
- 「i-Construction 2.0」を策定しました(国土交通省)
- i-Constructionで建設現場が変わります!(国土交通省)
- i-Constructionの第1号工事がスタート!(国土交通省)
- 無人航空機の飛行の安全に関する教則(第5版)(国土交通省)
- 無人航空機の飛行禁止空域と飛行の方法(国土交通省)
- 無人航空機 飛行許可・承認申請ポータルサイト(国土交通省)
- 飛行計画の通報・飛行日誌の作成(国土交通省)
- UAVを用いた公共測量マニュアル 概要版(国土交通省 北陸地方整備局)
- DJI Reinvents Aerial Storytelling with World’s First Three Optical Camera Drone(DJI)
- DJI Mavic 3 Pro 仕様(DJI)
- DJI Mavic 3 Pro ダウンロード・ユーザーマニュアル(DJI)


