
「リハーサルの時間が、マイクのテストだけで終わってしまった」。式典や講演会の準備では、こうしたことが起こりがちです。会場を使える時間は限られ、登壇者や来賓が全員そろうとも限りません。「何を、どの順番で、どこまで確認するか」を決めておかないと、せっかくの時間はすぐに過ぎてしまいます。
式典でも講演会でも、本番の出来を大きく左右するのがリハーサルです。主催者の方に向けて、リハーサルの種類と進め方、本番直前のチェック表までを整理しました。
リハーサルは目的ごとに分けて考える
ひとことで「リハーサル」といっても、確かめたいことによって中身は変わります。舞台の世界では、照明・音響・場面転換などの技術面を本番の流れに合わせて確かめる「テクニカルリハーサル」、場面転換や照明・音響のきっかけ(キュー)を起きる順にたどって確かめる「キュー・トゥ・キュー」、衣装や照明などを公演と同じ状態にして行う最後の仕上げの稽古「舞台稽古(ゲネプロ)」などの言葉が使われています。
イベントでは、次の3つに分けて考えるとわかりやすくなります。
| 種類 | 目的 | 主に参加する人 | 確認すること |
|---|---|---|---|
| テクニカルリハーサル | 音・映像・照明が正しく出るかを確かめる | 音響・映像・照明・配信の担当、進行担当 | マイクの音量、BGMやVTRの再生、スクリーンの映り、照明、配信の映像と音 |
| きっかけ合わせ(段取りリハ) | 場面の変わり目だけをつないで確かめる | 司会、技術担当、進行担当(出演者は代役でも可) | 開会、登壇・降壇、VTRの前後、表彰など、合図で何かが切り替わる場面 |
| 通しリハーサル | 最初から最後まで、本番どおりに流す | 出演者、司会、全スタッフ | 全体の時間、転換(場面の切り替え)の段取り、全員の動き |
本番と同じ状態で行う最後の仕上げの稽古は、「ゲネプロ」や、英語にならって「ドレスリハーサル」と呼ばれることもあります。呼び方は現場によって少しずつ違うため、業者との打ち合わせでは「何を、どこまで確認するリハーサルか」をすり合わせておきます。
順番は、技術 → きっかけ → 通しがおすすめです。機材が正しく動くことを確かめてから出演者に集まってもらうと、待ち時間が短くなり、出演者も集中して臨めます。
時間の取り方と、足りないときの優先順位
会場の利用時間に「設営・リハ・撤収」を含める
会場を予約するときは、本番の時間だけでなく、搬入・設営、リハーサル、撤収の時間まで含めて押さえておきます。機材を持ち込む場合は、設営が終わらないとテクニカルリハーサルを始められません。開始時刻が早いイベントや機材が多いイベントでは、前日に設営とテクニカルリハーサルを済ませておくと、当日は出演者との確認に時間を使えます。
13:30開演の式典(2時間程度)を例にした、当日の流れの一例です。
| 時刻 | 内容 | 参加する人 |
|---|---|---|
| 9:00 | 搬入・設営(音響・映像・照明・会場づくり) | 技術スタッフ、会場係 |
| 10:30 | テクニカルリハーサル | 技術スタッフ、進行担当 |
| 11:15 | スタッフ打ち合わせ(役割、連絡方法、変更点) | 全スタッフ |
| 11:30 | きっかけ合わせ・通しリハーサル | 司会、出演者(代役を含む)、全スタッフ |
| 12:30 | 修正・休憩(直した部分だけもう一度確認) | 必要な人 |
| 13:00 | 開場(客入れBGM、受付開始) | 全スタッフ |
時間割を組むときは、通しリハーサルと開場の間に、修正のための時間を残しておきます。直す時間がないと、気づいた問題を抱えたまま本番を迎えることになります。
時間が取れないときは、切り替わる場面から
通しの時間が取れないときは、やり直しがきかない場面、何かが切り替わる場面から順に確認します。
| 優先度 | 確認する場面 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | 開会の流れ(客入れBGM → 開会の言葉 → 最初のあいさつ) | 最初の数分が、イベント全体の空気を決める |
| 2 | VTR・スライドの頭出しと、その前後のつなぎ | 照明・映像・音が同時に動き、ずれが目立ちやすい |
| 3 | マイクの受け渡しと登壇・降壇 | 人の移動が入るため、間が空きやすい |
| 4 | 表彰や記念撮影など、立ち位置が決まっている場面 | 人数が多く、その場で決めると時間がかかる |
| 5 | 閉会と退場 | 終わり方が決まっていると、最後まで締まる |
全体を通せなくても、この順にきっかけ合わせをしておくだけで、本番の安定感は大きく変わります。

人の動きを確かめる:役割ごとの確認と立ち位置・マイクの受け渡し
出演者・司会・スタッフが確認すること
| 役割 | 確認すること |
|---|---|
| 出演者・登壇者 | 登壇の順番と、司会のどの言葉で立つか/待機場所/マイクの持ち方や演台マイクとの距離/スライドの送り方/話す時間と、時間が来たときの合図 |
| 司会 | 進行台本の読み合わせ(人名・団体名・肩書きの読み方を含む)/BGMやVTRを出すきっかけの言葉/マイクを入れる・切るタイミング/時間が押したときの調整のしかた |
| スタッフ(受付・誘導・技術) | 当日の連絡方法(インカム、携帯電話など)/来賓・出演者の誘導経路/本番中の持ち場/トラブル時に進行を止めるか続けるかを判断する人 |
来賓など、リハーサルに参加できない方もいます。その場合は案内係が代役を務めて動きを確かめ、本番前にご本人へ要点を口頭で説明しておきます。音響まわりの事前確認(電源、マイクの電波、電池など)は、イベントの音響トラブルを防ぐ事前確認事項にまとめています。
立ち位置は「印」をつけ、動線は行きと帰りを歩く
表彰式の授与や集合写真、パネルディスカッションの席など、決まった位置に人が立つ場面は、床にテープで印をつけておくと迷いません(業界用語で「バミリ」と呼ばれ、マイクスタンドなど機材の置き場所にも使います)。立ち位置は、照明が当たる範囲や、記録撮影・配信のカメラから見える位置とも関係するため、技術担当と一緒に決めます。
動線は、ステージに上がる経路だけでなく、降りて席に戻るまでを実際に歩いて確かめます。階段の段差、照明を落とした場面での足元、ケーブルが通路を横切る場所は、歩いてみて気づくことが多い部分です。
マイクの受け渡しは「誰が・いつ・どこで」
| 決めること | 例 |
|---|---|
| 誰が渡すか | 司会から直接、または係がステージ袖で手渡す |
| いつ音を入れるか | 渡す直前に係が電源を入れる、音響担当が音量を上げる |
| どこで受け取るか | 演台に置いておく、客席の質問者のところまで係が運ぶ |
質疑応答で客席にマイクを回す場合は、係が移動する時間も見込んでおきます。講演会・式典のマイク構成やスピーカーの置き方は、講演会・式典の音響セッティングの基本で解説しています。
VTR・スライドと配信の確認
VTR・スライドは会場のスクリーンとスピーカーで流す
オープニング映像やスライドは、リハーサルで実際に会場のスクリーンとスピーカーを使って一度流します。パソコンの画面ではきれいでも、会場では文字が小さくて読めない、映像の音だけが小さい、といった差が出ることがあります。
| 確認すること | 見るところ |
|---|---|
| 再生機器とデータ | どのパソコンで流すか、データを事前に受け取っているか、予備はあるか |
| 頭出しと終わり方 | 再生してから映像が始まるまでの間、終わったあとに何を映すか |
| 音と見え方 | 映像の音と声の大きさがそろっているか、客席の後ろから文字が読めるか |
| スライドの送り方 | 登壇者が自分で送るか、操作担当に「次お願いします」と合図するか |
当日の朝にスライドが差し替えになることもあります。データの受け取り締め切りを決め、最新の版がわかるようにファイル名をそろえておくと混乱を防げます。式典で流す映像の準備は、周年記念・式典のオープニング動画の作り方もご覧ください。
配信は「視聴者の画面」で確かめる
ライブ配信をする場合、会場で見えている・聞こえていることと、視聴者の画面で見えている・聞こえていることは同じとは限りません。リハーサルでは、別のパソコンやスマートフォンで配信を受け、イヤホンで聞いて確認します。
- Zoomウェビナー:ホスト・代替ホスト・パネリストだけが入れる「練習セッション」を使うと、視聴者が入る前に操作やマイクを確かめられます。ホストが配信を開始するまで、視聴者には公開されません(Zoom Webinarsのアドオンが必要です)。
- YouTubeライブ:限定公開でテスト配信をしたり、エンコーダ(配信用の機器やソフト)を使う場合は「ライブ管理画面」でプレビューを確認したりできます。チャンネルページやスマートフォンから視聴できるかも確かめておきます。
開始前や休憩中に流す画面、配信に映してよい範囲(客席の顔、個人名が出る資料など)も、このときに決めておきましょう。会場とZoomを同時につなぐときの音声の確認手順はハイブリッド開催の音声トラブル対策で紹介しています。

本番直前の最終チェック表
開場から開演までの間に、最後に確かめておきたい項目です。印刷して、進行担当の手元に置いておくと便利です。
| タイミング | 確認すること | 担当 |
|---|---|---|
| 開場前 | ワイヤレスマイクの電池を新品に交換し、予備の電池・マイクを手元に置いたか | 音響 |
| 開場前 | VTR・スライドが頭で止まっているか、再生するパソコンの省電力設定を切ったか | 映像 |
| 開場前 | 配信の待機画面が出ているか、視聴用の端末で映像と音を確認したか | 配信 |
| 開場前 | 通路のケーブルを固定したか、非常口までの通路は確保されているか | 会場係 |
| 開演15分前 | 登壇者・来賓がそろっているか、急な欠席や順番の変更はないか | 進行担当 |
| 開演10分前 | 変更点を司会と技術担当に伝えたか、進行台本は最新の版か | 進行担当 |
| 開演5分前 | 司会がマイクと台本を持って定位置にいるか | 司会 |
| 開演直前 | 各担当が持ち場についたか、インカムや携帯電話がつながるか | 全員 |
リハーサルのあとに進行が変わった場合は、変更点を必ず全員に共有します。進行台本の作り方と、変更が出たときの共有のしかたはイベント運営における進行台本の作り方で解説しています。
アイフィルムでのリハーサルのお手伝い
アイフィルムでは、新潟県内の式典・講演会・学校行事などの音響PA、映像の上映、記録撮影、ライブ配信を承っています。当日は設営から音出しのチェック、リハーサル、本番のオペレーション、撤収まで担当し、必要に応じて事前に会場の下見を行って、機材の配置と当日の流れを決めます。
イベント運営・音響では、受付対応や司会進行のサポート、出演者の誘導、タイムキープまでお任せいただけます。音響と映像をひとつの窓口でお受けできるため、テクニカルリハーサルからきっかけ合わせまで、同じ進行台本をもとに進められます。音響の料金と機材は音響PAのページで確認できます。
進行表の下書きがあれば、それを添えてお問い合わせください。進行表そのものの作り方はイベントの進行台本の作り方にまとめています。
よくある質問
Q. リハーサルには、出演者全員が参加しないといけませんか?
全員がそろうのが理想ですが、難しい場合は代役で動きを確かめる方法があります。テクニカルリハーサルは出演者なしでも進められるので、出演者にはきっかけ合わせや通しの時間だけ参加していただくと負担が少なくなります。
Q. 前日にリハーサルをすることはできますか?
会場を前日から借りられる場合は、前日に設営とテクニカルリハーサルを済ませておくと、当日に余裕が生まれます。アイフィルムの音響PAでは、前日仕込み(前日の設営・音出しチェック)は1名18,000円(税別)です。前日にリハーサルまで行いたい場合は、内容に合わせてご相談ください。
Q. 進行がまだ固まっていなくても相談できますか?
できます。日程と会場、おおよそのプログラムがわかれば、設営とリハーサルに必要な時間の目安をお伝えできます。進行が固まった段階で、きっかけや段取りを一緒に整えていきます。
参考にした情報
- Notes About Rehearsals(Production Handbook and Job Descriptions/Toronto Metropolitan University)
- 舞台稽古(コトバンク)
- Conducting event dry runs and rehearsals(RingCentral)(Internet Archiveの保存版)
- 【音響のコツ】バミってなんぼ!音響の必需品『ガムテープ』の使い方(サウンドハウス)
- Using Webinar practice session(Zoom Support)
- YouTube ライブ配信のヒント(YouTube ヘルプ)


