
小さく、色も透明感も繊細なヒスイの魅力を、写真や動画でどう伝えればよいのでしょうか。ヒスイは撮り方ひとつで印象が大きく変わる被写体です。撮影場所によっては法律で採取が禁じられている区域もあります。
糸魚川の観光資源と、それを映像で伝える意味については糸魚川の観光を動画で伝えるでまとめました。今回はその続きとして、ヒスイそのものを「PRに使える素材」にする実践に絞ります。観光事業者、ヒスイを扱うお店、地元企業の広報担当の方に向けて、糸魚川市に本社を置く映像制作会社として、撮影前の確認から撮り方、広告に使うときの注意までを書きました。
撮る前に押さえておきたい、糸魚川とヒスイの基本
PR素材には、写真や映像と一緒に短い説明文やテロップを添えることが多くあります。そこで使う情報は、公式の資料で確認したものにそろえておけば、誤った説明を広めずに済みます。
| 項目 | 公式情報で確認できること |
|---|---|
| 市の石・国の石・県の石 | 2008年に糸魚川市の石、2016年に日本鉱物科学会により国の石(国石)に選定、2022年に新潟県の石に指定 |
| 小滝川ヒスイ峡 | 1956年(昭和31年)に国の天然記念物に指定 |
| 青海川ヒスイ峡 | 1957年に国の天然記念物に指定 |
| ヒスイ海岸 | ヒスイは山の中のヒスイ峡から川を流れて、海岸に打ち上げられる。糸魚川市押上の海岸は7月下旬〜8月中旬に海水浴場として開設される |
| フォッサマグナミュージアム | 館内は6つの展示エリアに分かれ、「魅惑のヒスイ」をテーマにした展示室がある |
政府広報の記事「日本を代表する石:ひすい」では、2016年9月に一般社団法人日本鉱物科学会がひすいを国石に選んだこと、日本のひすいは糸魚川地域が主要な産地であることが紹介されています。
撮影で特に意識したいのが、ヒスイの色です。糸魚川ジオパークの解説によると、ヒスイはケイ素・アルミニウム・ナトリウムを含む、半透明の白い鉱物「ヒスイ輝石」でできています。緑色がよく知られていますが、糸魚川のヒスイには白、ラベンダー、青、黒など、さまざまな色があります。政府広報の記事でも、緑色のやや透明感をもったひすいが価値ある宝石として知られ、白や薄紫、水色などのものもあると説明されています。緑のほかにも多彩な色があることを目で見て伝えられるのは、写真や映像ならではです。
撮影場所ごとのルールと準備
ヒスイに関わる撮影場所は、ルールがそれぞれ違います。撮影計画を立てる前に、次の点を確認しておきます。
| 撮影場所 | 確認しておきたいこと |
|---|---|
| ヒスイ峡(小滝川・青海川) | 国の天然記念物の指定区域では、ヒスイはもちろん、ほかの岩石・鉱物・化石・動植物の採取も全面的に禁止 |
| ヒスイ海岸 | 糸魚川ジオパークが定める石拾いのルール。夏は海水浴場になる。波が高い日は海に近づきすぎない |
| 河川 | 河川区域内で石を採る場合は、許可が必要なことがある(ヒスイも同様) |
| 博物館・施設・店舗 | 撮影の可否と条件を、施設や管理者に事前に確認 |
ヒスイ峡:天然記念物の区域では「撮るだけ」に
新潟県の案内によると、国の天然記念物に指定されている小滝川硬玉産地と青海川硬玉産地の区域内では、ヒスイだけでなく、ほかの岩石や鉱物、化石、動物、植物の採取も全面的に禁止されています。この区域では、石や渓谷を景色としてそのまま撮るのが基本です。
にいがた観光ナビ(新潟県観光協会)の案内では、小滝川ヒスイ峡は積雪のため冬季は通行できないとされています。糸魚川ジオパークのパンフレットでも、糸魚川ICから小滝川ヒスイ峡までは細い道や急カーブ、急な坂が続くと注意を呼びかけています。撮影は雪のない季節に、移動時間にも余裕を持たせて組みます。
ヒスイ海岸:石拾いのルールを撮影にも当てはめる
糸魚川ジオパークは、海岸での石拾いについて次のようなルールを示しています。
- 手のひらより大きな石は拾わない
- 大量に拾わない
- 保護されている場所や川沿いでは拾わない
- 許可のない商用目的の石拾いは禁止
- いらなくなった石は、拾った海岸に戻す
PR動画で「海岸でヒスイを探す」場面を撮る場合も、このルールに沿って進めます。特に、事業として撮影する場合は「商用目的」にあたるかどうかを意識し、撮影に使った石は元の海岸に戻します。
海岸の撮影では、天候と人出も計画に入れます。にいがた観光ナビの記事では、波が高いときは石拾いに熱中して海に近づきすぎないよう注意を呼びかけています。夏の海水浴シーズンは人が多く、来訪者が映像に写り込みやすくなるため、人の少ない時間帯や季節を選ぶと撮影が進めやすくなります。冬の日本海を撮る場合の機材と安全の備えは、雪の撮影で注意したい機材・バッテリー・安全対策で紹介しています。
施設・店舗:展示品や商品を撮る前に確認を
博物館の展示品や、お店に並ぶヒスイ製品を撮る場合は、撮影してよい範囲、三脚や照明の持ち込み、公開してよい媒体などを、施設や管理者に事前に確認しておきます。展示品を素材としてPRに使う場合は、写真や映像の使い道も伝えておくと、行き違いを防げます。
光・色・大きさ・状態:ヒスイの撮り方
ヒスイは「小さい」「色が繊細」「表面の質感が見えにくい」被写体です。撮影では次の4つを意識します。
| 意識すること | 撮り方の例 | 伝わること |
|---|---|---|
| 光 | 後ろや下から光を当てる透過光と、斜めから当てる光を撮り分ける | 透明感、表面のつや、石の内部の模様 |
| 色 | 撮影時にホワイトバランスをそろえ、仕上げで実物と並べて見比べる | 実物に近い色 |
| 大きさ | 手のひらにのせる、定規と並べる、テロップで寸法を入れる | 実際のサイズ感 |
| 状態 | 乾いた状態の写真を基本にし、濡れた状態は演出として撮り分ける | 実物の見え方と、海岸での表情 |
光:透過光と反射光を撮り分ける
半透明のヒスイは、光を後ろや下から当てると、石の中を光が通り、透明感や内部の模様が見えてきます。斜めからの光は表面のつやや磨きの質感を見せるのに向いています。動画なら、石をゆっくり回したり、ライトの角度を少しずつ変えたりするだけで、写真では伝えにくい表情の変化を見せられます。
色:照明をそろえ、実物と見比べる
光の色が混ざると、ヒスイの緑や薄紫が実物と違って写ります。窓からの自然光と室内灯が混ざる場所は避け、撮影用のライトに光源をそろえます。編集の段階では、モニターに映した色と実物を見比べながら調整し、「実物より鮮やかすぎない」ところで止めます。
大きさ:手と数字で伝える
ヒスイを大きく撮るほど、実際の大きさはわかりにくくなります。手のひらにのせたカットや、定規と並べたカットを1枚入れておくと、見る人が実物を想像しやすくなります。商品の場合は、寸法や重さをテロップや説明文で添えます。
状態:濡れた石の見せ方に注意する
海岸の石は、波に濡れていると色が濃く、つやが出て見えることがあります。海岸の雰囲気を伝えるには魅力的な場面ですが、商品写真では乾いた状態を基本にすると、届いたときの見え方との差が生まれにくくなります。
写真・動画・ドローンで素材をそろえる
Webサイト、SNS、パンフレット、店頭や施設のモニターなど、PRに使う場所は一つではありません。一度の撮影で、使う場所ごとの素材をまとめてそろえておくと手間が省けます。
| 素材 | 主な使い道 | 撮っておきたいカット |
|---|---|---|
| 静止画 | パンフレット、Webサイト、商品ページ | 正面・斜め・裏、手のひらにのせたカット、寸法がわかるカット |
| 寄りの動画 | SNS、商品ページ、店頭モニター | 光を変えながら回す、透過光で内部を見せる |
| 風景の動画 | 紹介動画、観光PR | 波打ち際、石の浜、ヒスイ峡の景色、波の音 |
| ドローン空撮 | 紹介動画の冒頭、パンフレットの見開き | 海岸線の広がり、山から海へのつながり |
SNS向けの縦型動画を作る予定がある場合は、撮影の段階で縦の構図も押さえておきます。縦型ならではの設計は縦型動画の作り方で紹介しています。
ドローン空撮は「場所の物語」を見せる
ヒスイは山の中のヒスイ峡から川を流れて海岸に届きます。この流れを、空からの映像で海岸線や地形とあわせて見せると、「なぜ糸魚川の海岸でヒスイが見つかるのか」が一目で伝わります。
ドローンを飛ばす場所や方法によっては、国の飛行許可・承認が必要です(申請先は地方航空局・空港事務所)。国土交通省は、申請書類を飛行開始予定日の少なくとも10開庁日前(土日・祝日を除く)までに提出し、3〜4週間程度の余裕をもって申請するよう案内しています。撮影日が決まったら早めにご相談ください。制度の詳しい内容はドローン空撮の費用相場と飛行許可の仕組みで解説しています。

事業者がPRに使うときの注意
産地や品質の表示は、裏付けのある内容で
ヒスイ製品の広告では、産地や品質の表示が商品の価値に直結します。消費者庁によると、景品表示法は、商品の品質などを実際のものよりも著しく優良であると示す表示(優良誤認表示)を禁止しています。消費者庁が挙げる例には、「天然ダイヤを使用したネックレスのように表示したが、使われているのはすべて人造ダイヤだった」というものがあります。
景品表示法の「表示」には、チラシやパンフレット、ポスターのほか、映写による広告や、インターネットによる広告も含まれます。写真や動画、そのテロップや説明文も含めて、「糸魚川産」などの産地や品質の表示が、仕入れ先の資料などで裏付けられているかを確認してください。
画像の加工は「実物に近い範囲」で
色の補正やゴミの除去は、見やすくするために必要な作業です。ただし、色を実物より鮮やかにしすぎると、商品の見え方そのものが変わってしまいます。撮影したデータと実物を並べ、関係者で確認してから公開します。
写真・映像の使い道を決めておく
完成した素材を、Webサイト、SNS、印刷物、店頭モニターなど、どこで、どのくらいの期間使うのかを先に決めておくと、撮影の内容や納品の形式も決めやすくなります。アイフィルムでは、制作物の利用範囲(媒体・期間・地域)を契約で取り決めています。
よくある質問
Q. 海岸でヒスイを探す場面を撮影できますか?
糸魚川ジオパークの石拾いのルールに沿って撮影します。許可のない商用目的の石拾いは禁止されているため、撮影の目的を確認したうえで進め方をご提案します。撮影に使った石は、元の海岸に戻します。
Q. ヒスイ峡は冬でも撮影できますか?
小滝川ヒスイ峡は、積雪のため冬季は通行できないと案内されています。ヒスイ峡の景色を使いたい場合は、雪のない季節に撮影日を設けて計画します。
Q. 商品写真と紹介動画を一度の撮影でそろえられますか?
撮影したいカットの一覧を事前に決めておけば、一度の撮影で静止画と動画の両方を押さえる計画を立てられます。使う場所と必要な素材をお知らせいただき、ご相談ください。
Q. ドローンで撮影した素材だけを納品してもらえますか?
はい。空撮した素材をそのまま納品するほか、地上での撮影と組み合わせてPR動画に仕上げることもできます。
糸魚川本社のアイフィルムが撮影します
アイフィルムは糸魚川本社を拠点に、地元の自治体や団体の映像を制作してきました。新潟県糸魚川市様の「フォッサマグナミュージアムイベント告知動画」や「美山プロジェクト紹介動画」、新潟県糸魚川市観光協会様の「漁師密着動画」などは、制作実績でご覧いただけます。
撮影では、SONY α7S III・α7 IV などのカメラと、Godox SL150 などのLEDライトを使い分けます。ドローン空撮は、二等無人航空機操縦士の資格を持ち、国土交通省の飛行許可・承認を取得したパイロットが、操縦担当と安全監視担当の2名体制で担当します。機体は DJI Mavic 3 Pro Cine で、料金は1フライト(約20分程度)あたり3万円台からです(ドローン空撮)。
ヒスイを使ったPR素材づくりや観光PR動画を考えている方は、糸魚川市のエリアページもご覧ください。ご相談はお問い合わせで受け付けています。
参考にした情報
- 日本を代表する石:ひすい(政府広報オンライン Highlighting Japan)
- 糸魚川ユネスコ世界ジオパーク パンフレット(糸魚川ジオパーク協議会)
- Niigata’s Prefectural Stone(糸魚川ジオパーク協議会)
- 河川区域内で石を採取する場合は相談を!(新潟県)
- 小滝川ヒスイ峡(にいがた観光ナビ/新潟県観光協会)
- めざせ!ヒスイマスター!ジオパークの海へ繰り出そう(にいがた観光ナビ/新潟県観光協会)
- フォッサマグナミュージアム(新潟県)
- フォッサマグナミュージアム 公式サイト
- 優良誤認とは(消費者庁)
- 表示に関するQ&A(消費者庁)
- 無人航空機の飛行禁止空域と飛行の方法(国土交通省)
- 無人航空機の飛行許可・承認手続(国土交通省)


