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動画制作の仕様書の書き方と予算の考え方|自治体の発注担当者向けチェックリスト

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合同会社アイフィルムの小池です。

PR動画や観光プロモーション動画を外部に発注するとき、発注担当者の方が最初に向き合うのが「仕様書」と「予算」です。予算は仕様書に書いた作業の量で決まるため、この2つはセットで考えるものです。

新潟県内の自治体が実際に公開している動画制作の仕様書や、地方自治法施行令などの公的な情報をもとに、仕様書に書く項目と予算の組み立て方をまとめました。入札・プロポーザルの手続きの流れは「自治体の映像制作案件、入札参加の基本フロー」、契約方式の違いは「プロポーザル方式と一般競争入札の違いとは」で紹介しています。

仕様書の役割と、書くべき10項目

仕様書は「説明書」であり「検査の物差し」

仕様書の1つ目の役割は、事業者への説明書です。事業者は仕様書を読んで撮影日数や編集の手間を見積もるため、書かれていない作業は見積もりに入りません。

2つ目は、納品時の検査の基準です。地方自治法第234条の2第1項では、自治体が契約を結んだときは、契約の適正な履行の確保や給付の完了の確認のために、必要な監督または検査をすることを定めています。地方自治法施行令第167条の15第2項では、検査は契約書、仕様書、設計書その他の関係書類に基づいて行うとされています。「何を、どの形で、いつまでに納めるか」がはっきり書かれていれば、検査も迷わず進められます。

書いておきたい10項目と公開例

新潟市の「動画を活用した新潟市ラーメンプロモーション業務委託」と、長岡市の「摂田屋・宮内エリア観光プロモーション動画制作業務」の仕様書を参考に、書いておきたい項目をまとめました。

項目書く内容公開仕様書の例
目的動画で解決したい課題、達成したいこと新潟ラーメンの認知度向上と交流人口の拡大(新潟市)
ターゲット誰に見てほしいか首都圏を中心とする20〜30代の県外在住者(新潟市)
尺・本数長さと本数、短尺版の有無3分程度の基本動画から、1分程度・10秒程度の短尺動画を作成(長岡市)
画面・画質画面比、解像度、縦型・横型16:9、フルハイビジョン以上(両市)。15秒・30秒の動画は横型と縦型で制作(新潟市)
納品形式ファイル形式、媒体、納品場所配信用データはmp4を基本とし、DVDも納品(長岡市)。電子データはウイルス対策ソフトで検査して納品(両市)
字幕・言語字幕の有無、多言語対応字幕なし版と日本語字幕付き版を制作(両市。新潟市はナレーションをつける場合)。今後の多言語版制作を想定(長岡市)
二次利用・著作権権利の帰属、利用範囲、素材の権利処理所有権、著作権(著作権法第27条・第28条に規定する権利を含む)、利用権は委託者に無償、無条件で帰属(両市)
スケジュール履行期間、途中の確認の回数完成前に委託者と内容確認を2回以上行う(両市)
検収方法何を納めたら完了か、成果品の一覧動画一式に加え、再生回数などの効果測定を含む報告書を提出(新潟市)
予算・上限額上限額と、税込か税別か委託金額の上限1,000,000円(消費税及び地方消費税を含む)(長岡市)

目的・ターゲット・尺は「誰に、どこで見せるか」から

新潟市の仕様書では、目的とターゲットに加えて、「旅の〆にラーメンを楽しむ」というイメージを強化するという方向性まで示されていました。ここまで書かれていると、事業者は構成や撮影する場面を具体的に考えられます。尺や画面の向きも、流す場所から決めると無駄がありません。新潟市の例では、SNSでの配信を想定して、冒頭5秒で視聴者を引きつける工夫を求めていました。

字幕は最初から仕様に入れておく

総務省の資料では、「みんなの公共サイト運用ガイドライン」において、公的機関はアクセシビリティの規格(JIS X 8341-3)のA及びAAの達成基準をすべて満たす対応が求められているとしています。あわせて、聴覚障害のある方などが情報を得られるよう、動画のナレーションなどの音声情報を字幕などで伝えることを挙げています。ホームページで公開する動画は、字幕付き版を最初から仕様に含めておきます。

二次利用・著作権は「27条・28条」と人格権まで

著作権法第61条第2項では、著作権を譲渡する契約で、第27条や第28条に規定する権利(翻訳・翻案などの権利や、二次的著作物の利用に関する権利)が譲渡の目的として特に書かれていないときは、それらの権利は譲渡した側に残っていると推定されます。後から短く編集し直したり、多言語版を作ったりする予定があるなら、この2つの条文の権利を含めると書いておきます。

内閣府の委託事業向けに公開されている著作権のQ&Aでは、著作者人格権は譲渡されず委託事業者が持ち続けるとしたうえで、仕様書(案)で「一切の著作者人格権を行使しない」と定める例が示されています。出演者の肖像権、BGM、ナレーションなど、素材の権利処理を誰が行うかも書いておきましょう。ナレーションの使用条件は、ナレーターや事務所によって異なります。

検収は「何を納めたら完了か」を具体的に

検査は仕様書に基づいて行われるので、成果品の一覧(本編、短尺版、字幕付き版、報告書など)と途中の確認の回数を書いておくと、完了の判断がしやすくなります。

「書きすぎ」と「書かなさすぎ」に注意

仕様書は細かく書くほど良いわけではありません。書き方によって、参加できる事業者の数や提案の幅が変わります。

起こりやすいこと対策
書きすぎ撮影機材の型番や演出の細部まで指定すると、事業者の工夫の余地が小さくなる。参加条件を厳しくしすぎると、応募できる事業者が限られる「何を達成したいか」を中心に書き、方法は提案に任せる。本当に必要な条件だけを残す
書かなさすぎ事業者ごとに想定する作業量がばらつき、見積額に大きな差が出る。制作の途中で追加の作業が発生しやすい尺・本数・納品形式・字幕・権利・確認の回数など、金額に直結する条件は具体的に書く

総務省行政評価局が国の役務契約を調べた報告書(平成26年)でも、応札条件を官公庁などからの受注実績がある者に限定している例や、応札に必要な情報が仕様書に明示されていない例、開札日から履行開始までの期間が十分に確保されていないと考えられる例が取り上げられています。

目安として、「金額に影響する条件は具体的に、表現の方法は目的を示して事業者に任せる」と考えると、バランスが取りやすくなります。新潟市の仕様書のように「自由提案を可とする」と書き添えるのも一つの方法です。

参考見積もりと予定価格の考え方

参考見積もりは同じ条件で複数社から

予算要求や予定価格の検討のために、事業者から参考見積もりを取ることがあります。取るときは、同じ条件で、複数の事業者に依頼します。

  • 同じ条件書を渡す:尺・本数・撮影日数の想定・字幕の有無などをまとめた簡単な条件書を用意し、全社に同じものを渡します。条件がそろっていないと、金額を比べられません。
  • 工程ごとの内訳を出してもらう:合計額だけでなく、企画・撮影・編集などの内訳があると、どこに差があるのかが分かります。
  • 複数社から取る:総務省行政評価局の報告書では、国の行政効率化推進計画で、参考見積を取る場合は原則として複数の業者から取り、見積の比較や取引実例との比較を行うこととされていると紹介しています。同じ報告書は、参考見積に数倍の価格差があるのに平均額を予定価格にしていた例や、毎回同じ組み合わせの業者から見積書を取っていた例を指摘しています。

金額に大きな差があるときは、平均を取るより先に、想定している作業内容の違いを確かめてください。差の理由が分かれば、仕様書に書き足すべき条件も見えてきます。

予定価格は「取引の実例」などから適正に

予定価格は、自治体が契約金額の上限として定める金額です。地方自治法第234条第3項では、競争入札では、予定価格の制限の範囲内で最高または最低の価格で申し込んだ者を契約の相手方とすると定めています。

予定価格の決め方は、各自治体の規則で定められています。たとえば名古屋市契約規則では、予定価格は「取引の実例価格、需給状況、履行の難易その他価格の算定に必要な条件を考慮して適正に定めなければならない」とし、随意契約をするときは原則として2人以上から見積書を取ることにしています。参考見積もりや過去の類似案件の契約額は、この「取引の実例」を確かめる材料になります。

見積限度額は税込か税別かを明記する

プロポーザルでは、提案の上限として「見積限度額」や「提案上限額」が示されます。長岡市の仕様書では、委託金額の上限を1,000,000円(消費税及び地方消費税を含む)としたうえで、「この金額は契約予定額を示すものではない」と明記していました。税込か税別かを書いておくと、事業者の見積もりの前提がそろいます。

予算の積み上げ方(工程別の内訳)

動画制作の費用の多くは、人が動く時間で決まります。工程ごとに分けて考えると、予算の根拠を説明しやすくなります。

工程主な作業金額が変わる要因
企画・構成取材、構成案・絵コンテの作成取材先の数、構成案の見直しの回数
撮影準備ロケハン(下見)、出演者・撮影先との調整、許可申請撮影場所の数、出演者の有無
撮影カメラマン・音声などの人員、機材撮影日数、人数、ドローン空撮の有無
編集カット編集、テロップ、色の調整尺、本数、修正の回数
音ナレーション、BGMナレーターの起用、オリジナル曲か既存の音源か
派生版短尺版、縦型版、字幕付き版、多言語版版の数
進行管理・諸経費打合せ、進行管理、交通費・宿泊費打合せの回数、撮影地までの距離

参考として、アイフィルムのサービスページに載せている目安を紹介します。プロモーション動画は、15秒〜60秒程度の短尺映像で概ね20万〜100万円前後が一つの目安です。ナレーションは動画ナレーション(3分・1,000文字まで)が66,000円(税別)、ドローン空撮は1フライト(約20分程度)あたり3万円台からです。実際の金額は内容によって変わるため、上の表の工程ごとに見積もりの内訳を確かめてください。

撮りたい季節から逆算する

新潟市の仕様書では、委託期間は契約日から令和8年3月31日までとされていました。冬の景色が必要なのか、新緑の時期が良いのかなど、撮りたい季節から逆算して、予算化の時期とスケジュールを考えておきます。

公開後の運用費も見ておく

動画は作って終わりではなく、見てもらうための費用もかかります。

費用の種類内容
広告配信・プロモーションSNSや動画サイトでの広告配信
効果測定・報告再生回数や視聴の分析、報告書の作成
派生版の追加季節に合わせた差し替え、短尺版や多言語版の追加
上映イベントや窓口で流すためのモニター、プロジェクターなど

新潟市の仕様書では、動画の完成後に最も効果的なプロモーション期間を提案して実施することや、再生回数や分析結果を含む報告書の提出までが業務に含まれていました。長岡市の仕様書では、今後の多言語版の制作を想定し、多言語対応が可能な動画とすることが求められています。

運用まで同じ契約に含めるのか、翌年度以降に別の予算で行うのかを、仕様書を書く段階で決めておくと、予算の説明がしやすくなります。

よくある質問

Q. 仕様書の「目的」はどのくらい詳しく書けばよいですか?

動画で何を変えたいのか(認知度を上げたい、来訪者を増やしたいなど)と、誰に見てほしいのかが分かる程度までは書いてください。新潟市の例のように、ターゲットの年代や住んでいる地域まで示されていると、事業者は構成を具体的に考えられます。

Q. 著作権は自治体に譲渡してもらうべきですか?

後から編集し直したり、別の媒体で使ったりする予定がある場合は、譲渡や利用範囲を仕様書で決めておきます。譲渡を受ける場合は、著作権法第27条・第28条の権利を含むことを明記しておきます。BGMやナレーション、出演者など、事業者以外の権利が関わる素材は、使える範囲も確認しておきます。

Q. 公開後の広告費も、制作と同じ予算に入れたほうがよいですか?

どちらの方法もあります。新潟市の例のように、プロモーションの実施と報告まで含めて1つの業務にしている例もあります。制作と運用を分ける場合は、翌年度以降の予算もあわせて検討しておくと、動画を活用し続けやすくなります。

参考見積もりのご依頼について

アイフィルムは新潟県糸魚川市と新潟市を拠点に、映像制作、ライブ配信、イベント音響などを手がけています。糸魚川市のPR CMやイベント告知動画などの制作実績があり、自治体の案件には入札やプロポーザルで参加しています。学校や自治体の書式での見積書の作成や、入札・見積合わせが必要な案件のご相談にも対応しています。

動画の内容についてはプロモーション動画のページを、事業者側から見たプロポーザルの準備については「提案書で評価されるコンセプトの作り方」もあわせてご覧ください。参考見積もりのご依頼は、仕様書の案を添えてお問い合わせからお送りください。

参考にした情報
  • 7年連続いといがわキャリアフェスティバルの音響・映像・会場設営
  • 国家資格二等無人航空機操縦士(夜間・目視外の限定解除)
  • 電気工事士イベントの仮設電源も自社で施工
  • 自治体の案件新潟県内の入札・プロポーザルに参加
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