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配信の回線が弱い会場でも大丈夫?Starlinkと回線ボンディングの仕組み

ライブ配信
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会場のネット回線が弱くても、ライブ配信はできるのか。配信のご相談で、とても多くいただく質問です。公民館や体育館、屋外の会場、古いホールなどでは、配信に使える回線がなかったり、あっても速度が足りなかったりすることがよくあります。

答えを先に書くと、衛星インターネットのStarlink(スターリンク)と携帯電話の回線を組み合わせ、複数の回線を束ねる「ボンディング」という仕組みを使えば、会場に回線がない場合も配信できます。

ライブ配信で効いてくるのは「上り速度」

インターネットの速度には、データを受け取る「下り」と、データを送り出す「上り」があります。動画を見るときは下りを使いますが、ライブ配信では会場から映像を送り出すため、上りの速度を使います。

普段のスマートフォンや光回線では下りの速さが強調されがちですが、上りは下りより遅いことが多く、配信の現場ではここが足りなくなりがちです。

どれくらいの速度が必要か

YouTubeのヘルプでは、ライブ配信の解像度ごとに推奨ビットレート(1秒あたりに送るデータ量)が示されています。一般的なH.264という形式で配信する場合の目安は次のとおりです。

解像度・フレームレート最小ビットレート推奨ビットレート
1080p(フルHD)・30fps5Mbps14Mbps
720p(HD)・30fps3Mbps8Mbps

Zoomの場合は、1080pの映像を送るときの上りの帯域の目安が3.8Mbps、720pのグループミーティングで2.6Mbpsとされています。

ただ、回線の速度は常に一定ではありません。テストで十分な速度が出ても、本番中に一時的に落ち込むことがあります。設定するビットレートに対して、上りの速度には余裕を持たせておきます。

会場の回線を事前に調べる5つの項目

配信が決まったら、まず会場に回線の状況を確認します。次の項目を聞いておくと、配信の可否や必要な準備が判断しやすくなります。

確認すること理由
有線LANが使えるか、どこまで引けるか無線(Wi-Fi)より有線のほうが安定しやすい。配信卓の位置まで届くかも確認する
配信専用で使えるか、来場者と共用か共用のWi-Fiは、来場者が増えると速度が落ちやすい
上りの実測速度契約上の速度より、実際に測った値で判断する
利用の制限があるか施設のネットワークで、配信に使う通信が制限されている場合がある
当日の利用時間設営やリハーサルの時間帯から使えるか

できれば下見の際に、配信卓を置く予定の場所で実際に速度を測ります。時間帯によって速度が変わることもあるため、本番と同じ曜日・時間帯に測れるとより確実です。

モバイル回線の強みと、人が集まる会場での弱点

会場に回線がない場合、まず候補になるのがスマートフォンと同じ携帯電話の回線(モバイル回線)です。モバイルルーターがあればどこでも使え、準備も手軽です。

ただし、モバイル回線は人がたくさん集まると、つながりにくくなります。数千人規模の会場では、来場者のスマートフォンが一斉に通信するため、近くの基地局が混み合い、アンテナが立っていても通信が進まない状態(輻輳〈ふくそう〉と呼ばれます)になることがあります。

来場者が少ないリハーサルでは問題なく配信できても、本番で人が集まった瞬間に速度が落ちる、ということが起こり得るのがモバイル回線の難しいところです。

Starlink(スターリンク)とは

Starlinkは、宇宙を周回する多数の人工衛星を使った衛星インターネットです。専用のアンテナを空が見える場所に置くだけで、地上の基地局を通さずにインターネットにつながります。会場にいる人の数に左右されにくいのが特長です。

Starlinkの法人向けプランと速度の目安

日本では、KDDI、ソフトバンク、NTTドコモビジネスなどが法人向けの「Starlink Business」を提供しています。業界誌BUSINESS NETWORKの2025年9月の記事によると、KDDIの国内陸上向けプランは50GBで月額9,000円、1TBで月額39,000円(いずれも免税)です。同じ記事では、Starlinkの通信速度の目安として、下りが約40〜220Mbps、上りが約8〜25Mbps、遅延が25〜98ミリ秒と紹介されています。

NTTドコモビジネスは2026年10月から、500GBのプランや、1TB以上を0.5TB刻みで選べるプランを追加しています。料金やプランは各社で異なり、変更されることもあるため、契約の際は最新の情報を確認してください。イベントのように場所を移して使う場合は、移動して使える契約かどうかも確認が必要です。

Starlinkだけで十分?

上りの目安が約8〜25Mbpsなので、条件によっては1080pの推奨ビットレート(14Mbps)を下回ることもあります。Starlinkの設置ガイドでは、空の視界が開けた場所に設置する必要があり、木の枝や電柱、屋根などで衛星との接続がさえぎられるとサービスが中断されるとされています。

Starlinkは頼りになる回線ですが、1本だけに頼るより、ほかの回線と組み合わせたほうが配信は安定します。そのために使うのが「ボンディング」です。

回線ボンディングとは:複数の回線を1本の太い回線に

ボンディングは、複数のインターネット回線を束ねて、1本の太い回線のように使う仕組みです。たとえば、Starlink、ドコモの回線、auの回線を同時に使い、映像データを細かく分けてそれぞれの回線に振り分けて送ります。

仕組みをもう少し詳しく

代表的な製品であるPeplink(ペプリンク)のSpeedFusionという技術を例に説明します。

  • 帯域の結合:データを小さな単位(パケット)に分け、複数の回線へ同時に流します。受け取る側でそれを並べ直し、元の映像データに戻します。1つの配信で、複数の回線の容量を合わせて使えます。
  • ホットフェイルオーバー:ある回線が切れたとき、通信を即座にほかの回線へ切り替え、接続を維持します。
  • WANスムージング:同じデータを複製して複数の回線に送り、先に届いたほうを使うことで、途切れを抑えます。

束ねたデータを並べ直すために、受け取る側にも対応する機器やクラウドのサービスが必要になります。ボンディングは回線どうしの弱点を補い合う仕組みなので、束ねる回線の種類を分けておく必要があります。同じ携帯会社の回線ばかりを束ねると、その会社の基地局が混み合ったときに、すべてが同時に遅くなるおそれがあります。衛星回線と、複数の携帯会社の回線を組み合わせることで、どれか1本が不調になっても配信を続けやすくなります。

予備回線・切り替え・事前テストで「止まらない配信」に

回線の準備は、ボンディングを組んだあとも続きます。当日まで、次のような備えを重ねていきます。

予備の考え方を決めておく

  • 予備回線:メインの回線とは別の経路をもう1本用意しておく
  • 切り替えの手順:どの状態になったら、どの回線に切り替えるかを決めておく
  • 画質より安定を優先する判断:回線が揺れているときは、ビットレートを下げてでも配信を続ける

視聴者は、画質が少し下がることよりも、映像が止まったり音が途切れたりすることに敏感です。回線に不安がある会場では、あらかじめビットレートを控えめに設定しておく手もあります。

事前テストで確かめること

  • 本番と同じ場所・同じ機材で、実際に限定公開のテスト配信を行う
  • 配信を見る側の端末で、映像と音声の遅れや途切れを確認する
  • 回線を1本抜いてみて、配信が続くかを確かめる
  • アンテナを置く場所の上空がひらけているかを確認する

よくある質問

Q. 会場にインターネット回線がまったくなくても配信できますか?

衛星回線と複数のモバイル回線を束ねる方法なら、会場に回線がない場合も配信できます。人が集まって携帯回線が混み合う会場から、この方法で配信した実績があります。屋外や山間部などの場合は、アンテナを置く場所の条件も含めて事前に確認します。

Q. Starlinkのアンテナはどこにでも置けますか?

Starlinkの設置ガイドでは、空の視界が開けた場所に設置する必要があり、木の枝や電柱、屋根などが衛星との接続をさえぎるとサービスが中断されるとされています。下見の段階でアンテナを置ける場所を確認し、ボンディングでモバイル回線と組み合わせて、1本の回線が弱くなってもほかの回線で補える構成にします。

Q. 数日前の依頼でも、回線を用意できますか?

ご相談ください。3日前のご依頼で、機材・スタッフ・回線をそろえて配信した実績があります。

Q. 会場の回線を使える場合でも、ボンディングは必要ですか?

会場の回線が有線で、配信専用に十分な上り速度が確保できる場合は、会場回線をメインにする構成も考えられます。その場合も、万一に備えてモバイル回線などを予備に用意します。

回線の弱い会場から配信した実例

アイフィルムでは、回線の確保から多カメラのスイッチング、会場音響と報道機関への音声提供まで、配信業務を一式で担当しています。

2,000人規模の演説会を、Starlinkとボンディングで配信

2,000人を超える聴衆が集まる演説会のライブ配信では、ご依頼から本番までの準備期間は3日間でした。会場は人が集まることで携帯電話の回線が混み合い、通常のモバイル回線では配信が止まるおそれがありました。

そこで、Starlinkに加えてドコモやauなどの回線を合計7本用意し、Peplinkのルーターで1本の太い回線に束ねて配信しました。映像はSONY α7S IIIを含む5台のカメラで撮影し、会場の音声はラインで受けて、Radial IceCubeでノイズ対策を行いました。本会場に入りきれない方のためのサテライト会場では、配信映像をスクリーンに映し、遅延を短くする設定で本会場との一体感をつくりました。詳しくはネット環境が弱い会場で2,000人へライブ配信した実績をご覧ください。

公開討論会を5カメラで、安定優先の設定で配信

公開討論会のライブ配信では、5カメラで撮影し、会場スピーカー、配信、地元テレビ局への音声提供まで担当しました。回線の揺れを見込んで、あえてビットレートを下げて安定運用に寄せたことで、最後まで止まらずに配信でき、アーカイブは1時間で1万回再生を超えました。当日の様子は公開討論会を5カメラでYouTubeライブ配信した実績で紹介しています。

演説会の会場(ステージと客席)

会場の下見と回線の確認から始められます

「この会場で配信できるか分からない」という段階からでも、下見や回線の確認を含めてご提案します。

選挙や公開討論会での体制は選挙・公開討論会配信の事例、サービス内容はライブ配信のページをご覧ください。学会や研究大会の配信をご検討の方は、学会のライブ配信・オンデマンド配信の準備と当日の流れも参考になります。ご相談はお問い合わせからどうぞ。

参考にした情報
  • 7年連続いといがわキャリアフェスティバルの音響・映像・会場設営
  • 国家資格二等無人航空機操縦士(夜間・目視外の限定解除)
  • 電気工事士イベントの仮設電源も自社で施工
  • 自治体の案件新潟県内の入札・プロポーザルに参加
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