
式典の会場で、客席の後ろからカメラマンがステージを狙う。その横では録音担当がヘッドホンで声を確かめ、音響卓ではPAオペレーターがマイクの音量を整えている。映像制作やイベントの現場では、画(え)を担当する人と音を担当する人が、それぞれ別の仕事をしています。
見積書や制作体制の説明に「カメラマン」「編集」「録音」「PA」「MA」と並んでいても、それぞれ何をする人なのかはわかりにくいものです。役割がわかると、見積書の読み方や、依頼のときに伝えるべきことも見えてきます。
画を担当する人、音を担当する人
映像制作やイベントの現場にかかわる主な職種は次のとおりです。会社や案件の規模によっては、一人が複数の役割を兼ねることもあります。
| 担当 | 職種 | 主な仕事 |
|---|---|---|
| 全体 | ディレクター | 企画・構成を考え、撮影や編集の方向性を決めて全体をまとめる |
| 映像 | カメラマン | 構図、明るさ、ピントを決めて撮影する。照明を兼ねることもある |
| 映像 | 編集 | 撮った映像をつなぎ、テロップや色を整えて一本の作品にする |
| 音 | 録音(音声) | 撮影現場で、作品に使う声や音をマイクで録る |
| 音 | PAオペレーター | イベント会場で、マイクやBGMの音をスピーカーから客席に届け、音量を調整する |
| 音 | MA | 編集が終わった映像に、ナレーション・BGM・効果音を入れ、音全体を仕上げる |
音の担当は3つに分かれていますが、違いは「その音を誰に届けるか」で考えるとわかりやすくなります。録音は「あとで映像を見る人」のために音を残す仕事、PAは「いま会場にいる人」に音を届ける仕事、MAは「完成した映像を見る人」のために音を仕上げる仕事です。
同じイベントでも、会場の人に聞かせる音(PA)と、記録映像や配信に乗せる音(録音)では、求められるものが違います。たとえば会場では、拍手や笑い声は自然に聞こえますが、記録映像ではマイクの声と会場の空気感のバランスを別に整える必要があります。

撮影前と撮影当日:それぞれの仕事
撮影前:同じ下見でも見ているところが違う
本番の出来は、撮影前の準備で大きく変わります。映像の担当と音の担当は、同じ下見(ロケハン)でも見ているところが違います。
| 準備すること | 映像の担当(カメラマン・編集) | 音の担当(録音・PA・MA) |
|---|---|---|
| 下見 | 光の入り方、背景、カメラを置ける場所 | 空調や換気扇の音、道路や機械の音、部屋の響き |
| 機材の計画 | カメラの台数、レンズ、照明、三脚 | マイクの種類と本数、ワイヤレスの台数、スピーカーの配置 |
| 出演者の確認 | 立ち位置、動き、服装の色や柄 | 話す人の人数、ピンマイクを付ける位置、衣装の素材 |
| 仕上げの方針 | 映像の長さ、テロップの量、色の雰囲気 | ナレーションの有無、BGMの方針、公開する媒体 |
たとえば服装ひとつでも、カメラマンは「細かい柄が画面でちらつかないか」を、録音担当は「ピンマイク(服に付ける小さなマイク)が布にこすれて音が出ないか」を気にします。どちらも、撮影前にわかっていれば対策できることです。
イベントでは、PAオペレーターがプログラムを見て、マイクが何本必要か、BGMや映像の音をどのタイミングで出すかを準備します。記録撮影や配信がある場合は、PAのミキサー(音量を調整する機械)から記録用・配信用の音をどう分けるかも、この段階で決めておきます。マイクの種類と選び方はマイクの種類と使い分けで、ワイヤレスマイクの準備はワイヤレスマイクが途切れる・混信する原因と対策で紹介しています。
当日のカメラマン:画面の中のすべて
カメラマンは、構図、明るさ、ピント、色に加えて、画面に余計なものが写り込んでいないかを見ています。イベントの記録では、進行表を見ながら、次に誰が話すのか、どこを撮るべきかを先回りして動きます。
当日の録音担当:ヘッドホンで「使える音か」を判断する
録音担当は、ヘッドホンで常に音を聞きながら、声の大きさが適切か、雑音が入っていないかを確かめています。撮影中に車の音や物音が入ったときに「今のテイクは音がNGです」と伝えられるのは、音を専門に聞いている人がいるからです。
その場所の「無音の状態」の音(部屋の空気の音)を数十秒録っておくこともあります。編集で声と声の間をつなぐときに、この音を使うと不自然な途切れが目立ちにくくなります。
カメラと別の録音機で音を録った場合は、編集で映像と音をぴったり合わせる作業が必要です。放送の分野の国際的な勧告(ITU-R BT.1359)では、音が映像より約45ミリ秒早い、または約125ミリ秒遅いと、ずれに気づかれ始めるとされています。口の動きと声がずれると、見ていて落ち着きません。録音担当とカメラマンは撮影の前に、映像と音を合わせるための合図や設定を確認しておきます。
当日のPAオペレーター:会場の聞こえ方を整える
イベントのPAオペレーターは、話す人が変わるたびにマイクの音量を整え、ハウリング(スピーカーの音をマイクが拾って「キーン」と鳴る現象)が起きないように調整します。BGMやオープニング映像の音を、進行に合わせて出し入れするのもPAの仕事です。
記録撮影や配信と一緒に行う場合は、PAから届く音の質が、そのまま記録映像や配信の音の質になります。会場の音響と記録用の音のつなぎ方は、式典・記念イベントの記録撮影で詳しく紹介しています。

編集後:映像を仕上げる人と、音を仕上げる人
撮影が終わると、映像の担当は編集へ、音の担当はMAへと仕事が移ります。
| 工程 | 主な担当 | やること |
|---|---|---|
| 仮編集 | 編集 | 全体の流れを決めるために、大まかに映像をつなぐ |
| 本編集 | 編集 | カットの細かい調整、テロップ、色の調整 |
| ナレーション収録 | ナレーター、録音エンジニア | 完成に近い映像に合わせて、原稿を読み上げて録る |
| MA | MAエンジニア | 声・BGM・効果音の音量バランス、雑音の除去、最終の音量の調整 |
| 試写・納品 | 全員 | 発注者と一緒に映像と音を確認し、修正して納品する |
MAでやっていること
MAでは、ばらばらに録った声、ナレーション、BGM、効果音を一つにまとめます。たとえば、インタビューの声とBGMが重なる場面ではBGMを少し下げ、声がはっきり聞こえるようにします。撮影時に入ってしまった空調の音などを、聞こえにくくなるよう処理するのもMAの仕事です。
もう一つは、最終的な音量(ラウドネス)を、公開する媒体に合わせることです。テレビCMの場合、日本広告業協会・日本アド・コンテンツ制作社連盟・日本ポストプロダクション協会の3団体が示した遵守文書で、ターゲットラウドネス値「-24.0LKFS」を上限として制作することが定められ、2012年10月1日以降に放送されるCM素材に適用されています。媒体ごとの決まりを知っている人が仕上げることで、納品の直前に音の大きさで慌てずに済みます。Web向けの音量の考え方は、ミックス・マスタリングとは?の「ラウドネス正規化」の項目も参考になります。
映像と音の担当がそろうと、何が良くなるか
音が良いと、映像まで良く見える
音の良し悪しは、映像の印象そのものを左右します。米国の研究者 Storms 氏と Zyda 氏が学術誌『Presence』(2000年)に発表した研究では、108人の参加者を対象に、画面に映す画像と音の品質を変えて評価してもらう実験を行いました。その結果、高品質な画像に高品質な音を組み合わせると、画像だけを見たときより画像の品質が高く評価されたと報告されています。静止画と音楽を組み合わせた実験ですが、「音を良くすると、画まで良く見える」という考え方は、映像制作の現場の実感とも重なります。
撮り直しを防げる
撮影現場で音を専門に聞いている人がいると、雑音が入ったテイクをその場で撮り直せます。編集の段階で音の問題に気づいても、もう一度同じ場所・同じ出演者で撮影するのは簡単ではありません。現場で判断できれば、時間も費用も抑えられます。
会場・記録・配信の音を一つの計画で組める
イベントでは、会場のスピーカーの音、記録映像の音、配信の音と、音の届け先が複数あります。PAと撮影・配信の担当が最初から一緒に計画すると、どこから音を分けるか、予備の録音をどうするかを、無理なく決められます。
映像と音の方向性がそろう
編集の担当とMAの担当が、映像のテンポや雰囲気を共有していると、BGMの入りや効果音のタイミングが映像とかみ合います。発注する側も、映像と音の修正をまとめて相談できます。
最初の打ち合わせで共有したい6つの情報
映像と音の担当が、それぞれ準備を進められるように、次の情報を最初の打ち合わせで共有してください。
| 伝えること | 映像の担当に役立つこと | 音の担当に役立つこと |
|---|---|---|
| 映像の使い道・公開先 | 画面の縦横比、長さ、テロップの量 | テレビCMかWebか、会場での上映かによる音量の決まり |
| 撮影場所・会場 | カメラの置き場所、照明の要否 | 空調や外の音、会場の音響設備の有無と担当者の連絡先 |
| 話す人・出演者 | 立ち位置と動き | 人数、ピンマイクやワイヤレスマイクの本数 |
| 当日のプログラム | 撮るべき場面の順番 | BGMや映像の音を出すタイミング、マイクの持ち替え |
| ナレーション・BGM | 映像の長さとテンポ | ナレーターの声のイメージ、オリジナル曲か既存の音源か |
| 確認の方法 | 試写の日程 | MAやナレーション収録への立ち会いの希望 |
全部が決まっていなくても大丈夫です。「話す人が何人くらい」「会場に音響設備があるかどうか」がわかるだけでも、必要な機材や人数の見当がつきます。撮影準備で発注側が用意しておくとよいことは動画撮影の準備、制作全体の流れは動画制作の流れでまとめています。
よくある質問
Q. 小さな撮影でも、録音の担当は必要ですか?
インタビューや社内向けの短い動画など、規模によってはカメラマンが録音を兼ねることもあります。ただ、話す人が多い、屋外で雑音が多い、声の内容が特に大切といった撮影では、録音を専門の担当に任せると仕上がりが安定します。撮影の内容を伺って、体制をご提案します。
Q. 撮影だけ、音響PAだけといった依頼もできますか?
はい。撮影・編集だけ、音響PAだけのご依頼もお受けしています。あとから記録撮影や配信を追加したい場合も、ご相談ください。
Q. ナレーション収録やMAに立ち会えますか?
はい。ナレーションのレコーディングには、ご担当の方の立ち会い(オンライン可)をお願いしています。オンラインの場合はZoomやGoogle Meetを使い、実際の映像を見ながら収録を進めることもできます。
Q. 会場の音響業者さんと、記録撮影の担当が別でも大丈夫ですか?
大丈夫です。事前に会場の音響担当の方と、記録用の音のもらい方を打ち合わせておけば、別々の会社でも連携できます。
アイフィルムでの対応
アイフィルムは映像制作会社として、撮影・編集と音の仕事の両方を手がけています。ナレーターの手配からレコーディング、MA作業までを一貫してお受けしており、ナレーションは東京都新宿区高田馬場にある共同運用スタジオで収録・整音します。楽曲や映像の音声のMIX・マスタリングは、専属のエンジニアが担当します。
イベントでは、PAと記録映像の撮影、スクリーンへのVTR出し、ライブ配信までまとめて担当します。音響PAの当日基本料金は、機材とオペレーター1名込みで1日5万円から(税別)、当日のスタッフ追加は1名・1日2万円(税別)です。録音用の機材として、ショットガンマイク(SENNHEISER MKE600)や、ワイヤレスマイク(SONY URX-P41D)、16入力のオーディオインターフェース(TASCAM US-16x08)も用意しています。
料金と機材は音響PA、ナレーションはナレーション、イベント全体はイベント運営・音響のページをご覧ください。所有機材の一覧は機材に、音響・映像・進行をまとめて頼む場合の違いはイベントの音響・映像・進行をまとめて頼むメリットにまとめています。撮影だけか音だけか、両方まとめるか迷ったら、お問い合わせからご相談ください。


