
合同会社アイフィルムの小池です。
インタビュー動画の出来は、カメラや照明と同じくらい「何を、どの順番で聞くか」で決まります。同じ社員、同じお客様に話してもらっても、質問が抽象的だと「やりがいがあります」「満足しています」といった、どこかで聞いたような答えになりがちです。質問がよく練られていると、その人にしか話せない具体的なエピソードが自然に出てきます。
撮影機材や照明、現場での演出はインタビュー動画の撮影・制作完全ガイドで、採用動画全体の組み立ては採用動画の構成と作り方で紹介しました。この記事では、その手前にある「質問の作り方」だけに絞って、発注する側でも準備できることをまとめます。
質問は「見た人に残したい一言」から逆算して作る
質問づくりでいちばん多い失敗は、聞きたいことを思いつく順に並べてしまうことです。インタビュー動画は、撮った答えのほとんどを編集で削り、残った数十秒〜数分で見る人に何かを伝えるものです。質問は「完成した動画を見た人に、何を感じてほしいか」から逆算して作ります。
手順は次の4段階です。
| 段階 | 決めること | 例(採用動画の場合) |
|---|---|---|
| 1. 目的 | 動画を見た人にとってほしい行動 | 会社説明会に申し込んでもらう |
| 2. 残したい一言 | 見終わった人の頭に残したいメッセージ | 「若手でも任せてもらえる会社」 |
| 3. 必要な材料 | その一言を信じてもらうための具体的な話 | 入社2年目で担当した仕事、そのとき先輩がしてくれたこと |
| 4. 質問 | 材料を話してもらうための問いかけ | 「初めて一人で任された仕事は何でしたか」 |
肝心なのは3段目です。「若手でも任せてもらえます」と本人に言ってもらっても、見る人には響きません。信じてもらえるのは、その主張を裏づける出来事のほうです。質問は「主張」ではなく「出来事」を聞き出すために作ると考えると、組み立てやすくなります。
質問は、答えの中から一番いい部分を選べるよう多めに用意しつつ、「必ず聞く質問」と「時間があれば聞く質問」に分けておきます。出演者が疲れると表情も言葉も硬くなるため、当日の判断が楽になります。
答えやすい順番と、緊張をほぐす最初の質問
同じ質問でも、聞く順番で答えの深さが変わります。基本は「答えが決まっている質問」から始めて、「考えないと答えられない質問」へ少しずつ進む流れです。
| 順番 | 質問の種類 | ねらい | 例 |
|---|---|---|---|
| 1 | 事実 | 声を出すことに慣れてもらう | お名前と、今の担当を教えてください |
| 2 | 経緯 | 自分の言葉で話す準備 | この仕事に就いたきっかけは何でしたか |
| 3 | 経験(エピソード) | 動画の中心になる具体的な話 | 一番印象に残っている仕事を一つ挙げてください |
| 4 | 気持ち・考え | エピソードの意味づけ | そのとき、どんなことを感じましたか |
| 5 | これから | 締めくくりと前向きな印象 | これから挑戦したいことは何ですか |
| 6 | メッセージ | 見る人への直接の呼びかけ | この動画を見ている方に一言お願いします |
最初の質問は「間違えようがないもの」に
カメラの前では、話し慣れた人でも緊張します。最初に「会社の魅力は何ですか」のような大きな質問をすると、正解を探して言葉が出なくなりがちです。名前、担当、今日ここまでどうやって来たか、といった誰でも答えられる質問から始めると、声のトーンが落ち着いてきます。最初のいくつかの答えは、本編に使わない前提で聞いてもかまいません。
重い質問は中盤に置く
苦労したこと、失敗したことなど、答えるのに少し勇気がいる質問は、話が温まってきた中盤に置きます。冒頭で聞くと身構えた答えになり、終盤だと疲れて短い答えになりやすいからです。
「うまく話さなくていい」と最初に伝える
質問の前に、「言い直しても大丈夫です」「長くなっても編集で整えます」と伝えておくと、出演者の肩の力が抜けます。台本を読む場ではなく、会話をする場だと感じてもらうことが、本音を引き出す一番の近道です。
オープンとクローズドの使い分けと、エピソードを引き出す聞き方
2種類の質問を組み合わせる
質問には、「はい/いいえ」や一言で答えられるクローズドな質問と、自由に話してもらうオープンな質問があります。インタビュー動画ではオープンな質問が中心になりますが、クローズドな質問にも役割があります。
| 種類 | 例 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| クローズド | 入社して何年目ですか/その仕事は一人で担当しましたか | 事実の確認、話のきっかけ、答えの範囲をしぼりたいとき |
| オープン | その仕事で一番大変だったのはどんなところですか | エピソードや気持ちを話してもらいたいとき |
おすすめは、クローズドで「場面」を決めてから、オープンで「中身」を聞く組み合わせです。「去年の大きな案件は担当しましたか」→「はい」→「そのとき一番印象に残っている場面を教えてください」という流れにすると、漠然と「大変だったことは?」と聞くよりも、具体的な話が出てきやすくなります。
「一番」「最初に」「そのとき」で具体的な場面を聞く
抽象的な答えを具体的なエピソードに変えるには、質問の中に「場面を一つに決める言葉」を入れます。
- 「一番〜だったのは」:一番うれしかった仕事、一番悩んだ判断
- 「最初に〜したとき」:最初に一人で現場に出た日、最初にお客様から感謝された場面
- 「そのとき」:そのとき誰がいましたか、そのとき何と言われましたか
答えが抽象的なままなら、「たとえば、どんなことがありましたか」「その日のことをもう少し詳しく教えてください」と重ねて聞きます。数字や固有の場面(季節、場所、言われた言葉)が出てくると、映像に説得力が生まれます。
避けたい聞き方
| 避けたい聞き方 | 例 | 起こりやすいこと | 言い換え |
|---|---|---|---|
| 誘導する質問 | 職場の雰囲気はいいですよね? | 「はい」しか言えず、言わされた印象になる | 職場の雰囲気を、ほかの人に説明するとしたら? |
| 2つを一度に聞く | 入社の理由と、今のやりがいを教えてください | どちらかの答えが薄くなる | 1つずつに分けて聞く |
| 大きすぎる質問 | 会社の魅力は何ですか | 会社案内と同じ言葉が返ってくる | 「この会社でよかった」と思った場面は? |
| はい/いいえで終わる質問 | 仕事は楽しいですか | 話が広がらない | 仕事の中で、楽しいと感じるのはどんな瞬間ですか |
| 踏み込みすぎる質問 | 家族は転職に反対しませんでしたか | 出演者が身構える、公開しにくい答えになる | 本人が話したいと言った範囲に限る |
お客様の声の動画で気をつけたいのが、効果を言い切ってもらうような質問です。消費者庁は「打消し表示に関する実態調査報告書」で、体験談を見た一般消費者は「大体の人」が効果や性能を得られると受け止め、「個人の感想です。効果には個人差があります」といった打消し表示に気付いても、その受け止め方はほとんど変わらないと考えられる、と整理しています。お客様の声では、効果を断定してもらうより、「導入前に困っていたこと」「導入してから変わった業務の流れ」など、その方の体験そのものを聞くほうが、見る人にとっても誠実な動画になります。

目的別の質問例(採用・お客様の声・社長メッセージ)
ここまでの考え方をもとに、よく作られる3つの目的別に質問例をまとめました。そのまま使うのではなく、出演者や会社に合わせて言葉を調整してください。
| 段階 | 採用(社員インタビュー) | お客様の声(導入事例) | 社長メッセージ |
|---|---|---|---|
| 事実 | 今の担当と、入社して何年目かを教えてください | 御社の事業と、ご担当の業務を教えてください | 会社の事業を、初めての人に一言で説明すると? |
| 経緯 | この会社を選んだ決め手は何でしたか | 導入前、どんなことに困っていましたか | 創業(または就任)のとき、何を目指していましたか |
| 経験 | 初めて一人で任された仕事は何でしたか | 比較検討のとき、決め手になったのはどんな点ですか | 会社にとって転機になった出来事は何ですか |
| 深掘り | そのとき、先輩や上司はどう関わってくれましたか | 導入してから、業務の流れはどう変わりましたか | そのとき、社員にどんな言葉をかけましたか |
| 気持ち | 仕事の中で、やりがいを感じるのはどんな瞬間ですか | 社内のメンバーからはどんな声がありましたか | 経営をしていて、一番うれしかったのはどんな場面ですか |
| これから | これから挑戦したいことは何ですか | 今後、どんな使い方を考えていますか | 5年後、10年後にどんな会社になっていたいですか |
| メッセージ | 応募を考えている方に一言お願いします | 導入を検討している方に伝えたいことはありますか | お客様(または未来の社員)へのメッセージをお願いします |
目的ごとのコツ
- 採用:見る人が知りたいのは、入社後の自分の姿です。仕事の具体的な場面と、一緒に働く人とのやりとりを中心に聞くと、採用動画の構成で大切にしたい「仕事の中身」と「人」が自然に集まります。
- お客様の声:導入前の困りごとから聞くと、見る人が自分と重ねやすくなります。社名や役職を出してよいか、公開する場所はどこかを、撮影前に先方と確認しておきます。
- 社長メッセージ:理念を言葉で説明してもらうより、その理念が生まれた出来事を聞くほうが伝わります。ほかの出演者より質問の数をしぼり、一つの答えをじっくり聞く時間をとります。
質問は事前に渡す? 編集を見据えた答え方のお願い
事前に渡すかどうか
質問を事前に渡すかどうかは、よく迷うところです。それぞれの良さと気をつけたい点を整理します。
| 事前に渡す | 当日まで渡さない | |
|---|---|---|
| 良いところ | 話す内容を思い出す時間がとれ、具体的なエピソードが出やすい。出演者が安心できる | 言葉が新鮮で、自然な表情や言い回しになりやすい |
| 気をつけたい点 | 答えを原稿にして暗記すると、読み上げているような話し方になる | 準備がないぶん、答えが短く浅くなりやすい |
現実的なのは、質問は事前に渡し、答えの原稿は作らないようにお願いする方法です。「この質問について、思い出せるエピソードを一つ二つ、頭に浮かべておいてください」と伝えておくと、準備の安心感と話し言葉の自然さを両立できます。
「質問を含めて答えてもらう」お願い
インタビュー動画では、質問する人の声を編集で消して、出演者の言葉だけでつなぐことがよくあります。このとき、答えが「〇〇です」の一言だと、何の話かわからなくなります。そこで撮影の前に、次のようなお願いをしておきます。
- 質問の言葉を含めて答える:「入社の決め手は?」に「人です」ではなく、「この会社に入社を決めたのは、面接で会った先輩の人柄でした」と答えてもらう
- 「先ほども言いましたが」を避ける:編集で答えの順番が入れ替わることがあるため、一つひとつの答えが単独で通じるようにする
- 社内の略語や専門用語は言い換える:社外の人が見ても意味が通じる言葉で話してもらう
- 言い直しは最初から:言葉に詰まったら、文の途中からではなく、文の頭から言い直してもらうと編集でつなぎやすい
これらは、答えを一問一答で撮っておく準備にもなります。同じ素材からSNS用の短い動画を作る方法は、ショート動画と長尺動画の使い分けで紹介しています。撮影当日までの準備は、撮影当日までに準備しておくべき5つのこともあわせてご覧ください。

アイフィルムでのインタビュー動画づくり
アイフィルムでは、ヒアリングで動画の目的、見てほしい相手、使う場所を伺い、構成をご提案しています。初回のヒアリング、お見積り、企画構成案の作成は無料です。撮影にはご担当者様にも同行していただき、演出やイメージにずれがないかを確認しながら進めます。
これまでに、株式会社橋立様の企業紹介動画や株式会社エスアール様の会社紹介動画、糸魚川市観光協会様の漁師密着動画などを制作してきました。演出や制作の詳細はプロモーション動画、ほかの作品は制作実績をご覧ください。話してもらう人がまだ決まっていなくても、お問い合わせいただければ、動画の目的から一緒に整理します。
よくある質問
Q. 質問は自分たちで用意する必要がありますか?
制作会社に任せることができます。目的・見てほしい人・使う場所を伝えていただければ、構成案の中で質問の内容も一緒に整理します。社内で「必ず触れてほしい話題」があれば、事前にお知らせください。
Q. 出演者が話すのが苦手で、答えが短くなりそうです。
答えが決まっている質問から始め、「たとえば?」「そのときは?」と重ねて聞くことで、少しずつ話が広がります。事前に質問を渡して、エピソードを思い出しておいてもらうと話しやすくなります。顔を出さずに手元や仕事中の様子を中心に構成する方法もあります。
Q. 複数の社員に同じ質問をしてもよいですか?
問題ありません。同じ質問への答えを並べると、人によって感じ方が違うことが伝わり、職場の多様さを見せられます。ただ、全員に同じ質問だけをすると似た答えが続くこともあるため、一人ひとりの担当や経歴に合わせた質問を1〜2問加えておきます。
Q. 撮影中に、用意していない質問をしてもよいですか?
かまいません。答えの中に気になる言葉が出てきたら、その場で「それはどういうことですか」と聞き返すと、用意した質問からは出てこない本音につながることがあります。質問リストは順番どおりに読み上げるものではなく、話の流れを支える地図と考えてください。


