
「観光案内の動画を、海外からのお客様にも見てもらいたい」「外国人スタッフに、研修動画で手順を伝えたい」「海外の展示会で、自社製品を紹介したい」。英語や中国語などで声を入れる「多言語ナレーション」が役立つのは、こうした場面です。
ただ、日本語の原稿をそのまま翻訳して読んでもらうだけでは、意味は通じても「伝わる動画」にならないことがあります。字幕と吹き替えの使い分けから、翻訳で気をつけたいこと、ナレーターの選び方、収録の流れまで、制作する側の目線でまとめました。
多言語ナレーションが役立つ場面
まず、外国人の視聴者がどのくらいいるのかを数字で見てみます。日本政府観光局(JNTO)の発表では、2025年の訪日外客数(推計値)は42,683,600人で、前年比15.8%増の過去最高でした。
日本で暮らし、働く外国人も増えています。出入国在留管理庁によると、2026年(令和8年)6月末の在留外国人数は428万1,026人で過去最高を更新しました。国籍・地域別では中国、ベトナム、韓国、フィリピン、ネパールの順に多くなっています。厚生労働省のまとめでは、2025年(令和7年)10月末の外国人労働者数は2,571,037人、外国人を雇用する事業所は371,215か所で、いずれも届出が義務化された2007年以降で最多です。
観光庁が訪日外国人旅行者に行った調査(2025年11月〜2026年1月)では、旅行中に困ったこととして「施設等のスタッフとのコミュニケーション」が15.4%、「多言語表示の少なさ・わかりにくさ」が10.9%挙がっています。外国語の動画は、こうした言葉の壁を補う手段の一つになります。
| 場面 | 主な視聴者 | 動画の例 |
|---|---|---|
| インバウンド観光 | 訪日外国人旅行者 | 観光地・施設の紹介、館内の案内、体験メニューの説明 |
| 海外向けの製品紹介 | 海外の取引先・バイヤー | 製品紹介動画、工場や技術の紹介、Web広告 |
| 外国人スタッフ向け研修 | 社内の外国人スタッフ | 作業手順、安全教育、職場のルールの説明 |
| 展示会 | 国内外の展示会の来場者 | ブースで流す紹介映像、プレゼンテーション用の動画 |
研修動画の場合は、英語だけでなく、スタッフの母語で用意すると理解が深まりやすくなります。誰に見てもらうのかを先に決めることが、言語選びの出発点です。
字幕と吹き替え(ナレーション)の使い分け
外国語に対応する方法は、大きく分けて「字幕」と「吹き替え(ナレーション)」の2つです。どちらが良いかは、見る場所と見る人によって変わります。
| 字幕 | 吹き替え・ナレーション | |
|---|---|---|
| 伝わり方 | 目で読む | 耳で聞く |
| 向いている場所 | 音を出しにくい場所、SNSでの視聴 | 展示会のブース、研修、館内の案内 |
| 良いところ | 複数の言語を作りやすい。音がなくても伝わる | 映像から目を離さずに理解できる。作業手順の説明に強い |
| 気をつけたいこと | 一度に表示できる文字数に限りがあり、要約が必要 | 言語ごとに収録が必要。尺に合わせた原稿づくりが大切 |
作業手順を見せる研修動画では、画面の文字を読んでいる間に手元の動きを見逃してしまうことがあります。耳で説明を聞きながら手元を見られるナレーションのほうが、理解しやすくなります。
駅や商業施設のサイネージ、SNSの広告のように音を出さずに見られることが多い場所では、字幕が向いています。ナレーションを入れた動画に字幕も重ねておけば、音が聞こえない場所でも内容が伝わります。
インタビュー映像のように話している人がいる場合は、元の声を小さく残し、その上から訳を読む「ボイスオーバー」という方法もあります。本人の声の雰囲気を残しながら、内容を外国語で伝えられます。
翻訳は「直訳」ではなく「ローカライズ」で
多言語ナレーションでいちばん差が出るのが、原稿の翻訳です。
見る人の文化に合わせて言い換える
ローカライズとは、言葉を置き換えるだけでなく、見る人の文化や知識に合わせて表現を調整することです。日本人には説明不要な言葉でも、海外の方には伝わらないことがあります。
観光庁の多言語対応ガイドラインでは、外国人の理解を助けるために補足解説を加える考え方が示されています。たとえば「屋形船」には、「A yakatabune is a traditional flat-bottomed vessel.」のように、どんな船なのかを補う例が挙げられています。観光庁は、英語のネイティブライターなどの専門人材を地域に派遣し、ネイティブの目線を盛り込んだ観光地の解説文づくりを支援しています。
尺に合わせて文字量を調整する
同じ内容でも、言語によって読み上げにかかる時間は変わります。映像の長さが決まっている場合、翻訳した原稿が長すぎると、早口になったり映像の切り替わりに声が合わなかったりします。
翻訳の段階で「この場面は何秒か」を翻訳者に伝え、尺に収まるように言葉を選んでもらうのがコツです。映像に合わせて原稿を短くするのか、原稿に合わせて映像を少し延ばすのかも、早めに決めておきます。
固有名詞の読みと表記をそろえる
社名、商品名、地名、人名などの固有名詞は、ナレーターが初めて見る言葉です。読み方を間違えると、映像全体の信頼感にかかわります。
観光庁のガイドラインでは、固有名詞の英語表記について、「成田空港 Narita Airport」のように固有名詞はローマ字、普通名詞は英語で表す形を基本とし、「清水寺 Kiyomizu-dera Temple」のように寺であることがわかる英語を補う例も示しています。温泉は「Onsen」に統一する、といった表記のそろえ方も紹介されています。
収録の前に、次のような「読み方リスト」を作っておきます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 表記 | 原稿で使う綴り(例:Itoigawa) |
| 読み方 | カタカナや発音記号、アクセントの位置 |
| 音声の見本 | 社員が実際に読んだ音声など |
| 補足 | 何を指す言葉か(地名、商品名など) |
ネイティブナレーターの選び方とチェック体制
地域と声の印象で選ぶ
外国語のナレーションは、その言語を母語とするナレーターに読んでもらうのが基本です。同じ英語でもアメリカとイギリスでは発音や言い回しが違うため、見る人の地域に合わせて選びます。中国語は、文字に簡体字と繁体字があり、使う地域が分かれています。字幕を付ける場合は、見る人の地域に合った文字を選びます。
声の印象でも選びます。観光の動画なら明るく親しみやすい声、製品紹介なら落ち着いて信頼感のある声など、映像の雰囲気と目的に合わせて選びます。文字で「明るい声」と伝えても人によってイメージが違うため、ボイスサンプルを聴いて決めると、思っていた声と違ったというずれを防げます。
段階ごとにチェックする
外国語は、発注する側が聞いても正しく読めているか判断しにくいものです。どの段階で誰が確認するかを、最初に決めておきます。
| 段階 | 確認すること | 確認する人の例 |
|---|---|---|
| 翻訳原稿 | 意味が正しいか、自然な表現か、尺に収まるか | 翻訳者、その言語を母語とする確認者 |
| 用語 | 社名・商品名・専門用語の表記と読み | 発注者(社内の担当者) |
| 収録 | 読み間違い、発音、聞き取りやすさ、声のトーン | ディレクター、ナレーター、立ち会う発注者 |
| 完成映像 | 映像と声のタイミング、字幕との食い違い | 発注者、海外の取引先や外国人スタッフ |
社内に外国人スタッフや海外の取引先がいる場合は、完成前に一度見てもらうと、言い回しの違和感に気づきやすくなります。
収録の流れ(リモート立ち会い)
多言語ナレーションの収録は、おおむね次の流れで進みます。
| 工程 | 内容 |
|---|---|
| 1. 目的と言語を決める | 誰に見てもらうか、どの言語で、どこで流すかを整理する |
| 2. 日本語原稿を固める | 翻訳の元になる原稿を完成させる。あとから直すと全言語に影響する |
| 3. 翻訳・ローカライズ | 尺と見る人に合わせて翻訳し、内容を確認する |
| 4. ナレーター選び | ボイスサンプルを聴き比べて決める |
| 5. 収録・立ち会い | スタジオで収録。立ち会いはスタジオまたはリモートで |
| 6. 整音・映像への組み込み | ノイズを取り除いて音量を整え、映像に合わせる |
収録の前に済ませておきたいのが、日本語の原稿を固めることです。複数の言語に翻訳したあとで日本語を直すと、すべての言語で翻訳と確認をやり直すことになります。
遠方の会社でも、リモートで収録に立ち会えます。アイフィルムでは、東京都新宿区高田馬場にある共同運用スタジオで収録・整音を行い、Zoom/Google Meetを使った高音質のリモート立ち会いに対応しています。実際の映像をご覧になりながら収録できるので、場面の切り替わりと声のタイミングを確かめながら進められます。読み方リストや確認してほしい箇所を事前に共有しておくと、当日の確認が早く済みます。

よくある質問
Q. 翻訳から頼むことはできますか?
はい。アイフィルムでは、多言語ナレーションとあわせて翻訳にも対応しています。日本語の原稿が固まっていない段階でも、内容をうかがいながら進め方をご提案します。
Q. どの言語に対応していますか?
英語(アメリカ・イギリス)、中国語(簡体・繁体)、韓国語、フランス語、ドイツ語、アラビア語、ペルシャ語、タイ語、インドネシア語などに対応しています。ここにない言語もご相談ください。
Q. 字幕入りの動画も作れますか?
はい。納品の形として、字幕入りやSNS用の縦型、尺違いなどの派生版にも対応しています。ナレーションと字幕を組み合わせるかどうかも、流す場所に合わせてご相談ください。
Q. 収録に立ち会えないのですが大丈夫ですか?
Zoom/Google Meetでのリモート立ち会いに対応しています。実際の映像をご覧になりながら収録できるので、新潟や東京から離れた場所からでも、読み方や雰囲気を確かめながら進められます。
アイフィルムの多言語ナレーション
アイフィルムでは、翻訳、ナレーターの手配、収録、整音までを一括でお受けしています。ナレーターは、ご予算と制作内容に合う候補を提携事務所から複数名ご提案し、ボイスサンプルを聴き比べてお選びいただけます。選定は弊社にお任せいただいても構いません。映像制作会社なので、動画の制作からまとめてご依頼いただくことも、ナレーションだけをご依頼いただくこともできます。
料金は、日本語の料金に1言語につき44,000円〜(税別)を追加する形です。料金の仕組みはナレーション収録の料金の仕組みで詳しく解説しています。対応言語やナレーター選定の流れはナレーションのページをご覧ください。展示会で流す映像の作り方は展示会のループ動画の記事でも紹介しています。
英語版を作りたい動画があれば、日本語の原稿か完成した動画を添えてお問い合わせください。

