
合同会社アイフィルムの小池です。
動画の画面に入る文字、いわゆる「テロップ」は、映像の中では脇役に見えるかもしれません。けれども、同じ映像でも、テロップの大きさや色、フォント、出すタイミングが変わるだけで、「見やすい」「信頼できそう」「なんだか安っぽい」と、受ける印象が大きく変わります。
動画制作を発注する担当者の方に向けて、テロップの役割と、見やすいテロップをつくるための考え方をまとめました。制作会社との打ち合わせや、仮編集の映像を確認するときの手がかりとしてお使いください。
テロップの4つの役割
テロップは、入れる目的によって、デザインも出し方も変わります。まずは、そのテロップが何のためにあるのかを分けて考えます。
| 役割 | 内容 | 例 | デザインの考え方 |
|---|---|---|---|
| 要約 | 話やナレーションの要点を短くまとめる | 「創業50年、地域の水まわりを支える」 | 短く言い切る。場面の切り替わりに合わせて出す |
| 強調 | 数字やキーワードを目立たせる | 「作業時間 30%削減」 | 大きさや色で差をつける。使う回数をしぼる |
| 話者名 | 話している人の名前や肩書きを示す | 「製造部 課長 山田 太郎」 | 画面の隅に小さく、毎回同じ位置・同じ形で |
| 字幕 | 話している言葉をそのまま文字にする | インタビューやナレーションの全文 | 画面の下にそろえ、読みやすさを最優先にする |
一つの動画の中でも、オープニングのタイトルは大きく印象的に、インタビューの字幕は控えめに読みやすく、と役割ごとにデザインを決めておくと、画面全体に統一感が生まれます。制作会社とは、最初に「テロップの種類ごとの見た目のルール」を共有しておくと、確認が早く進みます。
読みやすさは5つの要素で決まる
文字の大きさ:見る画面で確かめる
テロップの大きさは、動画が見られる画面に合わせて決めます。スマートフォンで見られる動画なら、パソコンの大きな画面で編集していても、手元のスマートフォンで読めるかどうかが基準です。展示会のモニターや会場のスクリーンで流す場合は、少し離れた場所から見ても読めるかを確かめます。仮編集の段階で、実際に使う画面に近い環境で再生してみるのが確実です。
表示時間:読み終わるまで出しておく
テロップは、読み終わる前に消えてしまうと、内容が伝わらないうえに、見る人にストレスを与えます。目安としては、制作側が声に出して読んでみて、余裕を持って読み終えられる長さを確保します。テレビの字幕付きCMの制作の手引きである「字幕付きCMハンドブック」では、各字幕は2秒以上表示しなければならないとされています。短い言葉でも、一瞬で消えないようにします。電話番号やURL、日付などは、ほかのテロップより長めに表示します。
行数と1行の長さ:1画面に1つの情報
1つのテロップに情報を詰め込むと、読むのに時間がかかり、映像を見る余裕がなくなります。1画面には1つの情報、行数は1〜2行に収めるのが基本です。長い文は、意味の区切りで分けて、2つのテロップに分けて出します。改行の位置も、「地域の / 暮らしを支える」のように言葉の途中で切らず、意味のまとまりで区切ると読みやすくなります。
縁取り・座布団:背景の上でも読めるように
映像の上に文字を置くと、背景が明るい場面や、細かい模様のある場面で文字が埋もれてしまいます。そこで使うのが、次のような工夫です。
| 工夫 | どんなものか | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 縁取り(フチ) | 文字のまわりに別の色の線をつける | 背景がいろいろ変わる映像。白い文字に黒い縁取りが定番 |
| 影(ドロップシャドウ) | 文字の後ろに影をつけて浮き上がらせる | 落ち着いた雰囲気の映像。縁取りより控えめな印象 |
| 座布団(帯) | 文字の後ろに帯や四角の背景を敷く | 背景が明るい・細かい場面、字幕、話者名 |
座布団は、半透明にすると映像を隠しすぎずに文字を読みやすくできます。字幕付きCMハンドブックでも、字幕の背景色にはハーフ(半透明)の黒を使うとされています。
コントラスト:文字と背景の明るさの差
文字の色と背景の色の明るさに差がないと、文字は読みにくくなります。ウェブのアクセシビリティ(誰もが利用しやすいこと)の国際的な指針であるWCAGでは、文字と背景のコントラスト比(明るさの差を表す数値)を4.5:1以上、大きな文字は3:1以上とする基準があり、画像になった文字にも同じ基準があてはまるとされています。動画のテロップも、この考え方が参考になります。黄色の文字を明るい空の上に置く、薄いグレーの文字を白い壁の上に置く、といった組み合わせは避け、縁取りや座布団で差をつけます。
SNSでは「隠れない位置」に置く
TikTokやInstagramのリール、YouTubeショートなどの縦型動画では、画面の下側や右側に、アカウント名やいいね・コメントのボタンが重なって表示されます。大事なテロップは画面の中央寄りに置くのが基本です。セーフエリア(文字が隠れない範囲)の考え方は、縦型動画の作り方の記事で紹介しています。
フォントと色の選び方
フォントは「動画の雰囲気」と「読みやすさ」で選ぶ
フォント(書体)は、テロップの印象を大きく左右します。代表的な書体の特徴をまとめました。
| 書体 | 特徴 | 向いている動画 |
|---|---|---|
| ゴシック体 | 線の太さが均一で、小さくても読みやすい | 字幕、説明動画、会社紹介など幅広く |
| 明朝体 | 線に強弱があり、上品で落ち着いた印象 | 高級感を出したい商品、式典、ドキュメンタリーのタイトル |
| 丸ゴシック体 | 角が丸く、やわらかく親しみやすい | 子ども向け、自治体のお知らせ、福祉・医療の紹介 |
| 手書き風・デザイン書体 | 個性が強く、雰囲気を演出できる | タイトルやキャッチコピーなど、短い言葉に限って |
字幕のように文字数が多いテロップは、ゴシック体などの読みやすい書体が基本です。デザイン性の高い書体はタイトルや強調に使い、一つの動画で使う書体は2〜3種類までにしぼると、まとまりが出ます。「UD(ユニバーサルデザイン)書体」と呼ばれる書体もあります。モリサワの公式サイトでは、同社のUD書体は「文字のかたちがわかりやすいこと」「文章が読みやすいこと」「読み間違えにくいこと」をコンセプトに開発されたと紹介されています。同社の「BIZ UDPゴシック」は、Adobe Fontsでも提供されています。
商用で使えるフォントか、ライセンスを確認する
フォントにはそれぞれ利用の条件(ライセンス)があり、企業の動画のような商用の用途で使えるかどうかは、フォントごとに異なります。
- Adobe Fonts:ヘルプでは、すべてのフォントが個人用・商用にライセンスされ、放送で使う映像や、YouTube・Vimeoなどで配信する映像の制作に使えると案内されています。ライセンスはCreative Cloudのサブスクリプションが有効な間とされていますが、画像化・アウトライン化した文字を含むファイルは、サブスクリプションの状態にかかわらず配布できるとされています。
- フリーフォント:無料で配布されているフォントも、商用で使えるか、動画に使えるか、クレジット表記が必要かといった条件は配布元ごとに違います。使う前に配布元の規約を確認し、規約のページを記録しておきます。
会社で決められた書体(コーポレートフォント)がある場合は、動画でもそれを使うと、パンフレットやWebサイトと印象がそろいます。最初の打ち合わせで、ブランドのガイドラインと合わせて制作会社に伝えておきます。
色はブランドカラーを「差し色」に
ブランドカラーをテロップに使うと、会社らしさが伝わります。ただし、ブランドカラーをそのまま文字の色にすると、背景によっては読みにくくなることがあります。文字は白や黒など読みやすい色にして、ブランドカラーは座布団や下線、強調したい一言に使う、という使い方がおすすめです。
色だけで意味を区別すると、色の見え方が人によって違う場合に伝わりにくくなります。字幕付きCMハンドブックでは、話者ごとに字幕の色を変える方法(主人公に相当する話者は黄色、続く話者はグリーンまたはシアンなど)が示されていますが、一般の動画でも、色に加えて話者名や位置で区別しておくと、より多くの人に伝わります。
テロップが多すぎるとどうなるか
テロップは、量が多すぎると逆効果になることがあります。主な弊害は次のとおりです。
| 弊害 | どうなるか |
|---|---|
| 映像が見えない | 商品や人の表情など、本当に見せたい映像が文字で隠れる |
| 読み疲れる | 文字を追うのに精一杯になり、内容が頭に残らない |
| 強調が効かない | どこでも大きな文字や色を使うと、何が大事なのかがわからなくなる |
| 印象が騒がしくなる | 落ち着いた会社紹介や高級感のある商品では、ブランドのイメージと合わなくなる |
テロップを入れるかどうか迷ったら、「その文字がなくても伝わるか」「映像や声ですでに伝わっていないか」を考えます。たとえば、商品を手に取る場面で「手に取りやすいサイズ」と書くより、手のひらに乗る様子を映したほうが伝わることもあります。逆に、数字や固有名詞、聞き取りにくい言葉は、文字で見せると確実に伝わります。
字幕とアクセシビリティ
字幕は、耳が聞こえにくい方や、音を出せない場所で見る方にも内容を届ける手段です。WCAGの達成基準では、収録済みの動画の音声に字幕(キャプション)を付けることが定められていて、字幕は会話だけでなく、誰が話しているかや、意味のある効果音も伝えるものとされています。
動画に焼き込む字幕と、切り替えられる字幕
字幕には、映像そのものに文字を入れる方法と、見る人が表示・非表示を切り替えられる方法があります。
| 種類 | 特徴 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| オープンキャプション(焼き込み) | 映像に文字を入れるため、どの再生環境でも同じように表示される。消すことはできない | SNS、展示会やサイネージ、デザインを作り込みたい動画 |
| クローズドキャプション(切り替え式) | 字幕のデータを別に用意し、再生画面で表示・非表示を切り替えられる | YouTubeやWebサイトで公開する動画、字幕を好みで選んでほしい動画 |
YouTubeでは、字幕ファイルをアップロードしたり、文字起こしの文章を入力して自動でタイミングを合わせたりして、字幕を追加できます。YouTubeのヘルプでは、字幕は耳が聞こえにくい方や、ほかの言語を話す方に届ける助けになると案内されています。
字幕付きCMハンドブックが示す字幕の基本
字幕付きCMハンドブックには、字幕の基本の表示位置を画面下の中央とすること、難しい漢字や固有名詞にルビ(ふりがな)を積極的に使うこと、話者名は基本的に初めて登場したときに表示することなどが示されています。テレビCM向けの手引きですが、一般の動画の字幕にも参考になる考え方です。
自治体の動画で求められやすい字幕や色の配慮は、自治体PR動画の作り方の記事でも紹介しています。
よくある質問
Q. テロップのフォントや色を、こちらで指定できますか?
コーポレートフォントやブランドカラー、パンフレットのデザインなどがあれば、最初の打ち合わせでお知らせください。ご希望に合わせたデザインをご相談いただけます。指定したいフォントは、商用で使えるライセンスかどうかもあわせて確認しておきます。
Q. インタビューの発言は、すべて字幕にしたほうがよいですか?
動画の使い道によります。SNSやサイネージのように音を出さずに見られることが多い場所では、全文の字幕があると内容が伝わりやすくなります。ホームページ用の落ち着いた会社紹介などでは、要点だけをテロップにして、映像を見せる時間を長く取る方法もあります。同じ映像から、字幕入りの版と字幕の少ない版を作り分けることもできます。
Q. テロップの誤字や、名前・肩書きの間違いを防ぐには?
出演者の名前・肩書き、商品名、地名などの固有名詞は、正しい表記の一覧を事前に制作会社へ渡しておくのが確実です。仮編集の確認では、映像の流れとは別に「テロップだけを読む」確認の時間を取ると、見落としを減らせます。
アイフィルムでのテロップ・字幕制作
アイフィルムでは、動画の目的や使う場所に合わせて、テロップのデザインまで含めて制作しています。商品・サービス紹介動画では、テンポよく見やすい編集と、商品説明のテロップで情報を正確に伝えます。SNS動画では、テロップの大きさ・配置まで含めて調整し、音を出さずに再生される場面も考えて、キャッチコピーとなる字幕や効果音で目と耳の両方で伝える演出をします。ミュージックビデオでの歌詞テロップや、ライブ配信での講演者紹介のテロップにも対応しています。
納品の際は、SNS用の縦型や尺違い、字幕入りなどの派生版の制作もお受けしています。編集にはApple Final Cut Pro、Adobe Premiere Pro、After Effectsを主に使っており、撮影済みの素材の編集だけのご依頼もできます。
演出や制作の詳細はプロモーション動画やSNS動画のページをご覧ください。今ある動画のテロップを見直したいときは、その動画のURLを添えてお問い合わせください。


