
合同会社アイフィルムの小池です。
地域のPR動画を考えるとき、「うちの町には何もない」と感じてしまうことがあるかもしれません。けれども、地元の人が見慣れている朝の港や、家庭の味、何気ない言葉づかいが、外から来た人にはとても新鮮に映ることがあります。
そうした魅力を「よそ者目線」で見つけ、映像として切り取るにはどうすればよいか。撮影の現場で何を見てどう撮るかを中心に書いていきます。
「よそ者目線」が地域の魅力を見つける理由
地域づくりの分野では、外から来た人の視点が大切にされてきました。総務省の「地域力創造に関する有識者会議」の最終取りまとめ(素案)では、「外部の人(「よそ者」)と地域の人々の交流が地域の魅力を再発見するきっかけになるのではないか」という論点が示されています。北陸農政局と時事通信社が開いた農村RMO推進フォーラム(令和5年2月)のパネルディスカッションでも、「若者、よそ者、ばか者をどうやってつなぐか」という発言が紹介されています。
環境省の里地里山の専門家紹介ページでは、水俣市役所で水俣再生の仕事に携わった地元学ネットワーク主宰の吉本哲郎さんが、町や村の元気をつくるには、自分たちが「ないものねだりをやめて、あるものを探し、あるものを新しく組み合わせ」ることが重要だと述べています。
撮影の現場でも同じことが言えます。毎日見ている人には「ただの景色」でも、初めて見る人には「わざわざ見に行きたい景色」になることがあります。よそ者目線とは、地域にすでに「あるもの」に気づくための目線です。
見過ごされがちな地域の魅力:5つの入り口
地域の魅力を探すときは、次の5つの入り口から考えると、撮るべきものが見つかりやすくなります。
| 入り口 | 地元では当たり前になりがちなもの | 映像にしたときの見どころ |
|---|---|---|
| 日常の風景 | 朝の通学路、港や畑の作業、商店街の夕方 | その土地の暮らしのリズム |
| 食 | 家庭料理、直売所の野菜、季節の保存食 | 作る手元、湯気、食卓を囲む様子 |
| 方言・言葉 | あいさつ、道具や料理の呼び名 | 話し手の人柄と温かさ |
| 手仕事 | 漁具の手入れ、伝統工芸、農作業の段取り | 熟練した手の動き、道具の音 |
| 季節の行事 | 祭り、地域の清掃、収穫の行事 | 準備から本番までの人の動き |
探すときは、「観光地として有名なもの」より先に、「地元の人が毎日・毎年くり返していること」に目を向けます。くり返されていることには、その土地ならではの理由があり、映像にすると物語が生まれます。
撮影前に「当たり前リスト」を作る
打ち合わせの段階で、地元の担当者の方に、上の5つの入り口ごとに「わざわざ紹介するほどではないと思っているもの」を書き出してもらう方法があります。そのリストを外から来た撮影スタッフが見て、驚いたもの、詳しく知りたいものに印を付けていきます。印が付いたものが、よそ者目線で見た撮影の候補です。リストにすると、地元の方にとっても「自分たちの町にはこんなにあるものがある」と気づくきっかけになります。
取材・ロケハンと体制:外の目と地元の目を組み合わせる
取材では「当たり前」を言葉にしてもらう
地元の方に「この町の魅力は何ですか」と聞くと、多くの場合は有名な観光地の名前が返ってきます。よそ者目線の取材では、もっと具体的な場面を聞きます。
- 「朝起きて最初にすることは何ですか」
- 「外から来た人に驚かれたことはありますか」
- 「子どものころから変わらない景色はどこですか」
- 「この道具(料理)は、ほかの地域では何と呼ばれていると思いますか」
答えの中に「そんなの普通だよ」という言葉が出てきたら、そこに地域の個性が隠れていることがあります。インタビュー全体の組み立て方はインタビュー動画の質問の作り方で詳しく解説しています。
ロケハンは「歩く」「時間を変える」「案内してもらう」
ロケハン(撮影場所の下見)では、車で通り過ぎるより、歩いて回るほうが小さな発見があります。同じ場所でも、朝・昼・夕方で光や人の動きが変わるため、気になった場所には時間を変えて何度か立ってみます。撮影時期の日の出・日の入りの時刻は、国立天文台暦計算室の「こよみの計算」で、市町村名や地図から地点を選んで調べられます。
地元の方に案内をお願いすると、地図には載っていない眺めのよい場所や、行事の準備が始まる時間など、撮影に役立つ情報が得られます。

外の目線と地元の目線を組み合わせる体制
よそ者目線だけで撮ると、地元の方から見て「それは違う」と感じる映像になることがあります。反対に、地元の目線だけだと、新鮮さが伝わりにくくなります。両方を組み合わせるため、役割を分けておくと進めやすくなります。
| 役割 | 担う人 | 主な仕事 |
|---|---|---|
| 外の目線 | 撮影スタッフ、地域外の協力者 | 新鮮に感じたものを拾い出し、撮る候補を出す |
| 地元の目線 | 地元の案内役、自治体や団体の担当者 | 候補の背景や意味を確かめ、地域の人への橋渡しをする |
| 見る人の目線 | 発注者(自治体・企業・団体) | 誰に何を伝えたいかに照らして、撮るものを選ぶ |
撮影候補を出し合ったら、「外の人が驚いたもの」と「地元の人が誇りに思っているもの」が重なるところから優先して撮ると、地域の方にも外の人にも響く映像になります。
撮り方の具体例:引きと寄り、時間帯、音
引きと寄りをセットで撮る
地域の魅力は、「場所の広がり」と「人の手元」の両方で伝わります。港なら、まず港全体を引きで見せ、次に網を手入れする手元に寄ります。引きだけだと絵はがきのようになり、寄りだけだとどこの話かわからなくなります。同じ場面を引きと寄りの両方で撮っておくと、編集でつなぎやすくなります。空からの引きの映像が必要な場合は、ドローン空撮も選択肢になります。
「くり返し」を待って撮る
漁具の手入れや農作業、料理の手順など、地域の手仕事の多くは同じ動きをくり返します。1回目は全体を見ながら引きで撮り、2回目は手元、3回目は表情というように、くり返しに合わせて撮る位置を変えると、出演者の負担を抑えながら、自然な映像を集められます。演技をお願いするより、普段どおりの作業を見守るように撮るほうが、その土地の空気が伝わります。
時間帯で表情を変える
同じ町並みでも、朝の澄んだ空気、昼の活気、夕方のやわらかい光、夜の灯りと、時間帯で印象が大きく変わります。日の出直後や日の入り前の時間帯は、光が斜めから差して陰影が出るため、風景や建物の立体感が伝わりやすくなります。人の暮らしを撮るなら、作業や行事が実際に行われている時間に合わせて日程を組みます。
音を「主役」として録る
波の音や鳥の声、祭りのお囃子、作業場の道具の音、方言での会話は、その場にいるような感覚を生み、地域の個性を伝えます。映像と別に、その場の音だけを数十秒録っておくと、編集でナレーションや音楽の下に敷くことができます。方言で話す場面には字幕を付けると、地域の言葉の温かさを残しながら、ほかの地域の方にも内容が伝わります。
出演者と撮影場所の許可の取り方
地域の撮影では、住民の方や地域の行事が映ることが多くなります。気持ちよく協力していただくために、許可の取り方を整理しておきます。
| 対象 | 確認先 | 確認しておきたいこと |
|---|---|---|
| 出演する方 | ご本人(未成年の場合は保護者も) | 公開する場所と期間、名前を出すかどうか |
| 祭り・行事 | 主催者や保存会、自治会 | 撮影してよい場面と場所、神事などで控えたい場面 |
| 店舗・工房・私有地 | 所有者・管理者 | 撮影できる範囲と時間、店名や商品を映してよいか |
| 道路・公園・公共施設 | 警察署、公園や施設の管理者 | 道路使用許可や撮影許可の要否、申請の期限 |
| 上空(ドローン) | 国土交通省、土地の管理者 | 飛行の許可・承認の要否、離着陸場所の了解 |
人の顔が映った映像について、個人情報保護委員会のガイドラインでは「本人が判別できる映像情報」が個人情報の例として挙げられています。行事に参加している方や通行人が大きく映る場面では、撮影していることを周りに伝える、顔が映らない画角を選ぶといった配慮をします。
道路や公園などでの撮影許可の具体的な手続きは撮影当日までに準備しておくべき5つのことに、ドローンの飛行許可はドローン空撮の費用相場と飛行許可の仕組みにまとめています。
よくある質問
Q. 地元の人が「何もない」と言う地域でも、PR動画は作れますか?
はい。取材やロケハンで日常の風景や食、手仕事などを一緒に探すところから始めます。地元の方には当たり前のものが、外から見ると魅力になることがあります。
Q. 撮影の前に、地元の方の協力は必要ですか?
案内役や取材先の紹介をお願いできると、撮影が進めやすくなります。行事や店舗の撮影では、地元の方を通じてお願いすると、協力を得やすくなります。
Q. 祭りや行事は、本番だけ撮ればよいですか?
本番に加えて、準備や片付けの様子も撮っておくと、地域の人のつながりが伝わる映像になります。撮影してよい場面は、主催者の方と事前に確認します。
Q. 季節ごとの風景を撮りたい場合は、どうすればよいですか?
撮影を何回かに分けて、季節ごとに日程を組む方法があります。見せたい季節と公開したい時期を伺い、撮影の回数と日程をご提案します。
アイフィルムでの地域の撮影
アイフィルムは糸魚川市に本社を置き、新潟市の新潟支社とともに活動しています。高田馬場の共同運用スタジオも使っています。
制作実績には、新潟県糸魚川市様の第5回新潟ふるさとCM大賞「ええねか、いといがわ」や美山プロジェクト紹介動画、新潟県糸魚川市観光協会様の漁師密着動画などがあります。映像は制作実績のページでご覧いただけます。糸魚川の観光資源を映像で伝える意義は糸魚川の観光を動画で伝えるで紹介しています。
「この地域の魅力を一緒に探してほしい」。その一言から始められます。お問い合わせからどうぞ。


