
進行台本ができていれば、リハーサルも本番も迷いが少なくなり、急な変更にも落ち着いて対応できます。式典や講演会、表彰式などのイベントは、司会、登壇者、受付、音響、映像、照明と、たくさんの人が同じ時間に動いて成り立っています。その全員が同じ流れを頭に入れておくための土台が進行台本です。
ここでは、進行台本とほかの資料の違いを整理したうえで、書き方と共有のしかた、当日の調整までを紹介します。
進行台本とほかの資料の違い
イベントの準備では、似たような資料がいくつも出てきます。それぞれ「誰が、何のために見るか」が違います。
| 資料 | 主に見る人 | 役割・書くこと |
|---|---|---|
| 式次第(プログラム) | 来場者、来賓 | 式の順序だけを簡潔に示したもの。「開式の辞」「式辞」「来賓祝辞」など |
| タイムテーブル | 来場者、出演者、スタッフ | 時刻と項目を時間順に並べた一覧。開場・開演・休憩・終了の時刻など |
| 司会台本 | 司会 | 司会が話す言葉をそのまま書いたもの。あいさつ、来賓紹介、案内のアナウンスなど |
| キューシート | 音響・映像・照明の担当 | どの場面で、何の音や映像を、何をきっかけに出すかをまとめた表。キュー(cue)は英語で「合図」の意味 |
| 進行台本(進行表) | 主催者、司会、全スタッフ | 上のすべてを一つにまとめた「元の台本」。時刻、内容、話す人、きっかけ、担当者まで書く |
マネーフォワードの解説では、台本は司会進行役が話す内容をまとめた資料、タイムテーブルは時間順に予定を並べた一覧とされ、誰が何をするかまで示すタイムスケジュール(進行表)とは区別されています。ただし、これらの呼び方は厳密に区別されず混同されることもあるため、資料を頼むときや受け取るときは「どの項目が入った資料か」を確認しておきます。
おすすめは、進行台本を一つだけ作り、そこから式次第・司会台本・キューシートを切り出すやり方です。元が一つなら、変更があっても直す場所がはっきりし、資料どうしの食い違いを防げます。
進行台本に書くべき項目
進行台本には、次の項目を入れておくと、関係者全員が同じ資料で動けます。
| 項目 | 書くこと | 書くときの注意 |
|---|---|---|
| 番号 | 場面ごとの通し番号 | 当日「No.5から再開」のように伝えやすくなる |
| 時刻・所要時間 | 開始予定時刻と、その場面にかかる時間 | 両方書くと、押したときにどこで取り戻すか考えやすい |
| 内容 | 場面の名前(開会の辞、来賓祝辞など) | 式次第の言葉とそろえる |
| 話す人・出演者 | 名前、肩書き、読み仮名 | 人名・団体名の読み方は必ず確認しておく |
| マイク | 使うマイクの種類と場所 | 「演台マイク」「ワイヤレス1番」など、音響担当と呼び方をそろえる |
| 音・映像・照明 | BGM、VTR、スライド、照明の切り替え | 出すものと止めるもの、両方を書く |
| きっかけ | 何を合図に切り替えるか | 「司会が〇〇と言ったら」「登壇者が演台に着いたら」など言葉か動きで |
| 転換 | 場面の間に必要な準備(演台の移動、表彰台の設置など) | 転換も1行として時間を取っておく |
| 担当者 | その場面で動くスタッフ | 誘導、マイク運び、受付など |
| 備考 | 注意点、予備の対応 | 会場の利用ルールや、終えておく作業もここに |
マネーフォワードの解説でも、照明・音響や映像の指示は時刻だけでなく、あいさつや紹介といった具体的な展開や司会のセリフと合わせて書くこと、会場の利用ルールなどは備考欄に書いておくと見落としを防げることが紹介されています。
進行台本のテンプレート例と書き方のコツ
周年記念式典(表彰と記念映像あり)を例にした、進行台本のテンプレートです。
| No. | 時刻 | 所要 | 内容 | 話す人・出演者 | マイク | 音・映像・照明 | きっかけ | 担当・備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 13:00 | 30分 | 開場・受付 | — | — | 客入れBGM、スクリーンに式典ロゴ | 開場と同時 | 受付2名、来賓は控室へ誘導 |
| 2 | 13:30 | 1分 | 開式の辞 | 司会 | 司会マイク | BGMを止める、客席を少し暗く | 司会が司会台に立ったら | 開始前に携帯電話のアナウンス |
| 3 | 13:31 | 5分 | 式辞 | 代表(氏名・読み仮名) | 演台マイク | 登壇曲 → 止める | 司会が名前を呼んだら | 誘導係が袖で待機 |
| 4 | 13:36 | 10分 | 来賓祝辞(2名) | 来賓(読み仮名を記入) | 演台マイク | — | 司会が名前を読み上げたら | 1名5分、順番は当日確定 |
| 5 | 13:46 | 3分 | 転換 | — | 司会マイク | 表彰BGM(小さめ) | 祝辞が終わったら | 演台を下手(舞台に向かって左)へ、表彰台を中央へ |
| 6 | 13:49 | 15分 | 表彰 | 代表、受賞者 | 司会マイク | 表彰BGM | 受賞者の名前の読み上げ | 立ち位置に印、撮影係は正面 |
| 7 | 14:04 | 5分 | 記念映像 | — | — | 客席を暗く、VTR再生 | 司会「それではご覧ください」 | 映像と音を同時スタート |
| 8 | 14:09 | 1分 | 閉式の辞 | 司会 | 司会マイク | 客席を明るく | VTRが終わったら | — |
| 9 | 14:10 | 10分 | 退場 | — | — | 退場曲 | 司会「ご退場です」 | 来賓から先に誘導 |
列が多いので、パソコンでは表計算ソフト、印刷するときはA4横向きにすると見やすくなります。司会のセリフは表の中に入れきれないことが多いので、番号をそろえた司会台本を別に用意し、進行台本には「きっかけになる言葉」だけを書いておく方法もあります。
書き方のコツ
- 転換も1行にする:演台の移動や表彰台の設置など、場面の間の準備は時間がかかります。転換を独立した行にすると、必要な時間が見えるようになります。
- 「止める」まで書く:BGMや照明は、出すタイミングだけでなく、止める・戻すタイミングも書きます。
- 読み仮名を入れる:来賓や受賞者の名前は、読み間違いがあとまで印象に残ります。台本の段階で読み仮名を確認しておきます。
- 立ち位置や下手・上手は図と一緒に:「下手(しもて)=客席から見て左」「上手(かみて)=客席から見て右」のような舞台の向きは、会場図を添えると誤解を防げます。
音響担当が使うキューシートは、この進行台本から音とマイクに関わる列だけを抜き出して作ります。キューシートの具体例と作り方は、講演会・式典の音響セッティングの基本で紹介しています。
共有と版(バージョン)の管理
進行台本は、準備の途中で何度も書き換わります。いちばん避けたいのは、人によって持っている台本の版が違うことです。次のようなルールを決めておくと、混乱を防げます。
| ルール | 例 |
|---|---|
| 版の番号と日付を入れる | 表紙やファイル名に「第3版 10月20日」と入れる |
| 変更箇所がわかるようにする | 前の版から変わった行に色をつける、表紙に変更点を箇条書きにする |
| 配る人を決めておく | 司会、登壇者、技術担当、受付など、配布先の一覧を作り、新しい版は全員に送る |
| 確定版の締め切りを決める | 「本番の3日前に確定版を配布、それ以降は当日の変更として扱う」など |
| 当日は紙でも用意する | 通信が不安定な会場でも見られるよう、確定版を印刷して各担当に配る |
Googleスプレッドシートなどで共同編集する場合は、変更履歴から誰がどこを変えたかを確認したり、以前の版に戻したりできます。確定した段階で「この版に名前を付ける」機能を使い、「確定版」などと名前を付けておくと、あとから探しやすくなります。
変更が出たとき・時間が押したときの調整
変更が出たときは、窓口を一つに
登壇者の順番が変わった、来賓が一人増えた、といった変更は、本番直前まで起こり得ます。変更は主催者側の窓口一人に集め、そこから全員へ伝える流れにしておくと、伝え漏れを防げます。
当日の変更は、進行台本を作り直すより、変更点だけを短く書いたメモを司会と技術担当に渡すほうが確実です。「No.4 来賓祝辞:〇〇様と△△様の順番を入れ替え」のように、番号を使って伝えると、聞き間違いが起きにくくなります。
時間が押したときに備えて「調整できる場面」を決めておく
開始が遅れた、あいさつが長引いた、というときに、その場で何を削るか考えるのは大変です。進行台本を作る段階で、短くできる場面と時刻を動かせない場面を分けておきましょう。
| 区分 | 場面の例 | 調整のしかた |
|---|---|---|
| 短くできる場面 | 歓談、休憩、写真撮影、質疑応答、BGMだけの時間 | あらかじめ「最短で何分まで縮められるか」を書いておく |
| 時刻を動かせない場面 | 来賓の到着・退席時刻が決まっている場面、配信の開始・終了、会場の退館時刻 | 前後の場面で時間を吸収する |
| 早く進んだときに延ばせる場面 | 質疑応答、歓談、記念映像の再上映 | 延ばすときの合図と上限を決めておく |
あわせて、時間の調整を判断する人も決めておきます。進行担当が判断し、司会にはタイムキープのカード(「あと3分」「巻きでお願いします」など)で合図を送る、といった方法があります。合図の意味は、リハーサルで司会や登壇者と確認しておきます。リハーサルの進め方はイベントのリハーサルで確認すべきことにまとめています。
アイフィルムでの進行台本づくりと当日の運営
アイフィルムのイベント運営・音響では、イベントの目的に合わせたプログラムの構成案や演出プラン、必要な機材・人員の計画づくりから関わります。式典では、司会者の手配や式次第の作成からご相談いただけます。
当日は、受付対応、司会進行のサポート、出演者の誘導、タイムキープ、トラブル対応まで担当します。音響・映像・照明・記録撮影をまとめてお受けできるため、進行台本とキューシートを一つの流れで作り、全員が同じ台本で動けます。音響の料金と機材は音響PA、配信を組み合わせる場合はライブ配信のページをご覧ください。
台本がまだ下書きの段階でも、お問い合わせからご相談を承ります。
よくある質問
Q. 進行台本は主催者が作るものですか?
一般的には、イベントの内容をいちばんよく知っている主催者が元になる内容を決め、運営や技術の担当と一緒に、きっかけや担当者の欄を書き足して仕上げていきます。アイフィルムにご依頼いただく場合は、式次第やプログラムの案をいただければ、技術や運営に必要な項目を加えて整えていきます。
Q. 進行台本の作成だけをお願いすることはできますか?
式次第やプログラムの案をもとに、進行台本づくりからご相談いただけます。どこまでをお任せいただくかは、イベントの内容に合わせてご相談ください。
Q. 進行台本はいつごろまでに固めればよいですか?
リハーサルの前には、関係者全員が同じ版を持っている状態にしておくのが理想です。登壇者や来賓の確定が遅れる場合は、決まっていない部分を「調整中」と明記したうえで、先に流れとタイムテーブルを共有しておくと準備が進めやすくなります。


