
同じ「地域の魅力を伝える動画」でも、発注するのが自治体か、観光協会か、地域おこし協力隊か、商工会かで、お金の出どころや手続き、決めておくべきことが変わります。
移住PRや観光PR、特産品の紹介など、地域おこしに関わる動画を発注する立場は一つではありません。「誰が、どんな形で発注するか」のパターンごとに、動画だけを委託する場合とプロモーション一式の場合の違い、国の交付金や協力隊の制度で押さえておきたいこと、目的別に決めておくことをまとめました。
地域おこしの動画は「誰が発注するか」で進め方が変わる
まずは全体像です。発注する主体ごとに、よくある目的と発注の形を並べると、次のようになります。
| 発注する主体 | よくある目的 | 発注の形の例 | 手続きで確認したいこと |
|---|---|---|---|
| 自治体(移住定住・観光・企画の担当課など) | 移住定住PR、観光PR、シティプロモーション | 入札、プロポーザル、見積合わせ、プロモーション業務一式の委託 | 契約方式、仕様書、年度内の納期 |
| 観光協会・DMO | 観光PR、イベント告知、観光客向けの案内 | 団体の規程に沿った見積比較・委託、自治体から受けた事業の一部 | 団体の戦略との関係、素材の共有範囲 |
| 地域おこし協力隊 | 特産品PR、活動の発信、地域の暮らしの紹介 | 受入自治体の手続きに沿った発注、隊員自身の撮影と外注の組み合わせ | 契約の名義、任期後の素材の引き継ぎ |
| 商工会・まちづくり団体 | 特産品PR、商店街やイベントのPR、イベント記録 | 団体としての見積比較・発注、補助金を使った事業の中での発注 | 補助金の要綱で決まった手順や書類 |
どの主体にも共通するのは、動画が、移住相談、観光客の誘致、特産品の販売など、もっと大きな取り組みの一部として作られるという点です。そのため、動画の中身と同じくらい、取り組み全体の中で動画が何を担うのかを、最初に決めておく必要があります。

自治体が発注する場合:委託の方式と「一括委託」
契約の方式は案件ごとに決まる
自治体が動画制作を外部に委託するときは、一般競争入札、プロポーザル(企画提案で事業者を選ぶ方式)、見積合わせ(複数社から見積もりを取って比べる方式)などから、案件に合った方式が選ばれます。移住PRや観光PRのように企画の良し悪しが成果を左右する動画では、企画提案の内容で選ぶプロポーザルが使われることもあります。たとえば千葉市の「移住プロモーション動画制作・広告業務委託」は、公募型プロポーザル方式で募集されていました。方式ごとの違いは「プロポーザル方式と一般競争入札の違い」で詳しく解説しています。
動画だけを頼むか、プロモーション一式の中で頼むか
自治体の移住PRでは、動画だけを単独で委託する形のほかに、プロモーション全体をまとめて委託し、その中で動画などの制作物を作る形もあります。
たとえば新潟県見附市の「令和8年度見附市移住促進業務委託仕様書」では、業務の中に次のような内容がまとめて含まれていました。
- プロモーションの企画設計(ターゲット・訴求方針の整理、媒体の選定)
- プロモーションクリエイティブの制作(制作会社・広告出稿への発注費も業務内に含む)
- 広告配信や市公式SNSの運用、アクセス分析などの効果検証
- 移住マッチングサイトの運用、移住相談の窓口、移住ツアーの開催
- 相談件数、移住ツアー件数、移住決定件数などのKPI(成果を測る指標)の管理
委託料は8,160,000円(消費税及び地方消費税を含む)以内、委託期間は契約締結日から令和9年3月31日までとされていました。このように一式で委託される場合、動画を作る制作会社は、業務全体を受けた事業者から発注を受ける立場になることもあります。発注する側にとっては、動画の目的がKPIと直接つながりやすいのが、一式で委託する形の良いところです。
国の交付金を使う事業では「効果の検証」までがセット
地方創生に関わる国の交付金は、名称が変わってきています。内閣府の資料によると、令和6年度補正予算で「新しい地方経済・生活環境創生交付金」が新設され、令和7年度補正予算で「地域未来交付金」が創設されました。資料の予算の推移には、以前の「デジタル田園都市国家構想交付金」なども並べて示されています。ネットや古い資料で見かける制度名は、今の名称と違うことがあります。
地域未来交付金は、地方公共団体の自主性と創意工夫に基づく地域独自の取り組みを後押しする交付金です。内閣府の資料では、このうち「地域未来推進型」について、ソフト事業(施設整備以外の取り組み)の補助率は1/2とされています。KPI設定の適切性などが評価され、事業の進捗状況・効果測定を行い、効果検証と評価結果・改善方策を公表することとされています。交付金を使う事業の中で動画を作る場合は、「何を数えれば成果がわかるか」を企画の段階で決め、視聴データなどを報告に使える形で残しておきます。
観光協会・協力隊・商工会が発注する場合
観光協会・DMO
観光庁は、観光地域づくり法人(DMO)を「観光地域づくりの司令塔」と位置づけています。役割として、データの継続的な収集・分析、観光地経営の戦略づくりと進捗管理、多様な関係者との合意形成などが挙げられています。登録制度には、広域連携DMO・都道府県DMO・地域DMOの3つの区分があります。
DMOや観光協会からの動画は、観光の戦略の中の施策の一つとして作られます。そのため、発注前に次のことを決めておくと、企画がぶれにくくなります。
- 戦略で決めているターゲット(地域・年代・国籍など)と、動画で伝える内容の優先順位
- 使う媒体(公式サイト、SNS、観光案内所のモニター、商談会など)と、媒体ごとの長さ
- 撮影した素材を、会員の事業者や自治体と共有するかどうか
アイフィルムでは、新潟県糸魚川市観光協会様からのご依頼で「漁師密着動画」を制作しています。観光の動画は景色だけでなく、地域で働く人の姿を通して魅力を伝えることもできます。
地域おこし協力隊
総務省によると、地域おこし協力隊は、都市地域から過疎地域などに住民票を移して生活の拠点を移した人を、地方公共団体が隊員として委嘱する制度です。隊員は、地域ブランドや地場産品の開発・PR、農林水産業への従事、住民の生活支援などを行いながら、地域への定住・定着を目指します。任期はおおむね1年以上3年以下で、令和8年度からは最長5年とする特例もあります。令和6年度の隊員数は7,910人、受入自治体数は1,176でした。
協力隊の活動経費は国の特別交付税措置の対象で、令和8年度は隊員1人あたり上限550万円(報償費等350万円、その他の活動経費200万円)とされています。
協力隊が関わる動画では、隊員自身がSNSなどで日々の発信を担い、要所の動画を制作会社と組んで作る形が考えられます。発注の前に決めておきたいのは、次の3つです。
- 契約と支払いの名義:隊員個人か、受入自治体か。経費の扱いや発注の手続きは受入自治体の規程や予算によるため、担当課と事前に確認します。
- 任期後の素材とアカウント:撮影素材やSNSアカウントを、任期が終わったあと誰が持ち、使い続けるか。
- 隊員が自分で更新できる形:テロップのデザインや撮影素材を納品してもらい、隊員が短い動画を作り続けられるようにするか。
商工会・まちづくり団体
商工会や商店街、まちづくり団体からの動画は、特産品や商店街のPR、地域のイベントの告知や記録が中心です。補助金や自治体からの委託費を使う場合は、発注や支払いの時期、そろえる見積書の数などが要綱で決まっていることがあります。制作会社に声をかける前に、要綱を確認しておくと手戻りを防げます。
イベントの記録では、全編を記録して残すのか、数分のダイジェストにするのか、当日ライブ配信するのかで、必要な人数や機材が変わります。記録撮影の進め方は「式典・周年行事・研修の記録撮影」で紹介しています。
移住・観光・特産品・イベント記録で決めておくこと
発注の主体が違っても、動画の目的ごとに決めておくべきことは共通しています。
| 目的 | 主に見てほしい人 | 決めておくこと | 成果を見る数字の例 |
|---|---|---|---|
| 移住定住PR | 県外で移住を考えている人 | 見せたい暮らしの場面、相談窓口や専用ページへの導線、出演者の同意 | 移住相談の件数、専用ページの閲覧数 |
| 観光PR | 県外・海外の旅行者 | 見せたい季節、字幕や外国語の要否、媒体ごとの長さ | 視聴回数、観光サイトへのアクセス |
| 特産品PR | 買ってくれる人、取引先 | 販売先(通販・店頭・商談会)、生産者の出演、使う期間 | 通販ページへのアクセス、問い合わせの件数 |
| イベント記録 | 参加者、関係者、来年の来場者 | 全編記録・ダイジェスト・ライブ配信のどれにするか、報告書での使い方 | 来年の来場者数、報告書や広報での活用 |
あわせて、主体をまたいで素材を使う予定があるなら、利用範囲(媒体・期間・地域)を契約で決めておきます。自治体が作った動画の素材を観光協会や協力隊も使いたい、というように、あとから使い道が広がることがあるからです。字幕や話し方など伝え方の工夫は「自治体PR動画の作り方」、仕様書と予算の考え方は「動画制作の仕様書の書き方と予算の考え方」で解説しています。
よくある質問
Q. 地域おこし協力隊の活動費で、動画制作を外注できますか?
経費の使い方や発注の手続きは、受入自治体の規程や予算によって決まります。まずは受入自治体の担当課にご確認ください。制作会社には、自治体の書式での見積書が必要かどうかもあわせてお伝えいただくと、手続きが早く進みます。
Q. 交付金を使う事業の動画も依頼できますか?
ご相談ください。地域未来交付金の地域未来推進型では効果の検証が求められているため、成果を測る数字を企画の段階で決めておきましょう。視聴回数などのデータを報告に使いたい場合は、最初にお知らせください。
Q. 小さな団体の、短い動画1本でも相談できますか?
はい、ご予算内でできる内容をご提案します。アイフィルムのSNS動画では、既存の素材や写真を使った編集なら1本15,000円から制作できます。
アイフィルムでの地域の動画制作
アイフィルムは新潟県糸魚川市の本社と新潟市の新潟支社を拠点に、地域の動画を企画・撮影・編集から音楽・ナレーションまで通して制作しています。新潟県内の自治体の映像制作・イベント・音響などの案件には、入札やプロポーザルで参加しています。学校や自治体の書式での見積書の作成にも対応しています。
地域に関わる動画では、これまでに次のような作品を制作してきました。
- 新潟県糸魚川市 様「第5回新潟ふるさとCM大賞『ええねか、いといがわ』」
- 新潟県糸魚川市 様「美山プロジェクト紹介動画」
- 新潟県糸魚川市 様「フォッサマグナミュージアムイベント告知動画」
- 新潟県糸魚川市観光協会 様「漁師密着動画」
作品は制作実績でご覧いただけます。新潟県内の入札情報をまとめて確認できる「新潟入札ウォッチャー」も開発・運営しています。発注の形が決まる前のご相談も、お問い合わせで受け付けています。


