
合同会社アイフィルムの小池です。
会社紹介の動画や研修動画にナレーションを入れることになり、原稿を自分たちで用意することになった。そんなとき、パンフレットやWebサイトの文章をそのまま原稿にすると、収録の段階で「時間に収まらない」「耳で聞くと意味がわかりにくい」ということが起こりがちです。
ナレーションは、目で読む文章ではなく、耳で聞いて一度で理解してもらう文章です。
「読む文章」と「聞く文章」の違い
目で読む文章は、わからなければ読み返せます。漢字を見れば意味がわかり、段落や見出しで全体の構成もつかめます。耳で聞く文章は流れていくので、聞き逃した部分は戻れません。
| 読む文章(パンフレット・Webなど) | 聞く文章(ナレーション) | |
|---|---|---|
| 理解のしかた | 自分のペースで読み、読み返せる | 話す速さで流れ、聞き返せない |
| 漢字の助け | 字の形で意味がわかる | 音だけで判断する |
| 一文の長さ | 長めでも読める | 短いほうが頭に残る |
| 構成のつかみ方 | 見出しや段落で全体が見える | 話の順番がすべて |
| 数字・固有名詞 | 正確な数字を細かく書ける | 細かい数字は覚えにくい |
たとえば「当社は、創業以来培ってきた高度な加工技術と、地域に根ざしたきめ細やかな対応力を強みとし、幅広い業種のお客様にご利用いただいております。」という文は、読めば理解できますが、耳で聞くと情報が多くて最後まで追いきれません。
聞く文章にすると、次のようになります。
私たちの強みは、二つあります。一つ目は、創業から磨いてきた加工の技術。二つ目は、地域に根ざした、きめ細やかな対応です。
最初に「二つあります」と予告し、一文を短く区切るだけで、ずっと聞きやすくなります。
1分あたりの文字数の目安
ナレーション原稿の分量は、一般に「1分あたり300字前後」がひとつの目安と言われます。ただ、読む速さはナレーターや演出によって変わります。落ち着いた雰囲気の映像や、専門的な内容をじっくり伝えたい研修動画では、もう少し少なめにしたほうが聞きやすくなります。反対に、テンポの良いCMでは速めに読むこともあります。
1分300字前後で計算すると、尺ごとの文字数はおおよそ次のとおりです。
| 尺 | 文字数の目安(1分300字前後で計算) | 主な用途 |
|---|---|---|
| 15秒 | 約75字まで | CM、SNS広告 |
| 30秒 | 約150字まで | CM、展示会のループ映像 |
| 1分 | 約300字まで | 商品紹介、イベント告知 |
| 3分 | 約900字まで | 会社紹介、サービス説明 |
| 5分 | 約1,500字まで | 研修動画、施設案内 |
「間」とナレーションのない時間も計算に入れる
上の表は、ずっと話し続けた場合の数字です。実際の映像には、タイトルが出る時間、景色を見せる時間、BGMだけで余韻を残す時間があります。たとえば3分の映像でも、ナレーションが入るのが2分程度なら、原稿は約600字が目安になります。
声に出して計るのがいちばん確実
原稿ができたら、実際に声に出してストップウォッチで計ってみてください。ナレーターのように滑らかには読めなくても、「明らかに収まらない」かどうかはわかります。収まらない場合は、早口で読んでもらうのではなく、文章を削るのが基本です。
文字数と料金の関係は、ナレーション収録の料金の仕組みで紹介しています。
聞き取りやすい原稿の書き方
一文を短く、一つの文に一つの情報
「〜し、〜であり、〜のため」と続く長い文は、聞いている途中で主語が何だったかわからなくなります。一つの文には一つの情報だけを入れ、句点(。)で区切ります。結論や大事な言葉は、文の前のほうに置くと伝わりやすくなります。
同音異義語は言い換える
耳で聞くと、同じ音で意味が違う言葉は区別がつきにくくなります。
| 同じ音の言葉 | 言い換えの例 |
|---|---|
| 市立/私立(しりつ) | 「いちりつ」「わたくしりつ」と読む、または「市の」「私立の」と言い換える |
| 科学/化学(かがく) | 化学を「ばけがく」と読む、または「化学製品の」など前後で補う |
| 全面/前面(ぜんめん) | 「すべて」「正面」と言い換える |
| 工業/鉱業(こうぎょう) | 「ものづくり」「鉱山の」など内容がわかる言葉にする |
漢字を見れば一目でわかる言葉ほど、原稿では見落としがちです。書き終えたら、漢字を見ずに耳だけで聞いたつもりで読み直してみてください。
数字は丸めて、単位をはっきり
「1,234,567人」のような細かい数字は、耳で聞いて覚えるのは難しいものです。正確さが必要な数字はテロップで見せ、ナレーションでは「約120万人」のように丸めると伝わりやすくなります。
数字には読み方が複数あるものもあります。「1日」は「ついたち」と「いちにち」、「10分」は「じゅっぷん」と「じっぷん」など、どちらで読むかを決めて原稿に書いておきます。
固有名詞には必ずふりがなを
社名、商品名、人名、地名は、ナレーターが初めて目にする言葉です。たとえば新潟県の「糸魚川(いといがわ)」のように、地元の人には当たり前でも、初めての人には読めない地名はたくさんあります。社内での呼び方と正式な読みが違う場合は、どちらで読むかも決めておきます。
略語やカタカナ語は最初に説明する
「DX」「KPI」などの略語や、業界の専門用語は、聞く人が知らなければ意味が伝わりにくくなります。初めて出てくるときに「デジタル化による業務の変革、いわゆるDX」のように説明を添えるか、わかりやすい言葉に言い換えます。
「これ」「それ」は使いすぎない
文章なら前を見返せる「これ」「それ」も、耳で聞くと何を指しているのかわからなくなります。大事なものは、くり返しになっても名前で呼ぶほうが伝わります。
映像とテロップに任せること、声で足すこと
映像の流れに合わせて原稿を区切る
ナレーションは、映像と同時に流れます。原稿を書くときは、映像の場面ごとに区切り、「この場面ではこの言葉」と対応させておくと、編集のときに映像と声がずれにくくなります。台本の形は、映像と音を並べて書く表が便利です。詳しくは企業PR動画の構成テンプレートで紹介しています。
映像に映っていることの説明は、映像に任せましょう。「工場の外観です」と言うより、映像では伝わらない「創業60年、この場所で部品を作り続けています」のような情報を声で足すほうが、ナレーションの価値が生きます。
テロップとの役割分担
ナレーションとテロップ(画面上の文字)は、同じことを両方でくり返すより、役割を分けると見る人の負担が減ります。
| 伝えたいこと | ナレーション | テロップ |
|---|---|---|
| 話の流れ、雰囲気 | 担当する | 必要に応じて要点だけ |
| 正確な数字、日付 | 丸めた数字で伝える | 正確な数字を見せる |
| 社名・人名・肩書き | 読みで伝える | 漢字表記を見せる |
| 問い合わせ先、URL | 「詳しくはWebサイトで」程度 | 正確な表記を見せる |
| 音を出さずに見る場面 | ― | 内容がわかる要点を見せる |
展示会のブースやSNSなど、音を出さずに見られる場面が多い動画では、テロップの比重を高めにします。見やすいテロップの作り方はテロップデザインの記事をご覧ください。

読み方の指定と収録前のチェック
ルビ・数字・間の書き方
原稿には、読み方の指定を書き込んでおくと、収録が早く進みます。書き方は自由ですが、たとえば次のようなルールを決めておくとわかりやすくなります。
| 指定したいこと | 書き方の例 |
|---|---|
| 読み方(ルビ) | 漢字のあとに( )でふりがな:糸魚川(いといがわ) |
| 数字の読み | 「10分(じゅっぷん)」のように読みを添える |
| 区切り・間 | 少し間をあけたい場所に「/」、長めの間は「//」 |
| 強調したい言葉 | 下線や太字で示し、余白に「強調」とメモ |
| 読まない部分 | 映像の説明などは( )書きで「※読まない」と明記 |
アクセントは音声や辞典で確認する
社名や商品名は、アクセント(音の上がり下がり)によって印象が変わります。社内で決まった言い方がある場合は、担当者が読み上げた音声を録音して渡しておくと確実です。
一般的な言葉のアクセントは、NHK放送文化研究所が編集した『NHK日本語発音アクセント新辞典』(NHK出版、2016年)のような辞典で確かめられます。この辞典では、音の下がり目を「\」で示す表記が使われています。
読みの確認は収録前に済ませる
収録当日に読み方を議論すると、時間がかかります。固有名詞や専門用語の読みは、原稿の確定と同時にまとめて確認を済ませておきます。
収録前のチェックリスト
原稿を確定する前に、次の項目を確認します。
| チェック項目 | 確認すること |
|---|---|
| 尺と文字数 | 声に出して計り、映像の長さに収まるか |
| 一文の長さ | 一つの文に一つの情報になっているか |
| 同音異義語 | 耳だけで聞いても意味がわかるか |
| 数字 | 細かい数字は丸めたか、読み方を決めたか |
| 固有名詞 | 社名・人名・地名にふりがなを付けたか |
| 略語・専門用語 | 初めて出るところで説明しているか |
| テロップとの分担 | 同じ内容のくり返しになっていないか |
| 読みの指定 | ルビ・間・強調の書き方がそろっているか |
| 社内の確認 | 内容と表現について、決める人の確認が済んでいるか |
| 映像との対応 | 場面ごとに、どの原稿を読むかがわかるか |
最後の「社内の確認」は必ず済ませてください。収録後に原稿を変えると、録り直しが必要になることがあります。
よくある質問
Q. 原稿がまだ固まっていなくても相談できますか?
はい。アイフィルムでは、ナレーション原稿が未確定の場合、台本作成のお手伝いもしています。専門用語の言い換えや、読みやすい文章へのリライトも行います。
Q. パンフレットの文章をそのまま原稿にしてもよいですか?
内容の材料としては役立ちますが、目で読む文章は一文が長く、漢字に頼った表現が多いため、そのままでは聞き取りにくいことがあります。一文を短くし、同音異義語や数字を見直してから原稿にしてください。
Q. 原稿ができる前に、費用の目安を知ることはできますか?
正式なお見積りは原稿を拝見したうえで算出しますが、「○分程度の動画用ナレーション」といったご相談でも概算をお出しできます。料金の考え方はナレーション収録の料金の仕組みをご覧ください。
Q. 外国語のナレーション原稿も同じように作ればよいですか?
聞いてわかる文章にするという考え方は同じですが、言語によって同じ内容でも長さが変わるため、尺に合わせた調整が必要です。詳しくは多言語ナレーションの記事で紹介しています。
アイフィルムでの対応
アイフィルムでは、提携しているナレーターの中から、ご希望の声のイメージに合う方をサンプル音声でご提案し、防音・吸音設備の整った自社録音スタジオで収録しています。収録には経験のあるエンジニアが立ち会い、収録後は不要な息遣いやノイズを除去して整音します。原稿が固まっていない段階でも、台本づくりのお手伝いや、専門用語の言い換え、読みやすい文章へのリライトをご相談いただけます。
企業VPや製品紹介動画、CM、Eラーニング・研修教材、電話応答メッセージや館内アナウンスなど、用途に合わせて対応しています。詳しくはナレーションのページをご覧ください。動画に合わせた音楽づくりはオリジナルソング制作の依頼ガイドでも紹介しています。原稿が白紙の段階でも、お問い合わせいただければ台本づくりから一緒に進めます。


