
ダイジェスト動画の出来は、編集よりも先に、当日に何を撮っておくかでほぼ決まります。展示会やイベントが終わったあとに「当日の様子を短くまとめた動画がほしい」と思っても、撮影した映像が会場の引きばかりだったり、盛り上がった場面が撮れていなかったりすると、うまく作れません。
ここでは、使い道ごとの作り分けから当日の撮影、編集、公開までの段取りを整理しました。式典の全編記録の撮り方は式典・記念イベントの記録撮影、ライブ配信のアーカイブの活かし方は配信と記録撮影を同時に頼むメリットで紹介しています。
使い道と尺の目安
「誰に見せるか」で作り分ける
同じイベントの映像でも、見せる相手によって入れるべき場面は変わります。最初に使い道を決めておくと、当日のカメラの動きも変わってきます。
| 使い道 | 主に見る人 | 入れたい場面 | 向いている尺 |
|---|---|---|---|
| 実施報告 | 社内・役員・関係団体・補助金の報告先 | 会場の規模、来場者の様子、主なプログラム | 1〜3分 |
| 次回の集客 | 次回の来場候補者・出展候補者 | にぎわい、楽しんでいる表情、体験の内容 | 30秒〜1分 |
| SNSでの発信 | フォロワー・地域の方 | 印象的な一瞬、動きのある場面 | 15〜30秒の縦型 |
| スポンサー・協賛社向け | 協賛企業・出展企業 | ロゴや看板が映る場面、ブースのにぎわい | 1〜3分 |
特にスポンサー向けの報告では、協賛企業の看板やロゴがどこに、どのくらい映ったかがそのまま報告の中身になります。どの協賛社の掲示物を撮っておくべきかを、事前に一覧にしておくと撮り漏れを防げます。
尺の目安:30秒・1分・3分
ダイジェストの長さは、使う場所と見る人の集中できる時間から決めます。
| 尺 | 主な使い場所 | 入れられる内容の目安 |
|---|---|---|
| 30秒 | SNS、Web広告、次回の告知 | 印象的な場面を数カットとイベント名・日付 |
| 1分 | Webサイト、SNS、次回の募集ページ | 会場の全景、主なプログラム、来場者の声を一言 |
| 3分 | 実施報告、スポンサー向け、会場での上映 | プログラムの流れ、登壇の要点、インタビュー、協賛社の紹介 |
おすすめは、3分版を「完成版」として作り、そこから1分版と30秒版を切り出す方法です。撮影は一度で済み、使う場所ごとにちょうどよい長さで届けられます。
縦型の短い動画を出す場合、YouTubeでは正方形または縦長で最長3分の動画がショートとして扱われます(2024年10月15日以降のアップロード)。Google広告のヘルプでは、ショート広告には縦長(9:16)の動画が最も適しているとされ、60秒未満の長さが推奨されています。横長の完成版とは別に、縦型の版を作る前提で撮影しておきます。
当日に撮っておくべき素材
ダイジェストに使う素材は、当日の撮影リストにして制作会社と共有しておきます。
| 素材 | 撮る内容 | ダイジェストでの役割 |
|---|---|---|
| 会場全景 | 開場前と、人が集まったときの両方 | イベントの規模を伝える |
| 準備・設営 | 看板の設置、スタッフの打ち合わせ、リハーサル | 冒頭の「始まる前」の期待感 |
| 来場者の反応 | 体験している手元、笑顔、拍手、行列 | にぎわいと楽しさを伝える |
| 登壇・ステージ | 主催者挨拶、講演、表彰、パフォーマンス | プログラムの中身を伝える |
| インタビュー | 来場者・出展者・主催者の一言 | 生の声で説得力を出す |
| 細部 | 展示物、看板、配布物、協賛社のロゴ | 場面のつなぎ、スポンサーへの報告 |
| ドローン空撮 | 屋外会場の全景、人の流れ | スケール感のある始まりや締め |
「人の表情」と「手元」を意識して撮る
会場の引きの映像だけでは、にぎわいが伝わりにくくなります。来場者が体験している手元や、ステージを見ている表情など、寄りの映像を多めに撮っておくと、編集でテンポよくつなげられます。
インタビューは短く、同じ質問で
来場者へのインタビューは「今日来てみてどうでしたか」「いちばん印象に残ったことは」など、短く答えられる質問を全員に同じように聞くと、編集で並べやすくなります。周りの音が大きい会場では、ピンマイクやガンマイク(狙った方向の音を拾うマイク)で声を録ると聞き取りやすくなります(マイクの種類はマイクの種類と使い分けの記事で紹介しています)。
展示会では他社のブースの撮影ルールを確認する
展示会では、他社のブースや展示物の撮影にルールが決められていることがあります。たとえば「人とくるまのテクノロジー展 2025 YOKOHAMA」の報道関係者向けの案内では、出展者のブースを撮影する場合は、小間の担当責任者に必ず事前に了解を得るよう求めています。出展者の立場で自社ブースのダイジェストを作る場合も、主催者の出展マニュアルで撮影のルールを確認しておきましょう。
ドローンは許可・承認と日程に余裕を
イベント会場の上空など、人が集まる場所の上空を飛ばす「催し場所上空の飛行」は、国土交通省の許可・承認を個別に受ける必要がある飛行にあたります。国土交通省は、申請書類を飛行開始予定日の少なくとも10開庁日(土日・祝日を除く)前までに提出し、3〜4週間程度の十分な余裕をもって申請するよう案内しています。費用や手続きの詳細はドローン空撮の費用相場と飛行許可の記事をご覧ください。

構成の型と、BGM・テロップ
3つの構成の型
構成は、次の3つの型のどれかに当てはめると組み立てやすくなります。
| 型 | 流れ | 向いている使い道 |
|---|---|---|
| 時系列型 | 準備→開場→プログラム→締め | 実施報告、記録として残す版 |
| ハイライト型 | いちばん盛り上がった場面→イベント名→見どころ→次回告知 | SNS、次回の集客 |
| 声でつなぐ型 | インタビューの言葉を軸に、場面の映像を重ねる | スポンサー向け、イベントの意義を伝える版 |
1分のハイライト型なら、たとえば次のような配分になります。
| 秒数 | 映像 | テロップ・音 |
|---|---|---|
| 0〜5秒 | いちばん盛り上がった瞬間 | BGMが勢いよく始まる |
| 5〜10秒 | 会場全景(ドローンや高い位置から) | イベント名・日付・会場 |
| 10〜45秒 | ステージ、体験、来場者の表情をテンポよく | 見どころを短い言葉で |
| 45〜55秒 | 来場者や主催者の一言 | インタビューの声 |
| 55〜60秒 | ロゴ、次回の日程や公式サイト | 締めの音 |
冒頭は時系列にこだわらず、いちばん見てほしい場面から始めるのがコツです。完成版の3分は時系列型、SNS用の30秒はハイライト型、というように版ごとに型を変えることもできます。
BGM:テンポを決める
ダイジェストの印象は、BGMで大きく変わります。にぎやかなイベントなら軽快な曲、式典や表彰が中心なら落ち着いた曲を選び、場面の切り替えを曲の拍に合わせると、映像にリズムが生まれます。会場で流れていた音楽をそのままBGMに使うと権利の確認が必要になるため、利用条件を確認した音源を使いましょう。音源の選び方は動画BGMの基本ルールの記事で紹介しています。
テロップ:音なしでも伝わるように
SNSでは音を出さずに見る人もいます。イベント名、日付、会場、主なプログラム名、インタビューの発言はテロップでも入れておくと、音なしでも内容が伝わります。来場者数などの数字を入れる場合は、主催者が発表した数字を使い、表記を関係者で確認しておきます。協賛社名を入れる場合は、正式名称とロゴの使い方のルールもあわせて確かめます。
公開までのスピードを上げる段取り
ダイジェストは、イベントの記憶が新しいうちに公開するほど、参加者にシェアしてもらいやすくなります。スピードを上げるには、当日より前の準備が効きます。
- 構成の型とBGMを先に決める:どの型で作るか、どの曲を使うかを事前に決めておくと、撮影後すぐに編集に入れます。
- テロップの素材をそろえる:イベントのロゴ、正式名称、協賛社のロゴ、登壇者の名前と肩書きを事前に渡しておきます。
- 公開を2段階にする:先にSNS用の短い版を公開し、完成版は確認を重ねてから公開する、という分け方もあります。
- 確認する人と回数を決める:関係者の確認が多いほど公開は遅れます。誰がいつまでに確認するかを決めておきましょう。
納品までの日数は、映像の長さや確認の回数によって変わります。公開したい日が決まっている場合は、打ち合わせの段階でお知らせください。当日の様子をその場で編集し、イベントの最後に上映する「撮って出し」の映像も制作できます(学校・教育イベントの音響と映像)。
写り込みと肖像への配慮
ダイジェストは一般に公開することが多いため、全編記録以上に、写っている人への配慮が必要です。
- 事前の告知:案内文や会場の掲示、開会時のアナウンスで、撮影していることと、映像の使い道(Webサイト、SNSなど)を伝えます。
- 写りたくない方への対応:受付で申し出を受け付け、目印を決めておくと、撮影スタッフが判断しやすくなります。編集で外す、ぼかすといった対応もできます。
- 子どもが写る場面:顔が大きく写る場面は、保護者の了承を確認してから使います。
- 背景の掲示物や展示物:文化庁の解説では、撮影の主な対象に付随して軽微に写り込むポスターや絵画などは、正当な範囲内であれば許諾なく利用できるとされています(2020年10月の著作権法改正で、生配信なども対象になりました)。一方、ポスターや絵画そのものを撮影の対象にする場合は対象外とされています。他社の展示物を大きく映す場面は、相手の了解を得ておきます。
肖像権の考え方や撮影告知の詳しい進め方は、式典・記念イベントの記録撮影で解説しています。
よくある質問
Q. 記録用の撮影とダイジェスト用の撮影は、同じカメラで済みますか?
記録用のカメラで全体を押さえつつ、ダイジェスト用に表情や手元を狙うカメラを別に用意すると、仕上がりの幅が広がります。全編記録とダイジェストの両方を作る予定があれば、打ち合わせの段階でお伝えください。
Q. 1本の撮影で、30秒・1分・3分の版を作れますか?
作れます。完成版から短い版を切り出す前提で撮影しておけば、撮影は一度のまま、使う場所に合わせた長さの版を用意できます。縦型の版も必要な場合は、撮影前に伝えておくと構図を考えて撮影できます。
Q. 打ち合わせでは何を用意すればよいですか?
タイムテーブル、会場図、ダイジェストの使い道(報告、SNS、スポンサー向けなど)、映しておきたい協賛社や展示物の一覧があると、カメラの台数と動きをすぐに検討できます。
アイフィルムでのダイジェスト動画制作
アイフィルムでは、進行表を事前に確認し、登壇者の寄り・会場全景・客席の表情を押さえるカメラ配置を決めてから撮影に臨みます。業務用カメラ(SONY HXR-NX80 ほか)を複数台使い、会場のミキサーからもらう音声やワイヤレスマイクで、挨拶や講演の声をはっきり記録します。保管用の全編映像に加えて、数分のダイジェストやSNS向けの縦型動画も制作でき、MP4などのデータのほか、DVDでの納品にも対応します(式典・周年行事・研修の記録撮影の事例)。
ドローン空撮では、国土交通省の飛行許可・承認を取得した有資格パイロットが、操縦担当と安全監視担当の2名体制で撮影します。必要な申請手続きも代行し、催事上空など法規制が絡むケースでの実績もあります。料金は1フライト(約20分程度)あたり3万円台からが目安です(ドローン空撮)。
編集では、スローモーションやタイムラプスなどの表現も組み合わせられます。完成したダイジェストは、次回のイベントのオープニングや展示会ブースでの上映にも活用できます(プロモーション動画)。
イベントの日程と会場が決まったら、お問い合わせからお知らせください。使い道がまだ固まっていなくても、内容を伺って撮影と編集の計画をまとめます。


