
「地方創生の事業で動画を作りたいけれど、何に使えば効果があるのか」。地域の取り組みに映像を取り入れようとすると、多くの方が最初にぶつかる問いです。
動画や映像は、移住や観光、地場産業の取り組みを「知ってもらう」「関わってもらう」「残す」ための道具として使えます。公開したあとに地域で何が起きたのかまで見ていけば、映像を次の取り組みに活かすこともできます。
国の地方創生2.0の方向性を確かめたうえで、映像が担える5つの役割、再生数の先まで見る成果の測り方、地域の事業者が関わる意味と続けて発信する工夫を取り上げます。発注の仕方については「地域おこし動画の発注パターン」で解説しています。
国の「地方創生2.0」は何を目指しているか
国は2025年6月13日に、今後10年間を見据えた「地方創生2.0基本構想」を閣議決定しました。内閣官房の資料では、基本姿勢・視点として「若者や女性にも選ばれる地域」「AI・デジタルなどの新技術の徹底活用」「都市と地方が互いに支え合い、人材の好循環の創出」などが挙げられています。政策の柱は、生活環境の創生、稼ぐ力を高める新しい地方経済の創生、人や企業の地方分散、新時代のインフラ整備とAI・デジタルなどの新技術の徹底活用、広域リージョン連携の5本です。
この構想では、住所地以外の地域に継続的に関わる人を登録する「ふるさと住民登録制度」の創設が示され、関係人口について「今後10年間で実人数1,000万人、延べ人数1億人を目指す」とされています。
その後、2025年12月23日に「地方創生に関する総合戦略」(期間は2025〜29年度)が閣議決定され、2026年6月30日には、この総合戦略を改訂した「地域未来戦略」が地域未来戦略本部で決定されました(計画期間は2030年度まで)。戦略の名称が変わってきているため、資料を探すときは今の名称でも検索してみてください。
国の方針は地域づくり全体の方向を示すものです。その中で、「選ばれる地域」になること、地域に関わる人を増やすこと、デジタルを活用することは、どれも映像が得意とする分野と重なっています。
映像が担える5つの役割
地方創生の取り組みの中で、映像が担える役割を5つに整理しました。
| 役割 | 主に届けたい人 | 映像の例 |
|---|---|---|
| 地域の魅力の発信 | 県外・海外の人、まだ地域を知らない人 | 観光PR、まちのCM、季節の風景 |
| 関係人口づくり | 出身者、何度か訪れた人、仕事で関わる人 | 地域の人を追うシリーズ、取り組みの報告 |
| ふるさとの記録・アーカイブ | 未来の住民、地域の子どもたち | 祭り・行事・産業の記録、古い映像の保存 |
| 人材募集 | 働き手、担い手、移住を考える人 | 地元企業の採用動画、仕事と暮らしの紹介 |
| オンラインでのイベント参加 | 遠方の出身者や関係者、来場できない人 | 祭りや式典、講演会のライブ配信 |
地域の魅力の発信
景色や食、季節の移り変わりは、文字や写真よりも映像の方が伝わりやすいものです。音や空気感まで含めて「行ってみたい」と感じてもらうことが、最初の一歩になります。糸魚川を例にした観光映像の考え方は「糸魚川の観光を動画で伝える」でご紹介しています。
関係人口づくり
総務省は「関係人口」を「移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域や地域の人々と多様に関わる人々」と説明しています。出身者、何度も訪れている人、仕事や趣味で地域と関わる人などが思い浮かびます。
関係人口をつくる映像では、景色よりも「人」が主役になります。地域で働く人、取り組みを続ける人の姿を、シリーズとして続けて届けると、見る人と地域とのつながりが少しずつ深まります。
ふるさとの記録・アーカイブ
祭りや行事、地域の産業の様子は、その時にしか撮れない場面の連続です。記録した映像は、地域の学習や、数年後の周年行事、次の世代への引き継ぎにも使えます。家庭や公民館に眠っているビデオテープの映像も、地域の大切な記録です。
人材募集
働き手や地域の担い手の確保は、地方創生の大きなテーマの一つです。仕事の様子や働く人の声、職場の周りの暮らしを映像で見せると、求人票だけでは伝わりにくい「ここで働くイメージ」を届けられます。構成の考え方は「採用動画の構成」をご覧ください。
オンラインでのイベント参加
地域のイベントをライブ配信すれば、遠くに住む出身者や関係者も、その時間を一緒に過ごせます。会場に来られなかった人がアーカイブで見返せるようにしておくと、イベントが地域とのつながりを保つ機会になります。
成果の測り方:再生数の先を見る
映像の成果というと再生回数に目が向きがちですが、地方創生の目的は、その先にある問い合わせや来訪、移住や就職です。届けたい人の動きを段階に分けて、それぞれで見る数字を決めておくと、振り返りがしやすくなります。
| 段階 | 見る数字の例 | 確かめ方 |
|---|---|---|
| 知ってもらう | 視聴回数、視聴された地域 | YouTubeアナリティクス、各SNSの分析画面 |
| 関心を持ってもらう | 平均視聴時間、視聴者維持率、専用ページの閲覧数 | YouTubeアナリティクス、Webサイトのアクセス解析 |
| 行動してもらう | 問い合わせ・移住相談・応募の件数、来訪者数 | 窓口の記録、問い合わせフォーム、来訪時のアンケート |
| 関わり続けてもらう | 再訪、イベントへの継続参加、登録者数 | 参加者の記録、チャンネル登録者数 |
YouTubeのヘルプによると、視聴者維持率のレポートでは、動画のさまざまなシーンが視聴者の注目をどの程度集めていたかを確認できます。視聴者に関するレポートには、総再生時間の多い地域を示す項目もあり、狙った地域の人に届いているかの目安になります。
動画の外の数字をつかむには、問い合わせフォームや来訪時のアンケートに「何を見て知りましたか」という項目を入れておく方法が手軽です。動画ごとに案内する専用ページを用意しておけば、どの動画から人が来たのかも追いやすくなります。
国の「地域未来交付金」のうち地域未来推進型では、KPI(成果を測る指標)設定の適切性などが評価され、効果の検証と評価結果の公表を行うこととされています。交付金の名称の変化については「地域おこし動画の発注パターン」で整理しています。
地域の事業者が映像に関わる意味
地域の映像は、地域の外の会社に頼むこともでき、それぞれに良さがあります。地域に拠点を置く事業者が関わる意味としては、次の3つがあります。
- 撮りたい瞬間に足を運べる:雪景色、桜、祭りの当日など、地域の魅力は季節や日付に左右されます。近くにいれば、天候を見ながら撮影日を決めたり、季節ごとに撮り足したりしやすくなります。
- 地域の人に協力してもらいやすい:出演や撮影場所の協力をお願いするとき、顔の見える関係があると話が進みやすくなります。
- 続けて関われる:毎年の行事や、年度ごとの発信を同じ事業者が担当すると、前回の振り返りを次に活かせます。
アイフィルムでは、体育館を会場にした地域の中学生向けキャリア教育イベントで、音響・映像・会場設営を毎年継続して担当しています。自治体のご担当者と毎年、事前の打ち合わせと終了後の振り返りを行い、前年の改善点を次の年に活かしています。発注先を選ぶときの考え方は「地方の映像制作会社に頼むメリットと注意点」にまとめています。
続けて発信するための工夫
地方創生は、数年がかりで取り組むものです。映像も、続けて発信できる形を最初から考えておくと、効果が積み上がります。
- 1回の撮影から複数の版を作る:本編に加えて、SNS用の縦型版、長さの違う版、字幕入りの版を作れば、撮影の費用を抑えながら発信の回数を増やせます。考え方は「ショート動画と長尺動画の使い分け」をご覧ください。
- 素材をためて、使える範囲を決めておく:撮影した素材を整理して残しておけば、次の動画や広報誌、イベントでの上映にも使えます。媒体・期間・地域などの利用範囲は、契約の段階で決めておきます。
- 年間の撮影計画を立てる:見せたい季節や行事を一年の暦に並べておくと、撮り逃しを防げます。
- 地域の人が撮る部分と、制作会社が撮る部分を分ける:日々の発信は担当者や地域の方がスマートフォンで、季節の本編や大事な行事は制作会社が、と役割を分けると、無理なく続けられます。

よくある質問
Q. 再生回数が少ないと、動画は失敗ですか?
再生回数は、判断材料の一つです。移住を考えている人や出身者など、届けたい人が限られている動画では、再生回数が控えめでも、問い合わせや来訪につながっていれば役割を果たしています。目的に合わせて、見る数字を最初に決めておきましょう。
Q. 地域に残っている古いビデオテープの映像も活用できますか?
はい。アイフィルムでは、VHS・VHS-C・Beta・MiniDV・Hi-8のテープをDVDにダビングしています(1枚あたり1,650円)。白黒の映像をカラーにする「モノクロ映像カラー化」にも対応していますので、地域の記録映像の活用をご検討の際はご相談ください。
Q. 地域のイベントを、遠くに住む人にもライブで見てもらえますか?
はい。ライブ配信は、カメラ1〜2台・配信2時間までのライト配信で6.5万円(税別)から承っています。カメラの台数や配信の時間に合わせてお見積もりします。
アイフィルムでの地域の映像づくり
アイフィルムは、新潟県糸魚川市の本社と新潟市の新潟支社を拠点に、映像制作、ライブ配信、イベント音響、ドローン空撮などを行っています。地域に関わる映像では、新潟県糸魚川市様の「第5回新潟ふるさとCM大賞『ええねか、いといがわ』」「美山プロジェクト紹介動画」「フォッサマグナミュージアムイベント告知動画」や、新潟県糸魚川市観光協会様の「漁師密着動画」などを制作してきました。
作品は制作実績で、ライブ配信の内容はライブ配信、テープの保存はVHSテープダビングのページでご覧いただけます。「地域のこの取り組みを、映像でどう伝えればよいか」という段階のご相談も、お問い合わせで受け付けています。


