
合同会社アイフィルムの小池です。
動画制作の見積もりや提案書を見ると、「業務用カメラ2台」「ジンバル」「スイッチャー」など、機材の名前が並んでいることがあります。発注する側からすると、「その機材で何が変わるのか」「本当に必要なのか」は判断しにくいものです。
機材は高ければよいわけではなく、映像の目的と現場の条件に合っているかで選びます。ここでは、機材の違いが映像の何に効くのかと、案件の規模ごとの機材構成の目安を、発注者の目線でまとめました。
機材の違いは映像の「どこ」に出るのか
最初に、機材ごとに映像のどこが変わるのかを一覧にします。
| 機材 | 主に効くところ | 差が出やすい場面 |
|---|---|---|
| カメラ(センサー) | 背景のボケ、暗い場所での画質、明暗差への強さ | 夜や屋内の撮影、人物を印象的に見せたいとき |
| レンズ | 映る範囲、遠くの被写体への寄り、ボケの量 | 式典やステージ、インタビュー |
| マイク・レコーダー | 声の聞き取りやすさ | インタビュー、講演、セミナー |
| 照明 | 顔色、肌の質感、画面の明るさ | 室内のインタビュー、商品撮影 |
| ジンバル・ジブ | 映像の動きとなめらかさ | 会社紹介、PR動画、イベントの雰囲気 |
| ドローン | 空からの視点 | 施設や工事現場、観光地 |
| 配信機材 | 複数カメラの切り替え、安定した配信 | ライブ配信、ハイブリッド開催 |
カメラ:センサーとレンズで変わるボケと暗所の強さ

センサーが大きいほど、ボケやすく暗所に強い
カメラの中で光を受け止める部品を「イメージセンサー」といいます。ソニーの解説では、センサーが大きいと、同じ画角・同じF値ならボケ量が多くなること、明暗差の大きい場面でも白とびや黒つぶれが起きにくいこと、多くの光を取り込めるため暗いシーンでもノイズを抑えやすいことが挙げられています。センサーが大きいほど、カメラ本体やレンズは大きく重くなる傾向もあります。
インタビューで背景をやわらかくぼかして人物を引き立てたいときや、照明を足しにくい暗い会場では、大きなセンサーのカメラが向いています。
レンズは「どこまで寄れるか」と「明るさ」
レンズは、映る範囲と、遠くの被写体にどこまで寄れるかを決めます。レンズ名にある「F2.8」などの数字(F値)は、小さいほど多くの光を取り込める「明るい」レンズであることを示し、背景もぼかしやすくなります。客席の後方からステージの登壇者を大きく撮る式典では、70-200mmのような望遠ズームレンズが必要です。
業務用ビデオカメラとミラーレス一眼の使い分け
| 業務用ビデオカメラ | ミラーレス一眼 | |
|---|---|---|
| 得意なこと | 1台で広角から望遠まで撮れる、業務用マイクをつなぎやすい | 大きなセンサーによるボケ、暗い場所での画質、レンズの交換 |
| 向いている場面 | 式典・講演の記録、ライブ配信 | インタビュー、会社紹介・PR動画、夜や暗い会場 |
| 例(アイフィルムの機材) | SONY HXR-NX80、FDR-AX700 | SONY α7S III、α7 IV |
ソニーの公表仕様では、HXR-NX80は1.0型積層型CMOSセンサーを搭載し、光学12倍ズームと4K HDR記録に対応しています。付属のXLRハンドルユニットで業務用マイクをつなぐことができ、コンデンサーマイク用のファンタム電源も供給できます。FDR-AX700も1.0型センサーと光学12倍ズームを備えています。
α7S IIIは35mmフルサイズ・有効約1210万画素のセンサーで、動画のISO感度は常用でISO80〜102400相当、拡張で上限ISO409600相当、4Kは最大120pで記録できます。α7 IVは35mmフルサイズ・有効約3300万画素で、4Kは最大60pです。暗い会場ではα7S III、静止画も高精細に残したいときはα7 IVというように、目的に合わせて使い分けます。
1.0型のセンサーはフルサイズより小さいぶん、背景までピントが合いやすく、動き回る被写体を追う記録撮影ではかえって扱いやすい面もあります。実際の現場では、場面に合わせて組み合わせて使います。
音声と照明:映像の印象を左右する2つの機材
音声:聞き取りやすさは「口元からの距離」で決まる
映像がきれいでも、声が聞き取りにくいと内容が伝わりにくくなります。音声の品質は、マイクを話し手の口元にどれだけ近づけられるかで大きく変わります。インタビューならピンマイクやガンマイク(細長く正面の音を狙うマイク)、講演やセミナーなら会場の音響卓から音声をもらう方法がよく使われます。
アイフィルムでは、ショットガンマイクのSENNHEISER MKE600、ワイヤレスマイク受信機のSONY URX-P41D、ワイヤレスマイクのSHURE BLX288/SM58などを使い分けています。複数のマイクを別々に録音するときは、16入力のオーディオインターフェース(TASCAM US-16x08)でマルチ収録も行います。マイクの種類ごとの特徴は、マイクの種類と使い分けで詳しく紹介しています。
照明:顔色と立体感をつくる
室内では、天井の照明だけだと目の下に影が出たり、顔色が沈んで見えたりします。撮影用のLEDライトで顔に光を当てると、表情が明るく、肌の質感も自然に見えます。大きな窓の前で撮るときは、逆光で顔が暗くならないよう光の向きを整えます。アイフィルムでは、LEDビデオライトのGodox SL150(2台)やNEEWERのLEDパネルライトを使っています。
動きを出す機材、ドローン、配信機材
ジンバル・スライダー・ジブ
手持ちで歩きながら撮ると、どうしても映像が揺れます。ジンバルは、モーターでカメラの傾きを打ち消し、歩きながらでもなめらかな映像を撮るための機材です。DJIの公表仕様では、DJI RS 4 Proの積載量(テスト値)は4.5kgです。
スライダーはレールの上でカメラを横や前後に動かす機材、ジブはカメラをアームの先に付けて上下や大きな弧を描くように動かす機材です。会社紹介やPR動画で「ゆっくり近づく」「上から見下ろす」といった動きを入れると、映像に奥行きが出ます。アイフィルムでは、電動カメラジブのedelkrone JibONEと、電動パン・チルトヘッドのedelkrone HeadPLUSを使っています。
ドローン
空からの映像は、施設の全景や工事の進み具合、地域の風景を一目で伝えられます。アイフィルムが使うDJI Mavic 3 Pro Cineは、DJIの公表仕様では4/3型CMOSのハッセルブラッドカメラを含む3つのカメラ(35mm判換算24mm・70mm・166mm)を搭載し、Cine版のみApple ProResでの記録に対応しています。ドローンの飛行には許可や承認が必要な場合があります。詳しくはドローン空撮の費用相場と飛行許可の仕組みをご覧ください。

配信機材
ライブ配信で複数のカメラを切り替えるには、スイッチャーが必要です。ローランドの公表仕様では、Roland V-8HDはHDMI 8入力・3出力で、18チャンネルのオーディオミキサーを内蔵し、ピクチャー・イン・ピクチャーやテロップなど最大5レイヤーの画面演出ができます。配信用パソコンへの取り込みには、USBビデオキャプチャーのRoland UVC-01を組み合わせます。UVC-01は最大1920×1080/60pの映像をパソコンに送り、専用ドライバーなしでWebカメラと同じように認識されます。
離れた場所のカメラ映像は、ワイヤレス映像伝送のDJI Transmissionで配信卓まで送ることもできます。配信の費用感は、ライブ配信の費用相場で紹介しています。
案件規模別の機材構成
案件の規模によって、機材の組み合わせは次のように変わります。
| 規模 | 案件の例 | カメラ | 音声 | そのほか |
|---|---|---|---|---|
| 小規模 | 社内向けのインタビュー、SNS用の短い動画、固定カメラ1台の配信 | ミラーレス一眼または業務用ビデオカメラ1〜2台 | ピンマイク、ガンマイク | LEDライト、三脚 |
| 中規模 | 会社紹介・採用動画、式典の記録、2台以上の配信 | 2〜3台(引き・寄りを分ける) | ワイヤレスマイク、会場の音響卓からの音声 | 照明2灯以上、ジンバル、必要に応じてドローン |
| 大規模 | 学会や公開討論会の多カメラ配信、大型イベントの記録 | 3〜5台(業務用ビデオカメラとミラーレスの組み合わせ) | 音響PA一式、マルチ収録 | スイッチャー、ワイヤレス映像伝送、電動ジブ、回線の確保 |
アイフィルムの事例では、学会の配信を業務用カメラ3台とスイッチャー(Roland V-8HD)で、公開討論会の配信をSONY α7S IIIなど最大5台のカメラで担当しています。規模が大きくなるほど機材の数だけでなく、配線や電源、予備機材の準備も増えていきます。
小規模な案件ほど、音声と照明で仕上がりが変わります。カメラの台数を増やすより先に、マイクとライトを整えるほうが効果的なこともあります。
アイフィルムの撮影機材
アイフィルムでは、撮影・配信・音響の機材を自社でそろえ、案件に合わせて組み合わせています。
| 分類 | 主な機材 |
|---|---|
| カメラ | SONY α7S III、α7 IV、HXR-NX80(2台)、FDR-AX700、DJI Osmo Pocket 3、DJI Osmo Pocket 4P |
| レンズ | SONY FE 70-200mm F2.8 GM OSS II、FE 70-200mm F2.8 GM OSS、FE 24-70mm F2.8 GM、FE 24-105mm F4 G OSS、FE 12-24mm F4 G |
| 特機・ジンバル | DJI RS 4 Pro、edelkrone JibONE、edelkrone HeadPLUS、Sachtler ビデオ三脚 |
| ドローン | DJI Mavic 3 Pro Cine(国家資格〔二等〕保有スタッフが操縦) |
| 配信 | Roland V-8HD、Roland UVC-01、DJI Transmission |
| 照明 | Godox SL150(2台)、NEEWER LEDパネルライト、ADJ DMX FX512 |
機材の写真と一覧は機材のページで、対応できるサービスはサービス一覧でご覧いただけます。見積もりや提案書に書かれた機材の役割がわからないときも、お問い合わせからお尋ねください。
よくある質問
Q. 機材を指定して依頼することはできますか?
はい、ご希望があればお伝えください。「暗い会場で撮りたい」「背景をぼかしたい」など、映像のイメージを伺えれば、目的に合う機材の組み合わせをご提案します。お問い合わせからご相談ください。
Q. 高い機材を使うほど費用は上がりますか?
機材の数やスタッフの人数が増えるほど費用は上がります。必要な映像に合わせて機材を絞ることで、予算内に収まる構成をご提案します。ライブ配信は、カメラ1〜2台・配信2時間までのライト配信で6.5万円(税別)から承っています。
Q. 会場のマイクや音響設備を使ってもらえますか?
はい。会場の音響卓から音声をもらって収録・配信することができます。会場に音響設備がない場合は、音響PAの機材を持ち込むこともできます。
Q. スマートフォンで撮った映像との違いは何ですか?
大きな違いが出やすいのは、望遠での撮影、暗い場所での画質、そして音声です。撮影用のカメラとマイク、照明を使うと、遠くの登壇者や暗い会場でも、聞き取りやすい声とともに映像を残せます。


